レバレッジ・インバース型ETFのメリット・デメリットは?主な銘柄も
レバレッジ型ETFやインバース型ETFは、通常の指数連動型ETFと比べて取引効率が高く、短期売買に向いた上場投資信託です。リターンが大きいほか、下落相場でも利益を狙えるので、注目している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、レバレッジ型ETFとインバース型ETFの特徴、メリット・デメリット、主な銘柄を詳しく知りたい方向けに解説するので、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年7月22日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- レバレッジ型ETF、インバース型ETFとは
1-1.レバレッジ型ETF
1-2.インバース型ETF - レバレッジ・インバース型ETFのメリット
2-1.大きなリターンを見込める
2-2.相場の下落局面でも利益を狙える
2-3.現物株のリスクヘッジとして活用できる - レバレッジ・インバース型ETFのデメリット
3-1.損失リスクが高い
3-2.取引コストも高め
3-3.長期保有には向いていない - レバレッジ・インバース型ETFの主な銘柄
4-1.レバレッジ型ETFの主な銘柄
4-2.インバース型ETFの主な銘柄 - レバレッジ・インバース型ETFを購入する方法
- まとめ
1 レバレッジ型ETF、インバース型ETFとは
レバレッジ・インバース型ETFは、2012年に初めて上場を果たした通常のETFと異なる特徴を持つ金融商品です。
ETF(上場投資信託)とは、証券会社を通じて証券取引所で売買できる投資信託であり、金融市場の様々な指数に連動した投資成果を目指して運用されています。
投資信託は投資家から集めたお金を大きな資金としてまとめ、投資のプロが株式や債券などに投資することで運用成果を目指す金融商品です。その中でも日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの指数に連動した運用成果を目指す投資信託がインデックスファンドに分類され、株式同様に市場が開いている間、リアルタイムで取引可能なものがETF(Exchange Traded Funds)となります。
ETFは、対象となる指数を構成している資産に幅広く投資することから分散投資効果を見込めるほか、一般的な投資信託と比べて信託報酬が安く設定されているため、投資初心者でも始めやすい金融商品です。
1-1 レバレッジ型ETF
レバレッジ型ETFとは、通常のETFと同様、日経平均株価やTOPIXなどに連動した投資成果を目指す金融商品です。ブル型ETFと呼ばれることもあります。ただし、運用成果を目指す指標は対象となる指数に一定の倍率をかけて算出されたレバレッジ型指標となっており、通常のETFとは異なる値動きが大きな特徴です。
2021年7月22日時点で、日本では対象となる指数の2倍の値動きをするように設計されたレバレッジ2倍ETFの購入が可能です。しかし、単純に指数の2倍の値動きをするわけではなく、厳密には指数の変動率が前日比変動率の2倍の値動きになるよう設計されています。
レバレッジ型ETFの値動きの例
項目 | 基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 |
---|---|---|---|---|
指数の値動き | 100 | 110(前日比+10%) | 121(前日比+10%) | 133.1(前日比+10%) |
レバレッジ2倍ETFの値動き | 100 | 120(前日比+20%) | 144(前日比+20%) | 172.8(前日比+20%) |
実質的なレバレッジ倍率 | - | 2倍 | 2.095倍 | 2.199倍 |
上表は基準日にレバレッジ型ETFを100で購入した場合の値動きを日数の経過とともに計算した例です。基準日から1日目の指数の上昇幅は+10%となっており、レバレッジ2倍ETFの値動きはちょうど2倍の+20%の上昇となっています。
しかし、2営業日離れた2日目と基準日を比較すると、指数の21%の上昇に対してレバレッジ2倍ETFは44%上昇しており実質的なレバレッジ倍率は2.095倍です。
同様に、3日目と基準日を比較してみると原指標33.1%の上昇に対して72.8%の上昇となり、実質レバレッジは2.199倍となります。これは、前日の変動率と比べて2倍になるように計算されているので、複利計算の効果で2営業日以上保有する場合、単純に2倍とならないためです。
このように、通常のETFとは異なる値動きをする点がレバレッジ型ETFの大きな特徴です。
1-2 インバース型ETF
インバース型ETFは、日経平均株価やTOPIXなどの指数に一定の負の倍率をかけて算出されたインバース型指標に連動した投資成果を目指すETFです。ベア型ETFと呼ばれることもあります。
インバース型ETFは負の倍数をかけた指標に連動する商品のため、レバレッジ型ETFとは反対に指数が値下がりしたときに値上がりする点が大きな特徴です。
2021年7月22日時点では、レバレッジのかかっていない-1倍と、レバレッジのかかった-2倍のインバース型ETFの商品を取引することができます。なお、-2倍のインバース型ETFはダブルインバースETFと呼ばれることもあります。
ダブルインバースETFの値動きの例
項目 | 基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 |
---|---|---|---|---|
指数の値動き | 100 | 90(前日比-10%) | 81(前日比-10%) | 72.9(前日比-10%) |
レバレッジ2倍ETFの値動き | 100 | 120(前日比+20%) | 144(前日比+20%) | 172.8(前日比+20%) |
実質的なレバレッジ倍率 | - | 2倍 | 2.316倍 | 2.686倍 |
上表は、ダブルインバースETFの値動きについて、基準日から値下がり続けた場合で計算した一例です。ダブルインバースETFは-2倍のレバレッジがかかっているものの、2営業日以上保有する場合、複利効果によって実質的なレバレッジは2倍とならない点が大きな特徴です。
このように、インバース型ETFは指数と正反対の値動きをする点が大きな特徴で、レバレッジ型と同様に複利効果によって実質的なレバレッジ倍率が変動する商品となっています。
2 レバレッジ・インバース型ETFのメリット
レバレッジ型ETF、インバース型ETFのメリットは以下の通りです。
2-1 大きなリターンを見込める
レバレッジ型やダブルインバースETFはレバレッジ効果によって大きなリターンを見込めます。通常のETFは指数に等倍で連動するよう設計されているため、日経平均やTOPIXなどの原資産の値動きを超えるアウトパフォームはあまり期待できません。
しかし、指数に一定の倍率をかけたレバレッジ型指標やインバース型指標に連動したETFでは、投資した資金以上に大きな投資成果を得られるレバレッジ効果があるため、通常のETFと比べても大きなリターンを見込むことが可能です。
2-2 相場の下落局面でも利益を狙える
インバース型ETFは相場の下落局面でも利益を狙えます。通常、現物株などの取引では相場の下落局面では売買益を狙うことが難しくなり、配当などに頼って運用益を目指すこととなります。
一方、インバース型ETFは相場の下落局面で取引価格が上昇する仕組みとなっているため、このような相場でも積極的に利益を狙って取引することが可能です。特に、ダブルインバースETFは下落を続ける相場局面で大きな利益を得ることができるため、投資戦略の選択肢が増えるメリットもあります。
2-3 現物株のリスクヘッジとして活用できる
インバース型ETFは日経平均やTOPIXなどの株価指数が下落した場合に上昇します。この仕組みを利用することによって現物株のリスクヘッジとして活用できる点もメリットの一つです。
特に、現物株を中心に投資をしている場合、大幅な指数下落の恐れがある指標発表などのタイミングに合わせて取引することで、現物株のリスクヘッジとして活用することができます。
3 レバレッジ・インバース型ETFのデメリット
レバレッジ型ETF・インバース型ETFは仕組みや特徴が複雑なので、金融庁は、投資経験の少ない個人投資家が中・長期間で投資することに対して、取引の仕組みや内容を十分に理解するよう注意喚起を行っています。
レバレッジ・インバース型ETFの注意点は以下の通りです。
3-1 価格変動リスクが高い
レバレッジのかかるレバレッジ型やダブルインバースETFは、通常のETFと比べて価格変動リスクが高いため、予想以上の損失が発生する可能性もあります。
また、金や原油等の商品先物指数を対象とする ETF の場合、原資産である現物価格に1日の値幅制限がないのに対して、ETF の価格には値幅制限があるため、例えば、相場が急変した場合、 ETF 等の価格が原資産の価格と連動しないリスク等もあります。
3-2 取引コストも高め
レバレッジ・インバース型ETFを運用するファンドは指数や指標に連動させるため先物取引で運用を行います。これにより、運用の難易度やリスクも高くなるため、通常のETFと比べて高めの信託報酬や購入手数料が設定されている商品などもあります。
3-3 長期保有には向いていない
レバレッジ・インバース型ETFは長期保有には向いていない点もデメリットの一つです。その原因は複利効果にあり、上下動を繰り返す相場の場合、指数の値動きと比較してパフォーマンスが次第に悪くなる特性があります。
レバレッジ型ETFの値動き
項目 | 基準日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 |
---|---|---|---|---|
指数の値動き | 100 | 105(前日比+5%) | 94.5(前日比-10%) | 100.17(前日比+6%) |
レバレッジ2倍ETFの値動き | ±0 | 110 | 88 | 98.56 |
実質的なレバレッジ倍率 | - | 2倍 | 2.182倍 | -8.471倍 |
上表は、指数が上下動を繰り返す相場でのレバレッジ型ETFの値動きを表したものです。2日目は値下がりしたものの、3日目には対象となる原指標の指数が100を上回っています。
しかし、レバレッジ2倍ETFは基準値の100を下回った98.56となっているため、損失が発生している状態です。このため、レバレッジ型やインバース型(ダブルインバースを含む)ETFは、上下動を繰り返すような相場での長期保有には向きません。
また、予想と反対の方向に相場が動き続けた場合、複利効果によって2倍以上の損失が発生する可能性がある上、取引コストが高めに設定されていることからも長期保有に向かない商品となります。
4 レバレッジ・インバース型ETFの主な銘柄
ここではレバレッジ型ETFとインバース型ETFの主な銘柄をご紹介します。
4-1 レバレッジ型ETFの主な銘柄
レバレッジ型ETFで時価総額の大きい銘柄は以下の通りです。
コード | 銘柄名 | ETF種別 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
1570 | NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信 | レバレッジ型 | 0.88% |
1579 | 日経平均ブル2倍上場投信 | レバレッジ型 | 0.825% |
1367 | ダイワ上場投信TOPIXレバレッジ(2倍)指数 | レバレッジ型 | 0.825% |
1568 | TOPIXブル2倍上場投信 | レバレッジ型 | 0.825% |
レバレッジ型ETFでは日経平均レバレッジ指数とTOPIXレバレッジ指数をインデックスとした銘柄が多く売買されており、信託報酬は税込0.8~0.9%ほどとなっています。
4-2 インバース型ETFの主な銘柄
インバース型ETFは-1倍と-2倍の銘柄が選べるようになっており、時価総額の大きい銘柄は以下の通りです。
コード | 銘柄名 | ETF種別 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
1457 | ダイワ上場投信TOPIXインバース(-1倍)指数 | インバース型 | 0.825% |
1356 | TOPIXベア2倍上場投信 | ダブルインバース | 0.825% |
1571 | NEXT FUNDS日経平均インバース・インデックス連動型上場投信 | インバース型 | 0.88% |
1357 | NEXT FUNDS日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信 | ダブルインバース | 0.88% |
インバース型ETFでも日経平均とTOPIXのインバース指数をインデックスとした銘柄が多く売買されており、主要な銘柄はレバレッジ型と同様に税込0.8~0.9%ほどの信託報酬となっています。
5 レバレッジ・インバース型ETFを購入する方法
レバレッジ・インバース型ETFは取引所に上場している投資信託のため、証券会社を通じて購入することができます。レバレッジのかかった商品となりますが、購入規制などもないため、どこの証券会社でも株式や通常のETFと同様に売買が可能です。
日本取引所グループのホームページではレバレッジ・インバース型ETFの銘柄一覧を検索することができるので、証券口座でコード検索をかけるとすぐに目的の銘柄を売買することができます。
まとめ
レバレッジ・インバース型ETFは通常のETFとは異なる値動きをする金融商品です。通常のETFよりも大きな利益を得られたり、相場の下落局面でも積極的に利益を狙えたりする反面、損失も多大になるリスクがあります。
ただし、上手に活用することができればリスクヘッジや相場の状況に応じた投資なども可能になるため、これらの商品への投資を考えている方は、リスクや商品特性をしっかりと把握した上で取引の判断を行うことが大切です。
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レバレッジ・インバース型ETFのメリット・デメリットは?主な銘柄も