【特集コラム】ブロックチェーンゲームとNFT資産の現況
今回は、ブロックチェーンを利用したゲームの未来と課題について、信玄氏(@shingen_crypto)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。
目次
ブロックチェーンゲームとNFT(Non Fungible Token)は2017年のCryptoKittiesが起こしたブームをきっかけに注目され、その後もマイクリプトヒーローズやクリプトスペルズ、Axie Infinity、Gods Unchainedなど代表作はそこまで数は多くないものの、現在まで続いています。そして日本国内のブロックチェーン界隈でもブロックチェーンゲームとNFTは明らかに注目度の高いテーマです。
では今までのゲームとブロックチェーンゲームでは何が違うのでしょうか?また何故日本国内でも注目されているのでしょうか?
簡単な言葉で言えばブロックチェーンゲームとその主な資産であるNFTは、トレーディングカードゲームの物理カードの様な所有権と二次流通機能を持ちながらも、オンラインで扱えるという良いとこ取りが可能です。更に事業者側もNFTの取り扱いに関しては非常に敷居が低くなっている事から、より多くのサービスで扱い易いというメリットがあります。
ブロックチェーンゲームが目指すもの
上記のコメントはEthereumファウンダーのVitalik氏が既存のオンラインゲームに対して残したコメントです。World of Warcraftという当時最も世界で人気のあったオンラインゲームにおいて、彼の愛用していたキャラクターを弱体化する修正が勝手に適用された事が悲しかったという体験と、ユーザーの意思とは無関係に修正が適用されてしまう事に対する不満を述べています。
また、色々なオンラインゲームで得たゲーム内資産というのは基本的に売却が出来ない事が多いです。過去はプレイヤー間でのトレードが基本でしたが、それがRMT(リアルマネートレーディング)に繋がり運営の収益を損なったり、アイテムをファーミングするBotがユーザーの邪魔になったりゲーム内経済を破壊する事からプレイヤー間のトレードを禁止する傾向が今では強いです。
特に課金要素の強いソーシャルゲームではプレイヤー間のトレードは禁止される傾向が強く、非公式には売却方法が無くは無いものの前提とする事は厳しく、不正を疑われた場合にはアカウント≒資産を停止、凍結される事もあります。中には香港の抗議活動に賛同を示したプロeSportsプレイヤーが、ゲームのアカウントを停止された事もありました。
あくまでもこれは理想であり実現が非常に難しい事は前置きした上で述べる事になりますが、ブロックチェーンゲームでは
- ゲーム資産をプレイヤーが直接所有出来る上に二次流通市場が存在する(ただし発行側の仕様によっては移転不可の様な制限をつける事も可能であると考えられる)
- 同じチェーンであれば共通規格のデータを資産として扱う事から、別ゲームであっても同じ規格の資産を利用できる(例: ERC規格トークン)
という点にあります。そして表面的に見れば現状大半のブロックチェーンゲームではマーケットによる二次流通が保証されているものの、理想を達成出来たとは言い難いのが現実です。
ブロックチェーンゲーム資産が持つ課題
前述した通りほぼ全てのブロックチェーンゲーム資産は二次流通が保証されています。トークン化されたゲームアイテムやキャラ、カード、土地などの様々な資産は色々なマーケットで売買が可能であり、そこに直接運営が介入する余地は基本的にはありません。
しかしながらこうしたゲーム資産の価値というのはゲームを開発、運営する組織に著しく依存しているのが現状です。更にゲームのバランス調整についても殆どの場合は運営側に依存します。とは言え仮にガバナンス、投票による調整が可能だとしても対戦ゲームにおいてはそうした調整が良い結果を招くとは限らず、バランス調整は非常に難しいテーマです。
また仮に自分の所持する資産自体の強さやパラメータが変化しなかったとしても、それより強力なものが登場したりトレンドが変化すれば資産の価値は著しく低下するでしょう。勿論逆のケースもありますが、そういった意味で運営主体が存在する限りはゲーム資産の価値は運営依存という運命から逃れる事は難しいでしょう。
つまり所有権をユーザーが持つ事と、所有するゲーム資産の価値が残る事は必ずしも一致するとは限らないという事になる為、”資産の所有権はユーザーにある”という謳い文句に関して多くの人が持つであろうイメージと現実の間には乖離が出てしまうと考えられます。
ブロックチェーンとNFTならではのメリット
こうしたゲーム資産は同じチェーン上では共通規格のトークンである事から、例えば同じEthereumのブロックチェーンゲーム同士であれば異なるゲームであってもゲーム資産を利用する事が”技術的には”可能です。勿論それを可能とするかどうかはゲーム側次第となりますが、コラボレーション企画やシリーズものなどで別作品の資産が利用できたら、それは魅力的な話かもしれません。
もしも色々なゲームの資産を持ち込んで遊べる、且つ盛り上がる様なゲームがあれば、その影響で色々なゲーム資産が値上がりする可能性もあります。
とは言え実際にはこうした事は実現が難しく、現状多くのブロックチェーンゲームでは自ゲーム資産の販売によって利益を上げていますから、他ゲームの資産を持ち込む事よりは自ゲーム資産の売上を増やす方にインセンティブが傾いてしまいます。
しかしもしも色々なゲーム資産を自由に持ち込めて、それでも尚且つゲームの面白さとマネタイズの両立が出来るならば、それこそブロックチェーンゲームならではの特性を活かしたものになるでしょう。
そして冒頭でも述べた通り、基本的には日本国内ではNFTを暗号資産として扱われない事から、取引所と比較して事業者のブロックチェーンゲーム参入障壁は非常に低くなっています。特にゲームの様なものは事業者が参加してくれなければゲーム事態が提供されない為、こうした規制面は非常に重要です。
更にブロックチェーンゲームはNFTの特性にDeFiの特性を組み合わせる事も可能ですので、ステーキングやLiquidity Mining、配当モデルの様なインセンティブも付与出来ますし、実際にそういった試みを行うブロックチェーンゲームも既に存在します。
スケーラビリティとネットワーク手数料問題
ブロックチェーンゲームでは基本的に資産の売買や発行をチェーン上で行いますが、これにはチェーン上でトランザクション発行が伴う為にネットワーク手数料(通称ガス代)が発生します。多くのブロックチェーンゲームはEthereumを利用していますが2018年〜2019年ではネットワーク手数料があまり大きな問題になる程に高騰し続ける事はありませんでした。
しかし2020年の夏にはDeFiバブルに伴いEthereumのネットワーク手数料は凄まじい高騰を起こして尚且つ長期間継続するという今までにない事態が発生しました。通常の数百倍にもなる手数料が起きた事からブロックチェーン市場では売買するにも発行するにも手数料負けする様な状態になり、ユーザー側も事業者側も深刻な事態となったのです
例えば数ドルのカードを売買するのに10ドル以上、発行するのに20ドルかかるという様な事が起きていたので、多くの安価なゲーム資産はまず動かない様な状態が暫く続きました。もしもこんな事が度々起きていたら、とてもEthereumの上ではブロックチェーンゲームの運営は成り立ちません。
そこでこの問題に対しては様々な取り組みが計画されており、例えば下記の様な実証実験や開発が進められています。
- Rollupと呼ばれる技術の応用により、多くのトランザクションを一つに束ねる事でNFT売買や発行の手数料を大幅に下げる方法
- オフチェーンで取引を行い、それをメインチェーン側に反映させる方法
- 手数料が安く高速な他のチェーンへの移転
こうしたスケーラビリティ問題解決の対応はブロックチェーンゲーム周りのみでなく各所で強烈に進められている為、対策が進めばその分余裕が産まれてくる可能性もあるでしょう。
まとめ
今回はブロックチェーンゲームとNFTに関する理想と現実、今後の課題についてまとめました。現在は色々な課題があるのは解った上で新しい可能性に賭けて様々な試みを行っている段階だと感じますが、いつかは大作がブロックチェーンゲームとなりマス層が当たり前に参加する様な時代は来るのではないでしょうか。
マネタイズ方法についてもゲーム資産を売り切るスタイルのみでなく、レンタルや手数料型などを含めて様々なモデルが試されようとしています。スケーラビリティと手数料問題も含め、こうした新たな取り組みが実用段階に入るのも数年先の話ではなく、恐らく2020年末から2021年前半頃には状況が大きく変わっている可能性すらあります。
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