米国株の配当にかかる税金は?配当課税の節税方法や確定申告の手順も

高成長を続ける米国市場の株価は30年前と比べて12倍に上昇しています。米国企業は、日本よりも株主還元の意識が高く、できるだけ配当を増やそうとしていることから高配当株が多いのも特徴です。

しかし、米国株の配当金はアメリカと日本の双方で課税対象となるため、確定申告の際に外国税額控除の申請をする必要があるなど、その仕組や手順をしっかりと把握しておくことが大切です。

この記事では、米国株取引で発生する税金の種類や配当にかかる税金を抑える方法、確定申告のやり方について詳しく解説するので、ご参考ください。

※この記事は2021年5月27日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 米国株取引で発生する税金
    1-1.譲渡益課税
    1-2.配当課税
  2. 配当金の二重課税を回避する「外国税額控除」とは
    2-1.外国税額控除の注意点
  3. 配当金と譲渡損失の損益通算
  4. 譲渡損失の繰越控除
  5. 米国株取引の確定申告に必要な書類と手順
    5-1.米国株取引で確定申告が必要なケース
    5-2.必要書類
    5-3.申告手順
  6. まとめ

1 米国株取引で発生する税金

米国株取引で発生する税金は、おもに「譲渡益課税」「配当課税」の2つがあります。譲渡益課税とは、株式や不動産などを売却した際に得た利益(譲渡益)に対する税金のことで、キャピタル課税と呼ばれる場合もあります。

一方、配当課税とは、保有中の上場株式や投資信託から受け取る配当金に課せられる税金です。

この2つの税金は日本株取引でも発生しますが、異なる特徴もあります。以下、詳しく見ていきましょう。

1-1 譲渡益課税

米国株取引で得た譲渡益に対しては日本のみで課税され、米国では課税されません。譲渡益課税額は、売買に得た利益に20.315%(所得税15.315%、住民税5%の合計)の税率をかけて算出されます。

ただし、米国株の売却で得た利益は円に換算する必要があるため、課税額を計算するときは、以下の通り、購入した時点あるいは売却した時点の為替レートで計算しなければなりません。

利益額=(売却時の為替レートで円換算した売却金額)-(購入時の為替レートで円換算した購入金額)

また、各金融機関では円とドルを交換する際に手数料を為替レートに上乗せするため、「円からドルへ交換する為替レート」と「ドルから円へ交換する為替レート」は異なります。

1-2 配当課税

譲渡益課税や国内株の配当と異なり、米国株で受け取った配当は日本だけでなく米国でも課税されます。配当に対する日本と米国の課税計算の対象と税率は、下表の通りです。

項目 米国 日本
課税計算の対象 受け取った配当金 配当金から米国で徴収された課税額を差し引いた金額
税率 10%(※) 20.315%

(※)税率は、日米租税条約に基づいており、2021年5月27日時点のものです。

最初に受け取った配当から税率10%をかけた金額を米国が徴収します。次に米国が徴収した課税額を差し引いた残りの金額に、税率20.315%(所得税15.315%、住民税5%の合計)をかけた金額が日本から課税されます。

米国と日本の両国から徴収される配当課税の合計金額は、配当課税額=配当金×0.1+配当×0.9×0.2315=配当金×0.282835となり、約28.3%課税されることになります。

しかし、このような外国株取引を行う際の2重課税を調整するため、一定額を限度として外国で課税された所得税を国内の所得税分から控除する「外国税額控除」という制度があります。

2 配当金の二重課税を回避する「外国税額控除」とは

外国税額控除は、外国から課税された税金を日本で支払った所得税や住民税から控除できる制度を言い、確定申告を行うことで利用可能です。この制度は、日本と外国で二重に課税されることを防ぐ目的で導入されています。

2-1 外国税額控除の注意点

外国税額控除では自分が払い込んだ所得税から還付される仕組みとなっているため、納付した所得税額が少ない場合、全額が戻ってこないケースもあります。その場合、3年間の繰越控除制度を利用すると、控除しきれなかった分について翌年以降に持ち越すことができます。

また、NISA口座の場合、譲渡益は非課税ですが、配当課税は日本で課税される分のみが非課税となるため、米国から課税される10%は源泉徴収されます。

3 配当金と譲渡損失の損益通算

損益通算は株取引などで発生した譲渡損失を他の所得と相殺できる制度で、確定申告を行うことで利用できます。例えば、米国株取引で損失を出し、日本株取引では利益があった場合、日本株の利益から米国株の損失を差し引くことで課税所得を減らすことができます。

損益通算が可能な所得は、不動産所得や譲渡所得などの一部に限定されており、給与所得や利子所得、配当所得は本来その対象ではありません。しかし、申告分離課税を選択すると、米国株取引などから得た譲渡所得と配当金の損益通算が可能です。

4 譲渡損失の繰越控除

配当金との損益通算で譲渡損失を相殺しきれなかった場合、繰越控除を行うことで繰越額を上限に控除可能です。

譲渡損失の繰越控除とは、上場株式などの金融商品を取引して損失が出た場合、翌年以降3年間繰り越せる制度です。この制度を利用することで、翌年以降に株式取引などで利益を得た場合、その所得から繰越額を控除できます。

なお、この制度を利用する場合、損失が発生した年と繰越控除を受ける年に確定申告を行う必要があります。

このほか、譲渡益にかかる税金を少なくしたい場合、NISA口座を使う方法があります。NISAとは毎年一定額で購入した株式等から発生した利益が非課税になる制度で、NISA口座で行った米国株取引についても、NISA口座の限度額の年間120万円までであれば日本株取引と同様に課税されません。

5 米国株取引の確定申告に必要な書類と手順

株式の売買によって得た利益がある場合は米国株取引でも確定申告が必要です。また、配当課税の税負担を軽減するために外国税額控除などの制度を利用する場合も確定申告を行わなければなりません。

5-1 米国株取引で確定申告が必要なケース

証券口座の種類は大きく分けて4つあり、どの口座で取引しているかによって確定申告の必要性が変わります。米国株取引により利益を得た場合は以下の通りです。

項目 確定申告 年間取引報告書
特定口座(源泉徴収あり) 原則、不要 発行される
特定口座(源泉徴収なし) 必要 発行される
一般口座 必要 発行されない
NISA口座 不要 発行されない

特定口座は、1月1日〜12月31日までに取引に生じた譲渡損益などを証券会社が計算し、計算結果をまとめた年間取引報告書を交付してくれます。この年間取引報告書があると、確定申告書の作成も簡単になります。

それに対して、一般口座では年間取引報告書が交付されません。確定申告を行う際に、1年間の取引結果を自身で記録して集計しなければならず、手間がかかります。そのため、これから投資を始める場合は、確定申告の必要がない特定口座(源泉徴収あり)を選ぶほうが負担なく、計算で間違えることもないので無難です。

源泉徴収ありの特定口座は、譲渡損益の計算や税金の計算、税金の納付を証券会社が代行してくれるため、確定申告は原則不要です。

ただし、米国株で配当金を受け取っている場合は、外国税額控除を利用できるので確定申告を行うほうがいい場合もあります。また、複数の口座で取引を行っていて、いずれかの口座で損失が出た場合も、申告分離課税を選択すると損益通算ができます。

5-2 必要書類

米国株取引の確定申告では、外国税額控除を申請する・しないで必要な書類が異なります。外国税額控除を申請しない場合、確定申告に必要となる書類は日本株取引の場合と同様、おもに下記3点となります。

  • 確定申告書
  • 給与所得や公的年金などの源泉徴収票
  • 年間取引報告書(特定口座)

確定申告書は税務署で用紙をもらってくるか、もしくは国税庁からダウンロードすることができます。また、一般口座の場合、年間取引報告書は交付されないため、国税庁HPからフォーマットをダウンロードし、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を自身で集計した取引結果をもとに作成する必要があります。

一方、外国税額控除を受けるため確定申告をする場合、以下の書類が必要となります。

  • 確定申告書
  • 外国税額控除に関する明細書
  • 外国所得税を課されたことを証明する書類
  • 外国で得た所得総額が計算された明細書
  • 各年の控除限度額や納付した外国所得税の記載した書類

「外国税額控除に関する明細書」は、国税庁HPからダウンロード可能です。また、「外国所得税を課されたことを証明する書類」と「外国で得た所得総額が計算された明細書」は、特定口座を利用している場合、「年間取引報告書」が利用できます。

5-3 申告手順

確定申告書などは国税庁HPもしくは税務署でもらえます。一方、e-Taxを使って手続きをする場合、電子システムで入力するので確定申告書などは不要です。

注意点としては、複数の口座を持っている場合や一般口座で取引をしている場合、確定申告書に記載する金額を自身で計算する必要があります。記入方法が不明の場合は、確定申告の時期に全国各地で相談会場が設置されているので、活用することができます。

そして、確定申告書の作成が完了したら、近くの税務署に提出するかもしくは郵送で提出します。e-Taxを利用している場合はオンライン申請となるので、税務署へ提出する必要はありません。

提出期間は、例年2月16日~3月15日ですが、土日祝日の関係で多少ズレるケースもあります。なお、2021年はコロナによる影響で、通常よりも1ヶ月延長されて提出期限が4月15日となりました。

確定申告書を作成した結果、税金を支払う必要がある場合、所定の方法で定められた期限までに納付します。なお、通常納付期限は確定申告書の提出期限と同じです。

まとめ

米国株取引で得た配当金に対しては、日本と米国の双方で徴収されるため、確定申告の際に外国税額控除の適用を受けることができます。外国税額控除を利用すれば、米国で支払った税金分を所得税より還付してもらえます。

また、NISA口座で米国株取引を行う場合、譲渡益は非課税ですが、配当金については米国から課税される分は非課税にならないため、注意しましょう。

口座開設では源泉徴収ありの特定口座を選択すると、確定申告を行う必要がないので手軽ですが、米国株取引で譲渡損失が発生し、損失を翌年度以降に繰越を行いたい場合や、他の金融商品取引などで利益もしくは損失があって、損益通算を行いたい場合は、確定申告を行うほうが良いケースもあります。

米国株取引を行う際は、このように税金の種類や税負担を抑える方法をしっかり把握して、必要な場合は確定申告を行うことが大切です。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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