個人でESG投資ができる主な投資商品は?具体的なサービスも紹介
長期的な運用に向いた投資手法として注目されているESG投資は、投資対象の財務状況だけでなく、「環境」「社会」「ガバナンス」の観点も評価する必要があるため、興味があってもなかなか難しいと感じる方もいるでしょう。
そこでこの記事では、ESG投資の基本的な特徴やメリットを詳しく解説するほか、ESG投資商品の種類と始めやすいサービスについてご紹介します。長期的に安定した資産運用を考えたい方や、ESG投資に関心のある方は参考にしてみてください。
目次
- ESG投資の特徴・メリット
1-1.長期的な投資に向いている
1-2.投資を通して社会貢献ができる
1-3.市場が拡大している - ESG投資ができる主な投資商品
2-1.投資信託
2-2.債券
2-3.株式
2-3.クラウドファンディング - まとめ
1 ESG投資の特徴・メリット
ESG投資とは、企業の財務状況だけでなく、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3点に着目して投資先の評価を行う投資方法です。
企業活動において利益追求の傾向が強まると、環境問題や労働者の人権問題、不正会計といった社会的な問題が生じる可能性が高まります。これらは企業の価値を大きく損なうリスク要因となるため、コンプライアンス(法令遵守)の意識や地球環境に優しい企業活動を行っているかなどを投資先の評価に加えることで、投資リスクを下げるのがESG投資の基本的な考え方となっています。
また、ESGに優れた企業に投資が集まる環境を作ることで、社会的な責任を果たす企業を多く生み出し、健全で持続可能な市場環境を作ることもESG投資の目的です。当初は欧米を中心に広まったESG投資は、日本においても2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名したところから、徐々にその広がりを見せています。
それでは、ESG投資の主なメリットを確認してみましょう。
1-1 長期的な投資に向いている
ESGに優れた企業は、社会的な評価を下げるリスク要因が少ない企業と評価されやすくなります。公正で持続可能な事業活動を展開していることが評価されるだけでなく、市場環境の様々な変化の中で、ESGを高く維持することができるマネジメント能力に優れた企業の証しにもなります。時間の経過とともにより一層の成長を見込むことができるので、ESG投資は長期的な投資に向いた投資方法と評価されています。
また、ESGの評価が高い企業が増えることによって市場の持続可能性も高まります。もしも河川や海洋の汚染を気にせずに生産活動が行われれば、やがて自然の生態系にも影響が及ぶことになります。ESGに配慮した事業活動をする企業が増えれば、事業活動の大前提となっている環境も守られ、変動が少なく先の見通しが立てやすい市場環境を維持しやすくなります。
ESG投資は投資先企業の事業活動やマネジメント、市場環境などの企業内外に安定をもたらす効果があることから、長期的な投資に適していると評価されています。そのため、長期的な観点で運用する必要のある年金基金などは、ESG投資が行われています。
1-2 投資を通して社会貢献ができる
ESG投資が投資家にもたらすのは、経済的なメリットだけではありません。投資家として関心のある社会問題の解決に取り組む企業に投資し、企業とその活動を支えることは社会貢献の一つです。投資家は、ESG投資によって社会問題が改善されて市場環境なども上向きになっていくことを実感できるので、精神的な満足感が得られます。
1-3 市場が拡大している
環境問題や社会貢献の解決に向けて、2015年に国連ではSDGs(持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals)が採択されました。この目標達成のためには、多くの資金が必要であり、また様々な分野において技術革新や制度改革等が必要です。そのため、国や企業が環境問題や社会問題の解決に向けて多額の資金を投入しており、研究開発やプロジェクトの実行に取り組んでいます。
技術革新や制度の変更は、企業にとっても大きな成長のチャンスです。ESGに取り組む企業は社会から様々なサポートを受けやすくなるため、持続的な成長や企業価値の向上が見込めます。
経済産業省によれば、2014〜2016年の3年間で世界のESG市場は18.3兆ドルから22.9兆ドルにまで拡大しており、日本でも70億ドルから4,740億ドルに拡大しています。今後も市場拡大傾向は続くと予想されており、成長が見込めるESG市場は個人投資家にとっても大きなチャンスと言えます。
2 ESG投資ができる主な投資商品
従来、ESG投資は主に銀行や保険会社などの機関投資家によって行われてきました。個人投資家はESG投資に関心があったとしても、ESGを評価・分析をするための情報やノウハウがないために難しい状況がありました。
しかし、最近はコンプライアンスや環境問題に対する社会的な関心が高まる中で、企業の情報開示が活発に行われるようになってきており、ESGの評価ノウハウをもった企業と連携して投資商品を開発する金融機関も増えてきました。その結果、個人投資家でもESG投資を行える商品が増えています。
現在、個人がESG投資をするための主な手法としては、「投資信託」「債券」「株式」があります。以下、これらの投資商品について解説します。
2-1 投資信託
プロの投資家に資金を委託し、運用を行ってもらう投資信託は、「投資の入り口」とも言われる投資方法です。ESG投資信託では、機関投資家がファンドを組み、そこに投資家が投資を行います。プロが企業のESGの状況を評価し、また投資先としての採算性も含めてバランスのよいポートフォリオを作成してくれるのが特徴です。そのため、運用やESG評価に関する知識がなくても始めやすいなどのメリットがあります。
ファンドの目論見書(投資信託の商品内容を具体的に説明した参考書類)を読めば、どのような基準で投資先が選ばれているかを確認でき、運用のパフォーマンスなどもわかります。環境問題への取り組みを評価するファンドや、女性の活躍が目立つ企業を評価するファンドなど種類もさまざまです。
なお、国内の大手企業はESGにしっかり取り組んでいる会社が多いため、一般的な投資信託とポートフォリオが近い場合もあります。個人的に関心のあるテーマがあれば、テーマ性の高い投資信託商品に投資してみるのもおすすめです。
2-2 債券
債券は、企業が資金を借り入れる際に発行する証書です。債券に投資すると、デフォルトが発生しない限りは定期的に利息が入り、償還日には元本が返ってくるため、その確実性の高さから投資家に人気の高い投資商品です。
ESG投資としての債券は、自然エネルギー普及のための国や自治体、企業の債券や、地域貢献性の高い企業の社債などを購入する方法もあります。
代表的なESG債券としては、環境分野への取り組みに関する資金調達を行う「グリーンボンド」や、健康や教育問題などの解決に投資する「ソーシャルボンド」などが有名ですが、これらはまだ個人向けに販売されているものが少ないため、今後の供給が期待されるところです。
また、ファンドがESG評価の高い企業を選定して資金を募集する債券投資信託を購入する方法もあります。
債券は取得しても企業の経営に意見することはできないため、企業の抱える潜在的なリスクや現在の取り組み状況、将来の方向性等を調べておくことが重要です。長期的な安定性を重視するESG投資は、債券と相性の良い組み合わせと言えるでしょう。
2-3 株式
株式投資でもESG投資が可能です。株式投資でESG投資を行うには、ESGに関する取り組みがしっかりしている企業を選んで投資することになります。企業は情報開示に対するニーズの高まりを受けて、非財務情報も企業サイトなどで積極的に公開するようになりつつあるため、大手企業を中心に個人でも評価することは可能です。
なお、個人でESGへの取り組みを調べるのが難しい場合は、ESG型の投資信託商品に含まれている企業をチェックして投資先候補とする方法もありますし、「なでしこ銘柄」や「健康経営企業」などの第三者評価が行われている企業に投資する方法もあります。
また、ネット証券の「SBI証券」では、テーマ投資という形でESG投資の有望企業10社への分散投資ポートフォリオを提案してもらえるサービスなどもあるので、活用してみると問いでしょう。
企業をESGの観点から評価したESG指数やESGスコアを用いる方法もあります。指数(インデックス)は上場株式扱いで投資することが可能なので、モーニングスター社会的責任投資株価指数(MS-SRI)やMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・ワールド・インデックス(DJSI World)などが参考になるでしょう。
2-4 クラウドファンディング
投資信託・債券・株式以外にも、クラウドファンディングという手法でESG投資に取り組むことができるようになってきています。たとえば、カンボジアやジョージアなどで、成長力を有しながらも資金不足によって成長が難しい個人や事業者に対し、クラウドファンディングの仕組みを使って現地のマイクロファイナンス機関を通して融資を行っているのが「ネクストシフトファンド」です。
ネクストシフトファンドの投資案件は、貸付型のクラウドファンディングという形式で「ソーシャルレンディング」とも呼ばれています。ソーシャルレンディングは、1口数万円程度から個人投資家がファンドに投資することができ、集まった資金を融資して利息を加えた返済を受け、それを投資家に分配するという仕組みになっています。
ネクストシフトファンドはまだ始まったばかりのサービスで、実績数はそれほど多くありませんが、順調に成長を続けています。2020年2月末時点で、出資総額が1億5564万円となっています。最低投資金額が2万円、募集金額500~800万円ほどの少額案件がほとんどです。1年~2年ほどの短期の運用で、予定利回りは4.5%~7.2%(税抜き)程度が期待できます。
ネクストシフトファンドの投資案件は、現時点で新興国の事業者に対するものが多く、カントリーリスクや事業者の経営能力といったリスクがあることは否めません。しかし、現地に詳しいスタッフが実際に訪問してマイクロファイナンス機関や事業者を確認した上で案件選定が行われており、また運用期間も短く設定することでリスク低減を図っています。
実際、2020年3月時点で貸し倒れはまだ出ていません。社会貢献だけでなく、経済的なリターンもしっかり評価するというESG投資の実践例と言えるでしょう。
まとめ
ESG投資は、投資先を財務状況だけでなく、環境・社会・企業統治の関連からも評価する投資手法で、社会貢献と経済的リターンの両立が可能です。中長期の投資を安定的に行いたいと考える方に適した投資方法として投資家たちに注目されています。
投資信託や債券、株式などの形で商品の提供が行われており、ソーシャルレンディング型の投資も増えています。ESG投資に興味のある方は、この記事を参考にご自身の投資方針に合った商品を検討してみてください。
Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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