近年、資産運用の世界で話題となっているロボアドバイザーは各ユーザーに適した資産運用のあり方を提案し、実践においてもきめ細かく支援してくれることから、投資初心者から経験者まで幅広いユーザーに支持されています。
しかし一方で、利用するユーザー側の意識や心構え、投資スタンスなどが原因でロボアドバイザーが上手に活用できていないケースもみられます。今回は、ロボアドバイザー投資をおすすめできない方の共通点を洗い出し、特徴を5つのタイプにまとめましたので、ロボアドバイザーを始める場合の参考としてご活用ください。
目次
- 【特徴1】自分自身のことを認識していない人
1-1.ロボアドバイザーは2種類のタイプがある
1-2.自分に合うタイプのロボアドバイザーを選ぶ - 【特徴2】情報収集や勉強を怠る人
2-1.各ロボアドバイザーのスペックや特徴を把握する
2-2.各社ロボアドバイザーの概要 - 【特徴3】投資経験・知識について自信過剰な方
3-1.自信過剰がロボアドバイザー投資失敗の原因に
3-2.ロボアドバイザーに提案されたプランで運用する - 【特徴4】資金を一括で投資したいと考える人
4-1.リスク分散しない一括投資は危険
4-2.リスク分散積立で運用する - 【特徴5】短期目線で投資を考える人
5-1.ロボアドバイザーの投資戦略は株式投資やFXと異なる
5-2.ロボアドバイザーは長期投資で運用する - まとめ
【特徴1】自分自身のことを認識していない人
ロボアドバイザー投資で成功するには、ユーザーが自分自身の「投資環境」や「固有の条件」などを認識し、自分に合ったロボアドバイザーを選択することが重要です。ユーザーの投資環境や固有の条件とは、資産運用を行う時間的な余裕、投資経験、自分の手で運用したい希望の有無などです。まずはロボアドバイザーの種類や選び方から見ていきましょう。
1-1 ロボアドバイザーは2種類のタイプがある
ロボアドバイザーには主に「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類のサービス形態があります。
「アドバイス型」は、個々のユーザーの条件に合う最適な資産運用プランを提案してくれますが、実際の発注や運用途中での資産配分最適化などはユーザーが自分の手で行う必要があります。一方、「投資一任型」は、資産運用プランの提案に加え、実際の発注や運用途中での資産配分最適化なども行ってくれるため、資産運用をまるごと一式任せることができます。
そのため投資経験が乏しい初心者や、忙しく自分で資産運用を行う時間的余裕のない方などは、運用一式をまるごと任せられる「投資一任型」が適しているといえます。逆に投資経験があり、主体的に資産を運用したい方には、「アドバイス型」が適しているでしょう。
1-2 自分に合うタイプを選ぶ
自分に合うタイプのロボアドバイザーを選ぶことは非常に大切ですが、そのためにはユーザー自身の投資環境や固有の条件について、明確に認識することが大切です。投資の知識がない初心者や時間的余裕がない方が「アドバイス型」を選んでも、ロボアドバイザーのメリットを活かせないだけでなく、続けることが困難になる可能性があります。
逆に、投資経験があり自分の手で資産運用を行いたいと思っている方が「投資一任型」を選んだ場合、手を出す余地がほぼないため物足りなさを感じることもあります。
ロボアドバイザー投資で成功するには、まずユーザーが自分自身のことをしっかりと認識し、自分に合うタイプのロボアドバイザーを選択するところから始まります。
【特徴2】情報収集や勉強を怠る人
ロボアドバイザー投資を始める場合は、事前にロボアドバイザーの資産運用方針やサービス内容を調べ、概略を把握しておくことが大切です。情報収集を怠った場合、ロボアドバイザー投資開始後に自分の予想していた内容と違うことがわかり、別のロボアドバイザーに乗り換えざるを得なくなったり、途中でやめる原因になったりします。
2-1 各ロボアドバイザーのスペックや特徴を把握する
ロボアドバイザーには「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類があると説明しましたが、同じ種類同士でも以下の点で特徴が異なります。
投資戦略・投資対象
ロボアドバイザーの資産運用方針は、各社ともに長期投資・リスク分散投資で似ています。しかし、海外投資にどの程度の重点を置くか、また、どのような内容・特徴を持つ投資信託を投資対象に選ぶかなど、投資戦略や投資対象はさまざまです。
コスト
運用コストは年率で運用資産の1%前後が多いですが、各社それぞれで異なります。毎年かかってくる費用のためコストが低いほうが有利になる場合が多いと言えます。
最低投資額
ロボアドバイザーの最低投資額は、サービスによって100円~10万円と幅があります。少額から始めたい方は事前に最低投資額を把握しておくことが大切です。
利回り
各ロボアドバイザーの公表利回りは、集計期間や集計方法などが異なるため単純に比較することは難しいですが、リスク許容度別の年率利回りなどは事前に把握しておくと、ロボアドバイザー選定の基準になります。
リスク許容度の区分設定
ユーザーの資産運用に対するリスク許容度の区分や設定方法はさまざまです。どのような設定方法が自分に合っているか、見極めることが大切です。
2-2 各社ロボアドバイザーの概要
上記にあげた項目は代表的なものですが、ロボアドバイザー投資を始める前に、スペックや特徴を調べておくことが重要です。ロボアドバイザー投資を始めようとする方は、「自分自身の投資環境」や「固有の条件」を考慮しながら各ロボアドバイザーのスペックや特徴を調べ、自分の希望に沿うサービスを見つけるようにしましょう。
以下に、実際に国内でサービスを提供している主なロボアドバイザーの概要を掲載しておきます(2019年1月21日時点)。
名称 | 運用会社 | 概要 |
---|---|---|
WealthNavi(ウェルスナビ) | ウェルスナビ | 運用タイプ:投資一任型 最低投資額:10万円 投資対象:海外ETF(上場投資信託) コスト:預入資産の1%(年率・税別・預入資産が3,000万円超の部分は0.5%) ・申込件数23万口座以上、預かり資産1,600億円超(2019年7月11日時点)で国内トップの規模・実績 ・5段階のリスク許容度を設定 |
THEO(テオ) | お金のデザイン | 運用タイプ:投資一任型 最低投資額:10,000円 投資対象:海外ETF コスト:預入資産の1%(年率・税別・預入資産が3,000万円超の部分は0.5%) ・世界86の国・地域、11,000以上の銘柄が対象 ・200種類以上の最適化パターンを設定 |
マネラップ(MSV LIFE) | マネックス証券 | 運用タイプ:投資一任型 最低投資額:1,000円 投資対象:海外・国内ETF コスト:運用資産の1%未満を目標(年率) ・8段階のリスク許容度を設定 ・最大3つまでの複数コースで運用できる |
楽ラップ | 楽天証券 | 運用タイプ:投資一任型 最低投資額:100,000円 投資対象:国内投資信託 コスト:預入資産の最大0.702%および信託報酬最大0.288%(いずれも年率・税込) ・5段階のリスク許容度を設定 |
SMART FOLIO(スマートフォリオ) | みずほ銀行 | 運用タイプ:アドバイス型 最低投資額:1,000円 投資対象:国内投資信託 コスト:投資信託により変動 ・みずほ第一フィナンシャルテクノロジーが構築した投資ロジックを使用 |
【特徴3】投資経験・知識について自信過剰な人
投資経験を積み、投資関係の勉強を続けていくことは大切ですが、自信過剰になっては逆効果になるケースもあります。
3-1 自信過剰が失敗の原因に
投資経験が豊富にあり資産運用を直接行いたいと思っている方は、「投資一任型」ではなく「アドバイス型」のロボアドを選択する傾向があります。「アドバイス型」では、提案された資産運用プランで、ユーザー自らが発注や運用途中の資産配分最適化を行うことができるためです。
しかし投資分野に知識や自信がある方の中には、アドバイス型が提案する資産運用プランを採用せず、「提案プランのポートフォリオ構成を自分の好きなように組み替える」「通常の積立投資は行わず、投資タイミングや投入資金額をその都度自分が決める」といったロボアドバイザーのメリットが生かされない方法で運用した結果、失敗する可能性が高くなることがあります。
3-2 提案されたプランで運用する
ロボアドバイザーは、ユーザー個々の年齢・年収・資産額などの「定量属性」やどの程度の金額を投資に回せるかなどの「投資環境」に応じた診断に基づき、それぞれのユーザーに最適な資産運用プランを構築・提案します。そのため長期的な資産形成を目指すには、その提案プランに従った運用を行うことがとても重要です。
提案されたプランを自分の思うままに作り変え、勝手なタイミングで投資を行った場合、ロボアドバイザーを始める意味自体が薄れることになります。ロボアドバイザーを始める際は、提案された最適プランで着実に資産を形成していくとの心構えを持つことが大切です。
【特徴4】資金を一括で投資したいと考える人
投資はできるだけリスクを分散して抑えることが基本です。リスク管理ができていないとロボアドバイザー投資もうまくいかない場合があります。
4-1 リスク分散しない一括投資は危険
ロボアドバイザーには毎月3万円ずつなどあらかじめ決めた一定額で投資対象を購入し続ける積立投資の機能が付いています。その時々の景気や相場の変動リスクを時間的に分散してくれるサービスです。
しかし積立投資という便利な機能を利用せず、初めにまとまった資金を一括入金するだけで増やそうと考える方がいますが、危険が伴います。例えば、貯金500万円をすべて使ってA社の株式を購入した場合、A社が倒産すれば投資額の500万円は全て無駄になる可能性があります。
このようなリスクを抑えるために、投資では50万円ずつ10回に分けるなど購入タイミングを分散し、投資対象もA社だけでなくB社・C社の株も買ったり、株式だけでなく投資信託も組み合わせたりするなど分散することが重要になります。
4-2 リスク分散積立で運用する
経済・景気動向は良いときばかりではなく、景気の下降局面がしばらく続く場合もあります。不景気のときに大切な資金を一括投入して投資対象を購入した場合、値下がりが続けば大きな損失を抱える危険性があります。そのため、積立投資では毎月一定額を継続して購入することで、時間的なリスクを分散しています。
積立投資は、ロボアドバイザーの心臓部と言えるほど重要な投資手法であり、ロボアドバイザーを始める場合、安心・安全な積立投資で続けていくことをおすすめします。
【特徴5】短期目線で投資を考える人
ロボアドバイザーは短期的なサイクルで投資結果を求めるサービスではないことを意識することが大切です。ロボアドバイザーは、数日・数ヶ月といった短い期間で利益を上げたいと思っている方ではなく、数年のスパンで資産運用をしたい方に向いている投資対象なのです。
5-1 ロボアドバイザーの投資戦略は株式投資やFXと異なる
株式投資やFX(外国為替取引)の世界では、週間単位で投資結果を求める「スイングトレード」、より短いものでは時間や分単位で捉える「デイトレード」「スキャルピング」などの投資手法が広く普及しています。しかし株式投資やFXの短・中期売買で結果を求める方が同様の感覚でロボアドバイザー投資を始める場合があります。
ロボアドバイザーは、株式投資やFXにおける短・中期売買とは異なり、10~30年間など長期的な視点から資産形成を行っていく性格が強い投資法です。その間、経済・景気動向の動きによっては一時的に収益が上がらない、またはマイナスになる時期がありますが、長期的な視点では資産を着実に増やしていくことができるのが長期投資のメリットです。
しかし、短・中期売買の投資スタンスでロボアドバイザーを始めた場合、短期間で結果を見ることになり、その時点で収益が上がっていなければ、長期的な目線やメリットを考えずにロボアドバイザー投資を止めることもあるでしょう。
これは長期投資を前提としたロボアドバイザーの運用方法としてあまり望ましいものではありません。以下のようなメリットを認識し、短期目線に終わらない投資として取り組んでいきましょう。
5-2 長期投資で運用する
ロボアドバイザーの積立投資は、毎月決まった日に一定の金額で投資対象を継続購入していくものです。投資対象の価格が高い時期には少量しか買えない一方、相場が下がって安い時期には大量に購入できることから、結果的に平均購入価格が高値掴みになりにくいというメリットがあります(ドルコスト平均法)。
購入を長期にわたって継続していくことで、一時的に相場が下落して収益が上がらない時期があっても、やがて相場が持ち直した際には大きな資産形成が実現できます。株式投資やFXの経験がある方は特にですが、ロボアドバイザーを始めるにあたっては、短期目線から長い目で投資成果を捉えるよう投資スタンスを切り替えていく必要があります。
6 まとめ
資産運用を行おうとしている方のニーズは様々です。日頃から仕事や家事で忙しく資産運用を行う時間や暇がない、また、投資未経験で面倒なことなくすべてを任せられるサービスを探している方がいる一方で、投資経験が豊富で、直接自分自身で運用したいという方もいます。
さらに、若年層で将来的な結婚資金・子供の教育資金・住宅資金を貯めたいと考える方もいれば、中高年層で老後の生活費を準備しておきたいと思っている方も多くいます。
ロボアドバイザーは、投資初心者から経験者まで、または忙しい方から時間的余裕がある方まで、幅広いニーズに対応できるよう設計されています。さまざまな年齢層の方に対して、それぞれの目的を達成するための最適な資産運用プランを提供・運用してくれるサービスです。
ロボアドバイザーのメリットや能力を最大限引き出し、活用していくためには、利用するユーザーが自分の投資環境や固有の条件を自覚・認識し、自分に最適なロボアドバイザーを見つけ出し選ぶことが重要です。
さらに、長期的な資産形成という最終目的を達成するためには、ユーザー自身が意識や心構え、投資スタンスなどをあらためて見つめ直し、リスク管理の意識を持つとともに長期的な視点からの投資評価に切り替えていくことも必要です。
この記事を参考にロボアドバイザーの長所や能力をできるだけ引き出してやるよう意識しながら利用すれば、安心・安全で長期的な資産形成を進めていくことができるでしょう。
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