不動産は築年数の経過とともに資産価値が少しずつ減少していきます。しかし、マンションを所有している方は誰しも「少しでも高く売却したい」と考えるでしょう。

そこでこの記事では、少しでも高く築古マンションを売るための手段の一つ「リノベーション売却」について解説します。すでに築古のマンションを保有している方や、これから中古マンションを買おうとしている方はぜひご一読ください。

目次

  1. 物件をきれいにすれば印象が良くなる
    1-1.リフォームとは
    1-2.リノベーションとは
  2. リノベーションのメリット
    2-1.マンションの購入希望者が増える
    2-2.マンションを高く売れる可能性がある
  3. リノベーションの注意点
    3-1.リノベーションできない部分がある
    3-2.管理組合の許可が必要
    3-3.リフォームよりも費用がかかる
    3-4.必ず高く売れるとは限らない
  4. マンションをリノベーションする際のポイント
    4-1.世の中のニーズを考える
    4-2.費用対効果を意識する
  5. まとめ

1 物件をきれいにすれば印象が良くなる

新築マンションと築古マンションとを比べると、築古マンションはどうしても「設備が古い」「内装が傷んでいる」といったマイナスの印象を持たれることが多いと言えます。しかし、リフォームやリノベーションを実施すれば、外観は古くても内装は新築同様にもできるため、築古マンションでも印象を良くできます。

では、そもそもリフォームとリノベーションはどこが違うのでしょうか?それぞれの違いについて見ていきましょう。

1-1 リフォームとは

リフォームとは、築年数の経過によって老朽化した建物を「元通りのきれいな状態に戻す(近付ける)」作業のことです。例えば、キッチンやバス、トイレ、洗面などの設備が劣化した場合に、新しい設備と交換することなどです。

不動産は築年数の経過と共に、きれいに使っていても経年劣化で設備や内装が傷みます。リフォームは傷んだ分のマイナスをゼロの状態に戻してあげるための作業であるため、外壁の塗り直しや傷んだクロス・フローリングの張替えなどもリフォームに含まれます。

1-2 リノベーションとは

リノベーションとは、築年数の経過によって老朽化した建物を元通りの状態にするのではなく、「グレードアップさせる」作業のことです。例えば、子供が大きくなってリビングが狭くなったので、ダイニングとの間にあった壁を壊して、リビングダイニングを一体化することなどです。

きれいにするだけの作業はリフォームですが、性能や機能を向上させる大掛かりな作業はリノベーションになります。そのため、キッチンを新しいものに交換する作業はリフォームでも、水道管や排水管の工事を伴うような位置を変える作業はリノベーションになります。

リノベーションではリフォームとは異なり、ライフスタイル・生活環境の変化などに合わせてマンションの造りを自由にアレンジできるため、近年人気が高まっています。

2 リノベーションのメリット

リフォームとリノベーションにどのような違いがあるのかと、リノベーションの人気が近年高まっていることが分かりましたが、リノベーションを売却前にするメリットはあるのでしょうか?主なメリットは以下の2つです。

  1. 購入希望者が増える
  2. 高く売れる可能性がある

それぞれのメリットについて見ていきましょう。

2-1 マンションの購入希望者が増える

1つ目のメリットはマンションの購入希望者を増やせることです。築古マンションは、新築マンションより売出価格が低いため、買い手の需要が比較的高い物件タイプです。ただし買い手の需要が高いと言っても、経年劣化が目立つ・設備が古い築古マンションの場合には、修繕やリフォームが多く必要になるため、買い手から敬遠されやすくなります。

しかし、リノベーションした築古マンションは、一般的に設備が新しい・最近の入居者需要に合った間取りに変更されているため、直近の修繕やリフォームは不要です。新築マンションよりも価格が安いにもかかわらず、他の築古マンションと比べてきれいな内装にできるため、購入希望者の増加が期待できるでしょう。

2-2 マンションを高く売れる可能性がある

2つ目のメリットは、そのままマンションを売却するよりも高く売れる可能性があることです。築古マンションを購入する場合、本体価格だけでなくリフォームなどの追加費用も生じるケースが多いため、築古マンションの購入希望者は本体価格に修繕費用を上乗せした予算を想定しているのが一般的です。

築古マンションをそのまま売却した場合には、購入希望者があらかじめ準備している本体価格分でしか話がまとまらない可能性があります。しかし、リノベーションしている物件であれば、修繕費用分を上乗せした価格を狙えるため、従来よりも高く売れる可能性があります。

また、売出価格が2,000万円の築古マンションに500万円のリノベーションを実施したところ、新しい設備や内装、間取りが気に入った購入希望者が3,000万円で購入してくれる、という場合も十分にあり得るでしょう。

3 リノベーションの注意点

マンションを売却前にリノベーションしておくことには、購入希望者が増える・高く売れる可能性があるなどのメリットがありましたが、主な注意点を以下で4つ挙げておきます。

  1. リノベーションできない部分がある
  2. 管理組合の許可が必要
  3. リフォームよりも費用がかかる
  4. 必ず高く売れるとは限らない

3-1 リノベーションできない部分がある

マンションには、自分ではリノベーションできない部分があります。マンションは専有部分と共用部分に大きく分けられます。専有部分とは、マンションの住戸部分のことで、区分所有者は管理組合の許可を得れば自由に専有部分を利用・変更できます。

共用部分とは、専有部分以外のことで、マンションの入居者全員のものと考えられる廊下などの箇所のことです。そのため、区分所有者や入居者は自由に利用できても、勝手に設備や内装を変更することはできません。インターホンやバルコニー、玄関扉、窓ガラスなどは専有部分に思われがちですが、共用部分なので自分でリノベーションを行うことはできません。

リノベーションの際にキッチンやお風呂の位置を変更したくても、配管は共用部分で移動できない可能性もあるなど、マンションはリノベーションできない部分があることに注意しましょう。

3-2 管理組合の許可が必要

上記しましたが、たとえ専有部分であっても、管理組合の許可を得なければマンションのリノベーションを行うことはできないのが一般的です。工事による他の部屋・共用部への影響や騒音といったことが考えられるためです。

マンションごとに専有部のリノベーションについての規約が細かく定められているため、まずは管理規約をよく読んだ上で、管理組合に許可を取ることが必要です。またリノベーションの際には、工事会社に管理規約の内容を共有し、ルールをしっかりと守って工事してもらうことが必要になります。

3-3 リフォームよりも費用がかかる

また、リノベーションは基本的にリフォームよりも費用がかかります。リノベーションの方が作業の規模が大きくなるためです。そのため、築古マンションを少しでも高く売るためにリノベーションした場合は、本来の売却価格に大きく上乗せして売却することを想定しておかなければなりません。

しかし、築古マンションの購入を検討している方の中には、購入費用を抑えたいという方も多いでしょう。リノベーション費用を上乗せした価格が他の築古マンションよりも大幅に高い場合は、希望の価格帯から外れて敬遠される可能性もあるので注意しましょう。

3-4 必ず高く売れるとは限らない

また、リノベーションをしたからと言って必ず高く売れるとは限りません。リノベーションするということは、設備や間取り、内装などに大幅な変更を加えることになります。例えば、内装をおしゃれにしようと壁面の一部をレンガ張りに変更した場合は、それを気に入ってくれる方であれば問題ありませんが、万人受けするとは限りません。

自分の中ではリノベーションすることで築古マンションに付加価値を与えたつもりでも、その価値を判断するのはあくまでも購入希望者です。500万円のリノベーションをすることで「800万円程度高く売れるだろう」と考えていても、購入希望者が300万円分の価値しかないと判断すればその分にしかなりません。必ず高く売れるとは限らないので、それを考えて判断するようにしましょう。

4 リノベーションする際のポイント

では、リノベーションする際はどのようなポイントを押さえておけばいいのでしょうか?主なポイントは以下の2つです。

  1. 世の中のニーズを考える
  2. 費用対効果を意識する

4-1 世の中のニーズを考える

まず、世の中のマンションに対するニーズを考えることが必要です。

マンションの機能性や利便性、デザイン性を高めるために「自分の好み=万人受けする」という前提でリノベーションしても、購入希望者ごとにそれをどう判断するかは異なります。そのため、リノベーションする際は、自分の好みではなく購入希望者のニーズを考えることが重要です。

例えば、どのような間取りや設備が人気なのかなど、世の中のニーズをリノベーション前にあらかじめ調べておくなどが必要です。「費用をかけてリノベーションしたものの、思ったような価格で売れなかった」ということがないよう、居住ニーズを具体的に考えるようにしましょう。

4-2 費用対効果を意識する

リノベーションをしたからと言って、必ずしもマンションが高く売れるとは限りません。そのため、リノベーションでは費用対効果を意識することも大切です。リノベーションには数百万円以上の費用がかかることが多いため、その価値があるかどうか、まずは考えることが重要です。

例えば、築古マンションの取引が盛んで、リノベーション物件の人気も高いという地域ではリノベーションの費用対効果が高いことが期待できます。しかし、築古マンションの取引が盛んでない地域では、リノベーションして売出価格を高くすることが売れ残りの原因となってしまう可能性もあるので注意が必要です。

そのため、リノベーションの前に費用対効果を意識して、あまり費用対効果が期待できない場合は、支出の少ないリフォームやクリーニングに変えた方が良いと言えるでしょう。

5 まとめ

築古マンションでは、築年数の経過によって「設備が古い」「内装が傷んでいる」ケースが多いため、査定価格が低くなるのが一般的です。そこで、少しでも高く築古マンションを売るための手段として、リノベーションがあります。

リノベーションはリフォームとは異なり、物件の機能性や利便性、デザイン性を高めることを目的としています。そのため、購入希望者が増える・高く売れるといったメリットが期待できますが、一方リフォームよりも費用がかかる・管理組合の許可が必要などといった注意点があります。

築古マンションであれば何でもリノベーションすればいい、というものではなく、実際にマンションを購入したい人のニーズを考えることや、費用対効果を意識するといったポイントを押さえながら、状況に合わせた売り方を選びましょう。

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