イーサリアムだけじゃない!今、NFTに利用される4つのブロックチェーンとは
今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の赤澤直樹 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
NFT発行のプラットフォームとして最も代表的なものはイーサリアムですが、最近ではPolygon(Matic)やNear、Polkadotなど色々なブロックチェーンプラットフォームが利用され始めています。OpenSeaでもPolygonが使えるので、これらの特性など理解しておくと使い分けをすることができます。
目次
- NFTはどこで発行されているのか?
- どんなブロックチェーンが利用されている?
2−1. FLOW Blockchain
2−2. Polygon(Matic)
2−3. Near Protocol
2−4. Polkadot - どんな基準で選ばれるのか?
- まとめ
NFTはブロックチェーンを利用して発行され、よくニュースとなるNFTは多くの場合イーサリアムと呼ばれるブロックチェーンを利用されていることが特に多いです。しかし、世界には実に多くのブロックチェーンが存在し、それらが利用されている例も次第に生まれ始めています。この記事では、イーサリアム以外のブロックチェーンでのNFTの発行について解説します。
NFTはどこで発行されているのか?
NFTが発行されるのはブロックチェーン上であるということは次第に認知が広がってきています。例えば、当時75億円で落札されたBeepleの作品はイーサリアムというブロックチェーン上で発行されています。その他の多くの話題になっているNFTもイーサリアム上で発行されています。
しかし、NFTを発行するためのブロックチェーンはイーサリアムだけではありません。実は多くのブロックチェーンが世界中にあり、それぞれのブロックチェーンはユニークな特徴を持っており、今もしのぎを削っている状況です。どれを選ぶかは発行する側がさまざまな観点から検討してどれを利用するかを決めているのです。
どんなブロックチェーンが利用されている?
イーサリアム以外にどんなブロックチェーンが利用されているのでしょうか?具体的によく使われているブロックチェーンを例に挙げながら解説していきます。マーケットプレイスでもたまに見かけるものもあるかもしれません。
①FLOW Blockchain
FLOW Blockchainは、Dapper LabsというNBA TopShotで一躍注目を集めた企業が開発しているブロックチェーンです。NBA TopShotもこのブロックチェーンで発行されています。Dapper Labsは2017年ごろにCryptoKittiesというNFTを利用したゲームを開発しており、以来ずっとNFTをはじめとするムーブメントを牽引しています。
FLOW Blockchainはゲームやアプリで利用されるデジタル資産を扱うことにフォーカスしており、高速処理が可能になっています。また、Proof of Stakeという方式でブロックを生成しており、これはビットコインやイーサリアムが現在採用しているProof of Workと比べ環境負荷が少ないとされています。
②Polygon(Matic)
Polygonはイーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するためのソリューションを提供しています。いわゆるセカンドレイヤーと呼ばれる技術の一種です。Polygonは複数のソリューションを提供しており、その中でもMaticはOpenSeaをはじめとするさまざまなアプリケーションが対応しているなど幅広く利用されています。イーサリアムで利用されているスマートコントラクト記述言語であるSolidityをそのまま利用できるため、開発者やアプリケーションが利用しやすいという特徴があります。また、Proof of Stakeという方式を採用しており、高速処理や安価なガス代などを実現しNFTを扱いやすくしています。
③Near Protocol
Near Protocolは高速処理や低いガス代などを特徴とするブロックチェーンでシャーディングと呼ばれる独自の技術を採用しています。当初はNear Protocol独自の方法でスマートコントラクトを記述しNFTを発行する必要があったのですが、「Aurora」と呼ばれるイーサリアムと同じようにスマートコントラクトを記述・展開できるシステムがローンチされたことでイーサリアムを利用していた開発者なども移行しやすい環境が整ってきています。MintBaseというNFTのマーケットプレイスがNear Protocol上で展開されており、積極的にプラットフォームの誘致を進めています。
また、Near ProtocolはClimate Neutral Product Labelという認証を取得しており、環境負荷の少ないブロックチェーンとしてのPRも進めています。
④Polkadot
Polkadotはブロックチェーン同士を繋げることを目的としているプロジェクトです。2021年4月にはEnjinが、Polkadotを使ったNFT専用のブロックチェーンを開発することを発表しています。Polkadotはブロックチェーンを繋いで相互運用を目指すものであり、特定のブロックチェーンに縛られない自由なNFTの流通が可能になるかもしれないと期待が寄せられています。
どんな基準で選ばれるのか?
世界にはイーサリアム以外にもさまざまなブロックチェーンがNFT発行における選択肢として存在しており、そのどれを選ぶかは発行する側が扱うデジタルアセットやターゲットによって決めていくことになります。
選ぶ際の基準としてよく見かけるのは具体的には以下のポイントです。
- スマートコントラクトの互換性
- ガス代
- 環境負荷
スマートコントラクトの互換性とは、イーサリアム上で記述するNFTを発行するためのスマートコントラクトがどのくらい同じように利用できるかという点です。例えば、これが全く異なるルールで記載する必要がある場合、学習コストやセキュリティリスクが正確に測れないなどの課題が生まれることがあります。
ガス代(ネットワーク手数料)に関しても発行や購入の際に多額のコストがかかると利用することが難しくなります。ガス代が安いブロックチェーンを選ぶことでユーザーが資産を動かしやすくしようとする取り組みもしばしば見かけます。
また、環境負荷はいわゆるマイニングというプロセスが計算資源を大量に必要とすることによって電力消費が増え、結果として地球温暖化を進めてしまうという問題意識からくる観点です。この観点から環境負荷が少ないと言われているProof of Stakeを採用する例も少なくありません。なお、この点についてはイーサリアムは現在大型のアップデートが進行中で、あと2〜3年くらいで環境負荷の少ないとされているProof of Stakeに移行する予定です。このような今後の動向も視野に入れて選択肢を検討する必要があります。
まとめ
世界には多くのブロックチェーンが稼働しており、NFTはそれらを利用して発行されます。どれを選ぶかは発行者がさまざまな基準から総合的に検討した上で決定されます。上記で紹介したポイント以外にも、イーサリアム以外のブロックチェーンを利用した場合に対応しているマーケットプレイスがあるかどうかなども重要な観点になることもあるでしょう。
将来的には異なるブロックチェーン同士をまたがってNFTの移動が行われたりすることも考えられ、動向には要注目です。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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