総合情報サービスの日本総研は8月2日、人工知能(AI)開発ベンチャーのLaboro.AIと企業のESG(環境・社会・企業統治)の取り組みを調べるAIを共同開発、導入したと発表した。ESG情報を自動収集し、複雑な非財務情報の収集負荷を5割削減できるという。

同社は1999年から「わが国企業のESG(環境・社会・ガバナンス)側面の取組み調査」を続けてきた。東証1部上場企業を中心とした約2,000社の国内企業を対象に、社会的課題の解消に貢献し得る製品・サービスや、ステークホルダーへの配慮状況を評価するもので、ESG側面の取り組みと業績・競争力を関連づける先駆けとなった調査レポートだ。

調査では、温室効果ガス排出量や、2011年に国連から発行された「ビジネスと人権に関する指導原則」以来関心を集める人権デューデリジェンスなど、100を超えるESGに関する評価項目それぞれについて、複数の定量・定性指標を用いて評価。それらの評価項目に関連する情報は調査対象企業のホームページや公開情報に掲載されている。

一方、ESGに関する情報は定性的な表現が多くを占め、情報収集作業や情報整理・加工作業はこれまで人手で行われてきた。ESG投資の高まりを受け、投資家からは調査について多くの要望が寄せられるようになり、また、企業側も開示情報を質・量ともに充実させる傾向が顕著となり、従来の人手だけによる調査体制のままでは本調査の質の維持・向上が難しくなってきたことから、カスタムAIソリューションの開発に着手した。Laboro.AIはオーダーメードによるカスタムAIソリューションを様々な業界に向けて開発してきた実績を持つ。

このカスタムAIソリューションによって、インターネット上の情報収集作業と、ESG評価項目に該当する文章抽出作業を効率的に実施できるようになる。また、ESG評価項目と関連性の高い文章の一覧表が自動的に作成されるため、アナリストは情報収集に要する作業量が大幅に削減され、特色あるESGの取り組みを行う企業の発掘など、より付加価値の高い作業に注力できる。

評価までの流れは①Webクローラーが、評価対象企業のホームページからすべての文章を抽出②抽出した文章を、AIの認識に適するよう、品詞分解(形態素分析)③品詞分解された文章をテキスト分類エンジンに入力し、ESG評価項目への関連可能性(信頼度)を割り出しスコア化。テキスト分類エンジンは、fastText技術(自然言語処理分野で用いられるAI技術)によって、教師データ (ESG評価項目への関連の高い/低い模範文)との類似性を照合し判断④算出されたESG評価項目への関連可能性が高い、高スコアの文章を一覧表として作成する。この一覧表を基に、アナリストが各企業の評価を実施する。両社は「今後もAIテクノロジーを活用しながら本調査に取り組むことで有用な調査結果や評価の提供に努めていく」としている。

【参照リリース】「わが国企業のESG側面の取組み調査」におけるカスタムAI導入について 〜ESG情報を自動収集し、複雑な非財務情報の収集負荷を5割削減~

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