【重要ニュースまとめ(7/3~7/9)】各国DeFi団体による連合組織がFATFへ提言、Coinbaseも新戦略でDeFiへの注力を表明
今回は、7/3~7/9の暗号資産・ブロックチェーン業界重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。
目次
- 初心者向け主要ニュース【難易度:★☆☆】
1-1. 日本政府がビットコインを外貨としない意向
1-2. 国税庁が暗号資産レンディングの税務上の取り扱いを説明
1-3. シンガポール、ケイマン諸島、タイから新たにBinanceへ警告 - 暗号資産・ブロックチェーン重要ニュース【難易度:★★☆】
2-1. Coinbaseが新戦略を発表
2-2. 各国DeFi団体連合がFATFへDeFi規制の提言 - 暗号資産・ブロックチェーン重要ニュース【難易度:★★★】
3-1. イーサリアム「London」ハードフォーク8月4日に実施提案
3-2. 米ワイオミング州で初のDAO法人が誕生 - まとめ、著者の考察
初心者向け主要ニュース【難易度:★☆☆】
日本政府がビットコインを外貨としない意向
日本政府がビットコインを外貨とは認めない意向を示しました。エルサルバドルでビットコインが法定通貨として認可された一件を受けての対応です。
衆議院議員からの「ビットコインは暗号資産の定義から外れるか(つまり外国通貨と定義されるのか)」といった主旨の質問に対して、日本政府は次のように回答しています。
「ビットコインは公開されているエルサルバドル共和国のビットコイン法において、その支払いを受け入れる義務が免除される場合が規定されており、当該外国通貨には該当しない。」
エルサルバドルでは、ビットコインが法定通貨となったことで支払いに使用できるようになったものの、特定の条件下では店舗側がビットコイン支払いを拒否できるといいます。米ドルでの支払いは拒否できないことから、ビットコインと米ドルは同等の扱いではないとして、ビットコインを外貨とは認めないとの意向を示しました。
【関連記事】日本政府、ビットコインを外国通貨とは認めない声明を公表
国税庁が暗号資産レンディングの税務上の取り扱いを説明
国税庁が、日本国内における暗号資産の税務上の取り扱いについて説明した公的文書に加筆しました。追加されたのは、暗号資産レンディングに関する項目で、国内でも事業者が出てきている背景を考慮しての対応です。
今回公開された「暗号資産に関する税務上の取扱いについて」は、毎年の年末にアップデートされてきたものであり、暗号資産の税務上の扱いに関して基本的な内容を網羅したものになっています。
半年が経ったタイミングで公開されるのは初めてのことであり、変化の激しい業界であることの表れではないでしょうか。今回は「暗号資産の貸付けにおける利用料」のパートが追加されており、レンディングに関する税務上の取り扱いが明確になりました。
文書では、暗号資産取引所へ暗号資産を貸し出し、一定の利率を利用料として得た場合の課税関係について掲載されています。国税庁の説明では、暗号資産を貸し出して利用料を得る行為が「資産の貸付」に該当するといい、消費税の課税対象になるとしています。
【関連記事】国税庁が暗号資産の税金に関するFAQを更新、レンディングに関する項目を追加
シンガポール、ケイマン諸島、タイから新たにBinanceへ警告
日本やイギリス、カナダからの警告を受けていたBinanceが、シンガポールやケイマン諸島からも同様に警告を受けました。タイにいたっては、刑事告発にまで発展しています。
新たに出されたBinanceへの警告は次の通りです。
- シンガポール:ライセンスを申請中ではあるものの、AML/CFTの措置に不備があったと指摘
- ケイマン諸島:ライセンスを取得せずにサービスを提供していたとして警告
- タイ:ライセンスを取得せずにサービスを提供していたことが法令に違反したとして刑事告発、4月時点で警告が出されていたもののこれを無視していたという
Binanceは、度重なる各国からの警告を受けて、今後は規制に準拠した取り組みを行なっていくと発言しました。CoinbaseやKrakenが規制に則って事業を展開する一方で、Binanceがどこまで規制の枠をすり抜けていくのか要注目です。
【関連記事】Binanceへシンガポールやケイマン諸島の規制当局が警告、タイでは刑事告発も
初心者向け主要ニュース【難易度:★★☆】
Coinbaseが新戦略を発表
ナスダックへの上場後に取引所事業以外への注力を明言していたCoinbaseが、DeFiやDAOなどの分散型システムへの取り組み方針を発表しました。これまでは暗号資産と法定通貨の橋渡しを軸としていたものの、今後は分散性を重視していくとしています。
「Crypto2.0企業」という表現を使った今回の新戦略では、DeFiやDAOといった分散型の取り組みに加えて、次の3つの方針を掲げました。
- 取引所で扱う資産の迅速な審査:すべての合法的な資産を取り扱うために審査プロセスを簡略化する
- グローバル展開:米国以外のマーケットに注力する
- DAppsストアの構築:AppStoreのようにDAppsのプラットフォームを構築する
これらを達成するために、「新規上場時の審査項目を70から12に減らす」「各国の規制当局と議論を続ける」「Coinbase Walletの開発を強化する」といった具体的なアクションを明記しています。
【関連記事】Coinbaseが新たな戦略を発表、DeFiやDAOなど分散型市場への注力示す
各国DeFi団体連合がFATFへDeFi規制の提言
国際分散型金融連盟(Global DeFi Coalition)が、AML/CFTを取り締まる国際組織FATFに対して提言をしたことが明らかとなりました。
Global DeFi Coalitionは、米国ブロックチェーン協会やBlockchain for Europe、INATBAなど計6つの各国業界団体より構成されているDeFi関連の組織です。今回FATFに対して、DeFiの規制を整備する上での提言を行なったとしています。
提言は主に6つの項目から構成されますが、中でも特筆すべきは次の点です。
- DeFiのビジネスモデルを考慮した上での規制を整備すべき
- パブリックブロックチェーンを使った取引のリスクが低減していることを認め、その上で規制を整備すべき
- DeFi業界の各団体と連携した上で規制を整備すべき
【関連記事】各国のDeFi団体が合同でFATFへ提言、規制整備には業界団体との連携が必要と主張
初心者向け主要ニュース【難易度:★★★】
イーサリアム「London」ハードフォーク8月4日に実施提案
イーサリアムの大型アップデート「London(ロンドン)」が、ブロックナンバー12,965,000(8月4日13時以降を予定)にて実行される提案が出されました。
6月24日よりテストネットでの実装がスタートしているLondonハードフォークですが、順調に進めば8月上旬の実装となりそうです。高騰するガス代の問題へ直接アプローチするわけではありませんが、結果的にガス代が安くなるであろうことが期待されている内容を含むため、今回のアップデートには多くの注目が集まっています。
5つのEIPが実装される予定ですが、中でもEIP-1559が注目の的です。EIP-1559が実装されると、BASEFEEと呼ばれるガス代の一部を、マイナーに報酬として渡すのではなくバーン(焼却)することになります。これにより、イーサリアムの供給量が減少することから価格の上昇も期待されています。
【参照記事】https://twitter.com/sassal0x/status/1412425906799484944
米ワイオミング州で初のDAO法人が誕生提案
米ワイオミング州で可決されていたDAO法案のもとに、最初の法人設立が認められました。American CryptoFed DAOという自律分散型組織が、正式にワイオミング州の法人として登記されています。
ワイオミング州では、2月にDAOを法人として認める法案が提出されていました。4月21日にこの法案が可決され、7月21日の施行を目指していましたが、予定よりも早く施行されただけでなく、最初の事例が承認されることになっています。
可決されたDAO法案は、設立時に定義したスマートコントラクトに変更が生じる場合に、定款も合わせて変更する必要がある点などが特徴です。株式会社における「Inc.」や「Ltd.」といった表記と同様に、「DAO」や「LLC」が用いられることになるといいます。
初の事例となった今回のDAOは、「American CryptoFed DAO, LLC」と表記されています。
まとめ、著者の考察
今週は、Coinbaseの新戦略や各国DeFi団体連合によるFATFへの提言など、DeFiに関する取り組みが大きく話題となりました。米ワイオミング州では初のDAO法人が設立されるなど、分散型社会の到来を予感させます。
日本でも暗号資産に関する当局の取り組みが目立つ1週間となりました。ビットコインを外貨とは認めない声明は、各国で話題になっている中で比較的先んじての発表であり、またレンディングに関する税務上の取り扱いを明確にした点も大きな動きだと言えるでしょう。
イーサリアムの大型アップデートが順調に進んでいることからも、市場が今後ますます成熟していくことが期待できそうです。
【関連記事】ビットコインとは?特徴・仕組み・購入方法
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