日本銀行副総裁の雨宮正佳氏が7月5日、ロイター通信とリフィニティブが主催するカンファレンス「ロイター・ニュースメーカー」に、「日本銀行はデジタル通貨を発行すべきか」と題したテーマで登壇した。同氏は、デジタル化が進む社会において、中央銀行が発行するデジタル通貨CBDCに関する調査・研究はさまざまな示唆を与えると語った。

冒頭では、個人の決済手段に関するアンケートの調査結果や統計をもとに、日本における現金決済とキャッシュレス決済について述べている。その中で、雨宮氏はキャッシュレスへの移行は依然緩慢なままであるものの、2019年10月に予定される消費税引き上げに際して、キャッシュレス決済によるポイント還元が導入されることでキャッシュレス化が進んでいく可能性について言及した。

こうした中、CBDCに求められる役割として林立する決済手段を統一することに注目が集まっていることを挙げ、雨宮氏は市場の競争環境を維持する観点からはこの目的のためのCBDC発行は適切ではないとしている。

その一方で、同氏は通貨の基本的な役割である価値保蔵手段としての役割に着目しているという。同氏は金融危機時や震災時を例に、被災地で現金の引き出しが大幅に増えた過去を事例を挙げ、デジタル通貨の存在意義を紹介した。しかし、この例においても、銀行を必要としなくなる可能性をもつCBDCは金融危機を引き起こす問題をはらむと語っている。

同氏は「日本を含む多くの中央銀行が、CBDCを近い将来発行する計画はないが、CBDCに関する調査研究には引き続き取り組んでいく」としている理由について、市場構造が急激に変化した結果CBDCが必要になるかもしれないこと、中銀マネーと民間マネーの関係などを再考する中で決済システム全体を改善する手がかりを得られること、の2点を挙げている。法的論点についても検討を進めており、報告書がまとまり次第、対外公表していくという。

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