2020年のソーシャルレンディング業界はどうなる?2019年の振り返りと今後の予測

2019年も残す所、あと1ヵ月に迫りました。2019年はソーシャルレンディング業界にとって、まさに激動の1年だったのではないでしょうか。2017年と2018年に相次いだソーシャルレンディング会社に対する金融庁の行政処分。深刻な問題を顧みて、2019年3月に金融庁が匿名化の解除に踏み切りました。

そのような状況下で、各ソーシャルレンディング会社の動向は今後、どうなっていくのでしょうか。ここでは2019年を振り返るとともに、2020年の展望についても取り上げていきたいと思います。

目次

  1. 2019年に運営を開始した新規のソーシャルレンディングサイト
    1-1.Funds
    1-2.COOL
  2. ソーシャルレンディング業界の最大手maneoが、案件の募集を中止する事態に
    2-1.maneoの株式をNHLD株式会社が保有
    2-2.maneoを通じて資金を募集していた会社が、他社で募集を開始
  3. 既存のソーシャルレンディング会社の動向
    3-1.SBIソーシャルレンディング、クラウドバンクともに好調
    3-2.maneoの募集停止に伴い、他のソーシャルレンディング会社に投資家の関心が向く
    3-3.金融庁の匿名化解除に伴い、情報の開示が浸透
  4. 2020年のソーシャルレンディング業界の予測・展望
    4-1.ソーシャルレンディング案件に安全性を求める傾向は続く
    4-2.情報を開示した上で、ハイリスク・ハイリターン商品が望まれる
    4-3.ソーシャルレンディングでも無視できないESG投資・SDGsの潮流
  5. まとめ

1.2019年に運営を開始した新規のソーシャルレンディングサイト

まずは2019年にサービスを開始した新規のソーシャルレンディングサイト2社の、現在の状況を確認してみましょう。

1-1.Funds

2019年1月に運営を開始したソーシャルレンディングサイトがFundsです。Fundsは株式会社クラウドポートが運営しています。従来のクラウドポートは、ソーシャルレンディング関係の総合メディアを展開していました。同社はメディア事業をZUUに譲渡した後、自社でソーシャルレンディングサイトの運営を開始したのです。

クラウドポートはFundsを『投資のオンラインマーケット』と称しており、案件の募集を自社で行わないスキームを取っています。同社は上場企業などが資金を募集するための場(プラットフォーム)を提供しているのです。

会員数は半年ほどで1万人を突破し、数々の上場企業や有力なベンチャー企業がFundsを通して投資を募集した事もあって、現在は抽選制度が導入されるほどに投資家の人気は過熱しています。今後のFundsの動向に注目が集まります。

1-2.COOL

2019年7月に運用を開始したソーシャルレンディングサイトがa href=”https://www.tcs-asp.net/alink?AC=C95788&LC=COOL1&SQ=0&isq=100″ target=”blank” rel=”nofollow” class=”obaf”>COOLです。COOLは在日中国人が運営する日本企業への融資を目的としたソーシャルレンディングサイトです。

さらに、主には日本企業が海外でビジネスを展開する時に資金を提供するなど、ユニークな案件を募集していました。ただし、募集は同年7月に一度きりでした。その後COOLはZUUにソーシャルレンディング事業を譲渡しています。

2社の動きから、金融メディアなどを展開している株式会社ZUUが、ソーシャルレンディング事業に非常に強い関心を示している事が分かると思います。ZUUはCOOLを買収した結果、第二種金融商品取引業を展開できるようになりました。今後はZUUがソーシャルレンディングサイトを運営していくものと思われます。

2.ソーシャルレンディング業界の最大手maneoが、案件募集を中止する事態に

2018年11月に行政処分を受けたソーシャルレンディング業界の最大手maneo。累計では1,700億円を超える募集実績がありました。maneoは2019年7月中旬から案件の募集を全て中止し、現在に至っています。

また、maneoのシステムを利用してソーシャルレンディングサイトを運営していた12社の全てが、現在はソーシャルレンディングに関係する案件を募集していない状況下にあります。

さらに、2019年にはクラウドリースで大幅な返済遅延が、また、アメリカンファンディングでも募集停止などが発生しました。その他トラストレンディングなど多数の会社で返済遅延が発生し、未だに投資家に資金を返済できていない状況です。maneoとmaneoのシステムを利用していた会社が引き起こした問題の解決は、2020年にずれ込みそうです。

2-1.maneoの株式をNHLD株式会社が保有

maneoの動向では、人事面も見逃せないものがあります。maneoの2代目の社長であった瀧本憲治氏は、2019年3月をもって退任しました。その後は取締役の安達義夫氏が社長に就任しましたが、NLHD株式会社が瀧本氏所有のmaneo株の大半を購入したというニュースが2019年9月に報道されました。

それに伴い、maneoの実質的なオーナー企業はNLHD株式会社になり、同社はソーシャルレンディングサイトSAMURAIを運営しているSAMURAI&Jパートナーズ株式会社も傘下に収めています。

maneoは現在でも案件の募集を見合わせていますが、9月に弁護士などで構成される外部調査委員会を設置しました。過去の案件の募集においてどのような問題があったのか、そして、投資家から集めた資金の用途についての調査を行い、発表するとしています。maneoが案件の募集を再開するとしたら、2020年以降になるでしょう。

2-2.maneoを通じて資金を募集していた会社が、他社で募集を開始

maneoを通じて資金を募集していたソーシャルレンディング各社は、他社のシステムを利用するようになりました。例えば、さくらソーシャルレンディングはSAMURAIを通じて資金の募集を再開し、スマートレンドの子会社である香港の金融機関はクラウドバンクを経由しています。

2社はmaneoのシステムを利用していた会社の中では、返済の遅延を一切起こしていない数少ない会社でした。案件の運用に関する審査が厳密に行われ、融資に問題がなかったソーシャルレンディング会社であれば、ソーシャルレンディング事業の継続が可能である事を証明しました。

3.既存のソーシャルレンディング会社の動向

maneoが全面的に案件の募集を控えた結果、既存のソーシャルレンディング会社にも多大な影響が出ました。既存のソーシャルレンディング会社の動向もチェックしてみましょう。

3-1.SBIソーシャルレンディング、クラウドバンクともに好調

累計募集実績で業界第2位のSBIソーシャルレンディングと第3位のクラウドバンクは、ともに業績は好調です。SBIソーシャルレンディングは累計報酬金額で1,100億円を突破し、クラウドバンクは745億円(2019年12月9日時点)まで伸長しています。2社ともにテレビCMを放送するなどして自社の認知度向上に努め、広報活動も積極的に行っています。

富士キメラ総研の調査結果によれば、SBIソーシャルレンディングは、2018年度の募集実績では既にmaneoを超えています。現在も運営中である国内のソーシャルレンディング会社の中で独走状態を続けています。2社を中心に、2019年における国内のソーシャルレンディング会社の募集実績は、2018年を上回るものとみられます。

3-2.maneoの募集停止に伴い、他のソーシャルレンディング会社に投資家の関心が向く

SBIソーシャルレンディングとクラウドバンク以外のソーシャルレンディング会社も、同様に好調です。オーナーズブックのように一定の実績を持つソーシャルレンディング会社では、募集に際して応募抽選制度を導入するなど、投資家が投資できない状態が今も続いています。クラウドクレジットSBI証券とのコラボキャンペーンを実施するなど、積極的に投資家の獲得に努めています。

中小のソーシャルレンディング会社のLENDEXポケットファンディングネクストシフトファンドなどは、募集を開始すれば瞬時に投資金額の上限まで達してしまう程の人気ぶりです。ソーシャルレンディングに対する投資家の意欲は、まだまだ高い水準を保っています。

3-3.金融庁の匿名化解除に伴い、情報の開示が浸透

ソーシャルレンディング関連で今年最大のニュースは、2019年3月に金融庁が発表した匿名化の解除に向けての方針の転換でしょう。従来のソーシャルレンディングの案件では、投資家が直に融資先に返済を迫るなどの活動を防ぐため、融資先の情報は金融庁の指導で開示されませんでした。

しかし、その匿名性の方針を利用していた業者もいました。例えば、ソーシャルレンディング事業を営む子会社が優先して親会社に融資したり、投資家から集めた資金を用途外に流用したりと、数々の問題が発生したのです。投資家やソーシャルレンディング業界内から要請を受けた結果、金融庁は匿名化解除の方針を打ち出す事になったのです。

前述のFundsや海外ローンファンドではネクストシフトファンドなどが匿名化解除に関する公開方針をいち早く発表し、各社も相次いで融資先の情報を公開するようになりました。また、融資先の企業名だけではなく、財務状況や資金の用途に関する詳細な情報の交換も頻繁に行われるようになりました。ソーシャルレンディング案件の透明性は、大幅に改善されたと言えるでしょう。

4.2020年のソーシャルレンディング業界の予測・展望

2019年を総括すると、「匿名化の解除によってソーシャルレンディング業界の風通しが良くなった結果、健全な投資先として認知されるための第一歩をようやく踏み出した」に尽きるのではないでしょうか。

それでは、2020年のソーシャルレンディング業界は、どのような動きを見せるのでしょうか。

4-1.ソーシャルレンディング案件に安全性を求める傾向は続く

2017年と2018年に相次いだソーシャルレンディング事業者の行政処分により、投資家の多くは損失を被り、または、未だに資金を拘束されています。それだけに、今後は利回りの追求よりも、安全な資産の運用を第一に考える投資家が増えるでしょう。

  • 担保がしっかりと付いている案件
  • 融資関係の情報が詳細に開示されている案件
  • 各種の情報を基に、投資家自らが投資の是非を判断できる案件
  • 利回りがそこそこであっても、資金の回収を手厚くした案件

等の案件が、今後はさらに充実していくものと見えます。

4-2.情報を開示した上で、ハイリスク・ハイリターン商品が望まれる

現在のソーシャルレンディング案件の利回りは、やや低下傾向にあると言えます。クラウドバンクやSBIソーシャルレンディングの不動産担保付案件は、予定された利回りが5%前後のものが多く、10%を超えるような利回りの案件を提供している会社はごくわずかです。

投資である以上は損失の可能性を考えなければいけませんが、今後はハイリスク・ハイリターンのソーシャルレンディング案件が、投資家の要請で増える可能性があります。

海外を対象とした外貨建てのソーシャルレンディング案件では、為替相場の変動によって利益が発生したり、損失が発生したりします。ハイリターンを目指す投資家にとって、外貨建ての案件が視野に入ってくるでしょう。

国内だけではなく、海外のソーシャルレンディング案件に投資すれば、リスクの分散に繋がります。今後は海外を中心とした、より多くのハイリターンの案件が登場する可能性もありそうです。

4-3.ソーシャルレンディングでも無視できないESG投資・SDGsの潮流

グローバルの株式投資や債券の分野では、すでにESG投資やSDGsを意識した投資が主流となってきています。国内でも世界最大の機関投資家と呼ばれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を積極的に推進しており、上場企業や国内の投資家ももはやESG投資を無視することはできない状況になりつつあります。

ソーシャルレンディングの領域においても、新興国・途上国の中小事業者に対するローンなど社会的インパクト投資に特化したネクストシフトファンド、同じくインパクト投資に力を入れているクラウドクレジット、「SBISLカンボジア・マイクロファイナンスローンファンド1号」(募集期間:2019年8月5日~2019年8月22日)のような貧困層や零細事業者を対象としたマイクロファイナンス案件などにも力を入れ始めたSBIソーシャルレンディングなど、ESG投資やSDGsなどを意識した事業者・案件が増えてきています。

2020年もこの流れが業界全体で大きくなっていくことが予想されますので、投資家サイドでも社会的インパクト投資などに対する理解を深めながら、自身のポートフォリオを再考していくことが大切です。

まとめ

ソーシャルレンディング市場は拡大の一途にあります。しかし、それでも不動産投資市場や証券市場、REITの市場などと比べれば、まだまだ小規模に過ぎません。ソーシャルレンディングは、これからの市場です。現在は各社が数字を奪い合うフェーズではなく、まだまだ拡大の余地を残しています。

ただ、業界の拡大にあたり、これまで以上の案件の安全性に関する積極的な取り組みや、海外ソーシャルレンディング案件の拡充、ESG投資ニーズの取り込みなども求められるようになってきます。ソーシャルレンディング各社の取り組み・動向を注視しながら、2020年も投資を進めていきましょう。

Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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