【特集コラム】ERC721やERC1155をよく見るけど、これって何?

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の赤澤 直樹 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. OpenSeaやRaribleを見てみると。
  2. 利便性向上のために標準が存在する
  3. NFTでよく使われる標準
    3-1. ERC721
    3-2. ERC1155
  4. まとめ

NFTというワードがアーティストやクリエイター、暗号資産コミュニティで市民権を得始めてきました。この記事を読んでいただいている方もOpenSeaやRaribleといったプラットフォームを覗いたことがある方も多いのではないでしょうか。

ところで、そのようなプラットフォームにERC721やERC1155といった文言を見かけることはないでしょうか。これらのキーワードの意味をご存知ですか?これらの意味をしっかり理解するとNFTに対する解像度がグッと高くなります。

1. OpenSeaやRaribleを見てみると。

OpenSeaやRaribleを利用しているとしばしばERC721やERC1155というキーワードをみることがあります。例えば、OpenSeaではERC1155の利用ができるようになったというアナウンスメントが2019年9月に発表されています

また、開発者用のチュートリアルなどが掲載されているドキュメントにはERC721やERC1155が両方確認できます。

RaribleでもNFTを発行する作業を進めていくと以下のようにERC721が選択できるようになっています。

このように、なにやらNFTと深い関わりがありそうなERC721やERC1155というキーワードが随所で確認できます。果たしてこれらは何を意味しているのか見ていきましょう。

2. 利便性向上のために標準が存在する

ERC721やERC1155というキーワードは端的に表現するならば、標準(スタンダード)のことを意味しています。ERCはEthereum Request for Commentsの略であり、イーサリアム上で行われる開発やトークンなどの共通規格を表現しています。

イーサリアムをはじめとするブロックチェーン界隈では標準化が積極的に行われており、今時点でも多くの規格案がディスカッションされています。イーサリアムの場合、EIP(Ethereum Improvement Proposals)と呼ばれる提案(プロポーザル)が世界中の開発者などから行われています。ここで出された提案に関するディスカッションは原則オープンに行われており、誰でも参加することが可能です。ERCはEIPに関するディスカッションを経て標準化された一種のフォーマットのようなもの考えることができます。

このように標準化を積極的に進めている理由はいくつかありますが、異なるサービス間で互換性を持たせることがその一つです。例えば、イーサリアム上で発行されるトークンが同じ標準に則っていれば、プラットフォームやウォレットが異なっていても同じように扱うことができます。

トークンを扱う際、MetaMaskを利用したり、OpenSeaやRaribleといったようなプラットフォームを利用します。例えば、OpenSeaでは自分でオリジナルに開発したNFTや別のプラットフォームで発行したNFTを一覧表示したり、売買やオークションにかけることができます。従来通りのマーケットプレイスのようなプラットフォームだとプラットフォームを跨いでこのような扱い方をすることは基本的に難しいものです。しかし、同じ共通規格で作られたトークンであれば、トークン自体の構造が同じであるため、たとえ違うサービス間であっても同じように取り扱うことが簡単になるという訳です。

3. NFTでよく使われる標準

ここでは、NFTに関してよく利用される2つの標準、ERC721とERC1155を紹介します。

3-1. ERC721

ERC721は現在NFTを発行する際に最もよく利用される規格です。この規格では、トークンの基本機能とも言える所有や転送に関わる最低限の機能が定義されています。また、発行するトークンが一意になるようにトークンIDと呼ばれるものを設定することで代替不可能性を保証しています。

また、NFTでよく見かける画像や動画などのコンテンツやNFTのタイトルなどといった情報を扱うための方法もオプショナルではありますが定義されています。このような情報はメタデータと呼ばれ通常外部のサーバーに保存されることが多いです。このメタデータの定義の方法や保存先からデータを持ってくる方法もこの規格で定義されています。

3-2. ERC1155

ERC1155は、別名マルチトークンスタンダードと呼ばれ、複数種類のトークンをまとめて扱うことにフォーカスした規格です。すでに紹介したERC721や、代替可能トークンのスタンダードであるERC20などさまざまなトークンを発行するための規格はすでに存在していますが、複数種類のトークンを転送する際などにはガス代が高くなる傾向にあります。

そこでこの規格では、非代替トークンも代替トークンもまとめて扱えるようするための処理が定義されています。また、複数のアドレス宛にまとめてトークンを送ることもできるため、その意味でもガス代節約と利便性向上の意味で注目されています。

例えば、ブロックチェーンを利用したゲーム内でキャラクターやキャラクターが保有するアイテムなどがNFTとして扱われている場合を考えてみましょう。仮に、アイテムと一緒にキャラクターを転送したい場合、それらを別々に送っているとトークンの数だけガス代がかかってしまい高額になってしまいます。しかし、この規格を利用するとまとめてトークンを転送できるのでガス代を節約することが可能になります。このことはより柔軟で創造的なNFTのユースケースを考える上で大きな意味を持ちます。

4. まとめ

イーサリアムをはじめとするブロックチェーン界隈では利便性を高めるために積極的に標準化が進んでいます。このような背景もあり、多くの場合トークンを発行する際には何らかの標準に則って発行されることがほとんどです。OpenSeaやRaribleといったNFTを扱うプラットフォームでもNFTに関する標準であるERC721やERC1155が随所に利用されています。

どちらの規格が優れているかという点はトークンの利用方法によって変わってきます。より一般的に利用されている規格はERC721なので、多くのウォレットやプラットフォームでより目にするのはERC721の方でしょう。一般的にはこちらの方がより普及しています。

ただし、ERC721やERC1155を利用すれば必ずしもNFTというわけではない点には注意が必要です。NFTかそうでないかは利用している規格ではなく、トークンが具体的にどのように利用されているのかで判断されるため、利用する際はこの点をよく確認することをお勧めします。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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