不特法の改正、不動産投資型クラウドファンディングに与える影響は?
不動産特定共同事業法は1995年に施行されて以来、複数回にわたり改正されています。この不動産特定共同事業法は、不動産投資型クラウドファンディングの運用に大きく関係する法律です。
不動産投資型クラウドファンディングは比較的新しい投資手法であり、関連する法律の変化によって大きな影響を受けることもあります。リスク回避のためにも、法改正の内容を理解し、注意しておくことが重要です。
そこで今回は、これまでの不動産特定共同事業法の特徴や種類、改正内容やまた小規模特定共同事業法の内容について解説します。
目次
- 不特法(不動産特定共同事業法)について
1-1.不動産特定共同事業法とは
1-2.不動産特定共同事業法の種類 - 不動産特定共同事業法の改正の歴史
2-1.2015年の改正
2-2.2017年の改正
2-3.2019年の改正 - 小規模不動産特定共同事業法とは
- まとめ
1.不特法(不動産特定共同事業法)について
以下では、不動産特定共同事業法の特徴や要件、種類について見ていきましょう。
1-1.不動産特定共同事業法とは
不動産特定共同事業法は、不動産特定共同事業の根拠となる法律のことで、1995年に施行されました。
不動産特定共同事業とは、高額な不動産を小口化して投資家から出資を受け、不動産の運用を行い、その収益を出資者に分配する事業のことです。
1980年代のバブル期に、高額な不動産を小口化して販売して収益を分配する事業が急速に広がりましたが、バブルが弾けると零細事業者の倒産が相次ぎ、投資家は大きな損失を被る事態が発生したのです。
このような背景から、不動産特定共同事業会社の適切な運営や投資家保護を目的とした法律による統制が強く求められ、不動産特定共同事業法が制定・施行されました。
不動産特定共同事業法が施行されたことで、不動産特定共同事業を運営するには国土交通大臣や都道府県知事の許可が必要になります。これにより、要件を満たした事業主だけが不動産特定共同事業を運営できるようになりました。
不動産特定共同事業を営むための要件
不動産特定共同事業を営むための主な要件は、以下5点です。
- 資本金が必要な金額を満たしていること
- 宅地建物取引業免許を受けていること
- 良好な財産的基礎と適切に事業ができる人的資源を備えていること
- 基準を満たす契約約款を備えていること
- 事務所ごとに業務管理者を配置していること
これらの要件を満たすことで、不動産特定共同事業を行うことができます。
1-2.不動産特定共同事業法の種類
不動産特定共同事業法では「任意組合型」「匿名組合型」「賃貸借型」の大きく3つの契約類型が認められています。
任意組合型
投資家と不動産特定共同事業者との間で任意組合契約を締結して、運用する商品です。高額な商品が多く、投資家が不動産の所有権を持つのが特徴となります。
匿名組合型
投資家と不動産特定共同事業者との間で匿名組合契約を締結して、運用する商品です。各投資家は匿名組合員になり、不動産の所有権は事業者が持ちます。1口数万円など少額な商品が多いのが特徴です。
賃貸借型
業者から購入した不動産の共有持分を持つ投資家が、不動産特定共同事業者に賃貸または委任し、事業者が運営を行い、収益を投資家に分配します。不動産の所有権は投資家が共有で持ちます。
このように、それぞれの契約類型で内容が異なっています。現在、日本で運営されている不動産投資型クラウドファンディングサイトの多くは匿名組合型となっており、一口100万円以上など高額な商品では任意組合型も扱われています。
2.不動産特定共同事業法の改正の歴史
不動産特定共同事業法は、1995年に施行されて以来、3回にわたり改正されています。ここでは、2013年と2017年の主な改正内容について解説します。
2-1.2013年の改正
2013年の改正で、SPC(特定目的別会社)を活用した不動産特定共同事業契約に基づき、収益・利益の分配を主な目的とする法人「特例事業」の制度が可能となりました。
不動産を運用する会社とは別の法人が資産配分できるため、運用会社が倒産をしても、投資家のリスクを軽減できます。特例事業に関しては、許可がなくても一定事項の届出で事業ができます。
2-2.2017年の改正
2017年の改正では、特例事業者の範囲が緩和されたことで、小規模特定共同事業が創出されました。
許可制度から登録・更新制度へと変わり、資本金の要件も緩和されたことで、より多くの事業者が不動産特定共同事業を行える環境へと変わっています。また、クラウドファンディングに対応できるようになりました。
また、2019年にも改正があり、インターネット取引のルールが明確化されたり、新設法人でも不動産特定共同事業を運営しやすくなっています。
投資家としては企業が提供する投資商品のバラエティが増え、様々な選択肢から選べるメリットのある法改正とも言えます。しかし、法規制の緩和により業績が不透明な企業が参入することも予見されるため、注意しておきたいポイントです。
3.小規模不動産特定共同事業とは
前述したように、不動産特定共同事業法の2017年の改正によって、小規模不動産特定共同事業が創設されました。登録・更新制度になり、資本金要件も緩和されたことで小規模の事業者でも不動産特定共同事業に参入しやすくなりました。
参入要件が緩和されたことで地域の不動産会社が参加できるようになり、資金調達方法の選択肢が広がります。銀行からの融資を受けられずに事業展開できなかったことも、できるようになります。
例えば、空き家活用や古民家等を改装して事業をする場合、銀行からの融資を受けるのは簡単ではありません。しかし、小規模不動産特定共同事業により、クラウドファンディングの活用ができ、金融機関以外から資金調達することが可能となりました。
事業者が参入しやすくなったことで、不動産市場の活性化につながることが期待できると言えます。
小規模不動産特定共同事業者の要件
小規模不動産特定共同事業者の主な要件は、次の通りです。
- 資本金:1,000万円以上
- 純資産:純資産≧(資本金または出資の額×90/100)
- 免許:宅地建物取引業
- 投資家から受けられる出資合計額:1億円以下
- 投資家一人あたりの出資額:100万円以下※特例投資家(プロ投資家)は1億円以下
- 5年ごとの登録更新
- 事務所ごとに業務管理者を配置(不動産特定共同事業の業務経験が3年以上、不動産証券化協会認定マスター(ARES)、ビル経営管理士、不動産コンサルティングマスターなど)
※国土交通省「不動産特定共同事業法の一部を改正する法律」を参照
このような要件をクリアしている事業者は、小規模不動産特定共同事業を行うことができます。比較的小規模な企業でも、一般の投資家から資金を調達することが出来ることが分かります。
不動産投資型クラウドファンディングは比較的新しい投資手法であり、悪質な事業者が資金調達の手段として不特法を利用する可能性はゼロではありません。実際に投資を検討する際は、投資先の事業者の経営状況や運営内容、過去の実績などを調査し慎重に検討することが大切です。
まとめ
1995年に施行された不動産特定共同事業法は、これまでに3回改正され、クラウドファンディングや小規模不動産特定共同事業に対応するようになりました。
要件が緩和されて参入しやすくなり、小規模な事業主でも資金調達のバリエーションが増えて事業展開がしやすくなっています。一方、投資家としては様々な事業者が参入することも予見されるため、投資対象ごとにしっかりと見極めるスキルが重要となると考えられます。
今後も時代に沿った内容に改正される可能性があるため、不動産特定共同事業法の動向を注視しておきましょう。
Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
不特法の改正、不動産投資型クラウドファンディングに与える影響は?