ふるさと納税で高める防災意識、津波遺構のホテルを案内する返礼品も

ふるさと納税による災害支援では、当該自治体の負担を考慮して返礼品を受け取らず寄付する場合が一般的だ。しかし、返礼品は、ご当地の物産品や体験型レジャーだけではない。

ふるさと納税ポータルサイト「さとふる」では、2011年3月の東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県宮古市の「学ぶ防災・宮古市田老地区 津波遺構案内1時間コース」(寄付金額1万円、5名まで利用可能)を紹介している。津波遺構の「たろう観光ホテル」をガイドが約1時間かけて案内してくれる。

学ぶ防災・宮古市田老地区 津波遺構案内1時間コース

学ぶ防災・宮古市田老地区 津波遺構案内1時間コース

同ホテルは震災により、6階建ての建物の4階まで浸水、1・2階は完全に破壊されてしまった。津波の脅威を後世に伝えるための津波遺構として保存されている。ガイドツアーは、後世に教訓を生かすための取り組みとして、震災発生の翌年から行っている。ふるさと納税を活用しより多くの人に利用してもらおうとお礼品登録に至ったという。震災後10年となる2020年1月にはエレベーターの開設が予定されている。また、同県では今年9月に陸前高田市に「東日本大震災津波伝承館」ができるなど、防災意識を呼び掛ける拠点が整備されている。

同コースのガイドは全員、当時の被災者。館内の案内の他、前所有者が撮影した映像(津波遺構以外では未公開)を上映し説明する。「災害はすべての場所で起こりうる」ため、突然の自然災害を考えて、何を準備すればいいか、心構えなどを紹介したいという。当事者だけが語り得る内容が、被災地との距離と震災発生からの時間を越え、参加者を共振させる。

「誰しも被災者になる可能性があるものの、どうしても“自分事化”できないことも多い。実際の経験者の方の話を聞き、当時の様子を目の当たりにする経験を通すことが防災意識の高まりに繋がるはず。また、現地を訪れることが地域を応援することにもなり、応援したい地域に寄付をする、応援したい地域に貢献するという、ふるさと納税の本来の意義に沿った役立ち方になる」。さとふる株式会社は同市の取り組みの意義を説明する。

同市は名勝・浄土ヶ浜を有する「三陸復興国立公園」、高山植物の宝庫として名高い北上山地の最高峰・早池峰山を中心とした「早池峰国定公園」をはじめ、豊かな自然に恵まれている。また、同市を含む三陸地域は「三陸ジオパーク」として、地球や大地の成り立ちを知ることのできる日本ジオパークに認定されている。漁業が盛んで、ウニやイクラ、ワカメなど豊富な海の恵みも楽しめる。訪れれば、復興の力強い歩みを感じることができるだろう。

ふるさと納税の災害支援では、「非常食」や「非常トイレ」など、防災関連のお礼品も増えつつあるという。同社では「取り扱い自治体数が増えたこと、お礼品拡充に加え、防災意識が高まっているように見受けられる」としている。ユーザーレビューには、「災害が多いので、備蓄品として最適で安心。 でも、これを使うことにならないように願ってます」といった声も寄せられている。

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