「調整局面は、押し目買いの好機」ナティクシスの5月マクロ経済・市場見通し

新型コロナウィルス感染拡大は、ワクチン接種の進捗によって先進国では感染者数減などの効果が現れ始めた。資産運用大手のナティクシス・インベストメント・マネージャーズは5月のマクロ経済・市場見通しで「財政刺激策、金融支援策、良好な企業業績など、現行のファンダメンタル的な下支えがある」と、ワクチン接種による経済再開の見通しに言及している。

グローバル・マーケット・ストラテジー部門責任者のエスティ・ドウェク氏は「世界の成長見通しは引き続き改善しており、特に欧州では指標とセンチメントが追い付いてきている。リフレ期待からソブリン債の利回りは上昇したが、経済再開の大半は織り込み済み。ファンダメンタルズ面での下支えが継続していることから、リスク資産に対する建設的な見通しを維持する」と俯瞰している。

マクロ経済については、最近の米経済指標に注目し「4月の雇用統計では非農業部門の雇用者数の伸びが26万6000人にとどまり、予想されていた100万人増を大幅に下回る結果となった。サプライマネジメント協会(ISM)が発表した米製造業景況感指数(PMI)も予想を下回ったが、マークイット社のサービス部門の数値は僅かながら予想を上回った」と指摘。一方、欧州では、3月の小売売上高がコンセンサス予想を上回る2.7%の上昇となり、ドイツの製造業受注も3%増となるなど、経済活動の回復を示した。全体として「米国経済の強さには引き続き自信を持っており、欧州も下半期には力強い回復を見せる」という見方だ。

大半の欧州諸国では、少なくとも国民の4分の1に1回目のワクチン接種が行われており、欧州連合(EU)では5月上旬の時点で平均28%が接種を受けている。オランダとベルギーでは移動制限の緩和が始まり、屋外での接客が再開された。さらに、欧州委員会(EC)は、6月までにEU域外からの旅行者に国境を再開する計画を発表した。

日本では、政府が東京の緊急事態宣言を5月31日まで延長。また、日本と英国は、G7外相会合に先立って行われた二国間協議において、貿易および安全保障面での協力関係を強化することに合意した。

政府の経済支援が縮小したにもかかわらず、中国の経済指標は予想を上回った。中国メディアの財新(Caixin)が発表した4月のサービス業PMIは56.3と今年最速の伸びを示し、また、4月の輸入品の2年間の伸び率は16.8%(コロナ禍のベース効果を除く)に達し、労働節の5連休により国内の観光客は急増しコロナ禍前の水準を上回った。

全体としては「短期的にはリフレトレードが米ドルに下落圧力をもたらす可能性はあるものの、成長の改善、キャリーの増加、好調な企業業績により、その影響は限られると引き続き考えている。また、欧州の投資家のヘッジコストは大幅に低下しており、これも米ドルの支援材料となる」と見通しを立てている。

市場の見通しとしては、新規感染者数が落ち着き、経済再開の見通しが改善したことにより、リフレトレードが再び勢いを増している。S&P500の中では、テクノロジー株が消費財、公益事業、不動産株と並んで低調。テクノロジー株の比重が大きいナスダックは、直近の週足で2ヶ月ぶりの大幅な下落幅を記録した。一方、金融株はテクノロジー株を大きく上回り、また、シクリカル株の大半も非常に好調で、ディフェンシブ株を上回っている。すでに第1四半期の決算発表の大半が終了しているが、S&P500の86%、STOXX600の70%の企業が予想を上回るEPSを報告するなど好調だ。

全体的には「ワクチン接種が進み、経済再開の見通しが立つのに伴い、財政刺激策、金融支援策、良好な企業業績など、現行のファンダメンタル的な下支えがあることから、調整局面は『押し目買い』の好機と見ている」とドウェク氏。金融、鉄鋼、自動車、機械、電気機器、建設、不動産といったシクリカルセクターは引き続き、ファンドや個別銘柄、ポートフォリオなどの運用成績がベンチマークとする指標を上回る『アウトパフォーム』となり、欧州、日本、アジアも恩恵を受けるだろう」と予測している。

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