【重要ニュースまとめ(7/17~7/23)】ステーブルコインUSDCの担保資産の内訳が公開、運営のCircleは上場を間近に控えマスターカードと提携
今回は、7/17~7/23の暗号資産・ブロックチェーン業界重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。
目次
マスターカードが暗号資産決済導入へ本腰
マスターカードが、ステーブルコインUSDCを運営するCircleとの提携を発表しました。マスターカードの顧客に対して、USDCを仲介させた暗号資産決済サービスを新たに提供するとしています。
Circleの発表によると、USDCに対応したウォレットを通してマスターカード加盟店での支払いが可能になるとのこと。もしくは、マスターカードのクレジットカードを使う際に、法定通貨ではなく暗号資産の口座残高を消費することも計画しているといいます。
新型コロナウイルスの影響から、全世界でデジタル資産が急速に普及しましたが、暗号資産を使った決済需要も一定増加してきています。しかし、暗号資産決済を行うには店舗側がそれを受け入れる必要があり、低くないハードルが存在していると言えます。
マスターカードは、マスターカードの受け入れ店舗であればシームレスに暗号資産決済を導入できるようインフラを整備する構えです。過去のリリースでは、ビットコインの価格高騰に伴いマスターカードを使った取引所での購入件数が増加したことも明らかにしています。クレジットカードと暗号資産の相性は良いと言えるでしょう。
マスターカードによる暗号資産決済のサービスは現時点ではテスト段階であるものの、上場を控えるCircleと共に市場を牽引する姿勢を見せています。
マスターカード以外にも、3月末にはVisaが既にCricleとの提携を発表しており、同様にステーブルコインUSDCを使った暗号資産決済の導入を進めています。Visaの場合は、Circleの他に暗号資産カストディ企業Crypto.comも提携に参画しており、将来的にはUSDC以外の通貨にも対応する予定です。
暗号資産決済市場におけるUSDCのシェアは増すばかりであり、現状はほとんど一強状態であるといえます。ステーブルコイン市場単体では、テザー社の発行するUSDTが時価総額で最上位に位置しているものの、担保資産の不透明性などが課題となっており、大手企業と提携するには至っていません。
USDCは、クレジットカード企業との提携以外にも様々な領域で既存金融との橋渡し機能を担っています。4月には米銀行Signature Bankとの提携を発表し、24時間のリアルタイム送金を実現するために活用されたり、安価な手数料を実現することが期待されています。
他にも、DeFiレンディングプラットフォームCompoundとの提携では、機関投資家がDeFi市場へ参入するための仲介役として採用されています。
【参照記事】Circle Engages with Mastercard to Simplify Cryptocurrency-to-Fiat Conversion Using USDC
ステーブルコインUSDCの裏付け資産の内訳が明らかに
ステーブルコインUSDCの発行・管理を担う米Circleが、USDCの担保資産の内訳を公開しました。ニューヨーク証券取引所への上場が間近に迫っているため、事業の透明性を高め信頼を獲得しようとする狙いです。
ステーブルコインには、「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型」の3種類が主に存在します。USDCは法定通貨担保型に分類され、文字通り米ドルを担保に発行されています。
1USDC=1ドルとなるよう発行されているため、1USDCの価格は1ドル付近を安定して推移しており、ビットコインなどの暗号資産と比べて決済手段として使用されるケースが多いのが特徴です。
そんなUSDCですが、これまでに32回にわたって報告書を公開してきました。33回目となる今回は、上場を間近に控えていることもあり詳細な情報が掲載されています。
USDCなどの法定通貨担保型ステーブルコインは米ドルなどを担保に発行されるものの、運営企業はそのまま現金で全てを保有しているとは限りません。担保資産は、一定の準備金として確保しておく分と運用益を出す分とに分別されています。
運用益を出す分では、米国債や社債、コマーシャルペーパーなどに変換され、利回りを得るために投資されています。今回公開されたUSDCの担保資産の内訳は次の通りです。
- 現金および現金同等物:61%
- 国外の銀行が発行するCD(Certificates of Deposit):13%
- 米国債:12% コマーシャルペーパー:9%
- 社債:5%
- 地方債と米エージェンシー債:0.2%
USDCに限らず、多くの法定通貨担保型ステーブルコインが上記のような内訳となっています。担保資産の総額がステーブルコインの発行総額を下回ってしまうと、安定した価格変動を維持することができないため、比較的リスクの少ない資産へ分散投資しているのです。
現状、暗号資産と法定通貨を換金するには、基本的に暗号資産取引所を介す必要があります。しかしながら、厳格な本人確認作業が必要だったり、未成年は取引所口座を開設できなかったりといった状況となっています。
そこで近年はステーブルコインが大きく台頭するようになりました。ステーブルコインは、元々は価格の安定した暗号資産として開発され、主に決済手段として普及が期待されていましたが、昨今は暗号資産と法定通貨の橋渡しとしての役割を担っています。
法定通貨担保型のステーブルコインであれば、取引所を介さずに直接米ドルで購入することが可能です。中でもUSDCはDeFi市場でも大きくシェアを伸ばしており、DeFiへのアクセス時に取引所を介す必要がありません。
こういった構造に気づいた人が米国を中心に急増し、USDCを運営するCircleは評価額4,500億円で上場を予定するまでに成長しました。
【関連記事】ステーブルコインUSDCの裏付け資産の内訳が明らかに、Circleが上場を間近に控え公開
金融庁が分散型金融に関する研究会を設立
日本の金融庁が分散型金融に関する研究会を設置したことを発表しました。発表文から読み解くと「分散型金融」がいわゆるDeFiを意味しているわけではなさそうですが、デジタル化が進む金融市場を整備するために積極的な姿勢を見せています。
「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」と称された組織では、学者や金融実務家を中心にメンバーが構成され、複数回にわたってオンライン研究会が実施されるといいます。
研究対象となるのは、「送金」「暗号資産」「証券」「コンテンツ・著作物」です。明確な金融領域である「送金」「暗号資産」「証券」に加えて、「コンテンツ・著作物」が含まれている点が注目を集めました。おそらく規制の進まないNFTを想定した動きであると見られ、課題や将来性を議論することが予想されます。
発表文の中で直接言及されたのは、デジタルマネーやステーブルコイン、暗号資産、ブロックチェーンといったワードです。研究対象となった4つの領域のうち、ほとんど全てでマネーロンダリング・テロ資金供与が課題としてあげられています。
メンバーの名簿を見る限り、ここでいう「分散型金融」がDeFiを指しているわけではなさそうですが、仮にDeFiを意図していた場合、実際のDeFi現場で理解している人が皆無であることが指摘されています。NFTについても同様に、民間プレイヤーがほとんど名を連ねていません。
今週の当局の動きとしては、財務省がデジタル通貨に関する取り組みを強化するために、人員増の予算を追加請求する方針であることが報じられています。通貨を管理する理財局国庫課でリソースを増やすとされており、CBDCやステーブルコインといったデジタル資産の取り扱いを整備する構えです。
金融庁や財務省など、日本の規制当局は同じ対象物でもそれぞれが独立して取り組む傾向にあります。管轄が違うため当然のことではありますが、お互いが連携することで効率よく、またより適切な動きが取れる可能性もあるため、横串での連携を強化すべきだと言えるのではないでしょうか。
合わせて、現場を理解した民間プレイヤーを正しく招聘することで、世界に遅れをとっている次世代産業を整備することにも繋がりそうです。
【関連記事】「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の設置について
まとめ、著者の考察
今週はマスターカードとCircleの提携や、そのCircleが運営するステーブルコインUSDCの担保資産の内訳公開、日本の金融庁と財務省の動きについて紹介しました。
上場を控えていることもありCircleの動きが活発になってきましたが、今後もステーブルコインの需要は高まり続けることが予想されます。現時点ではUSDTが時価総額最大のステーブルコインとなっていますが、USDCが上回るのも時間の問題でしょう。
ステーブルコインの台頭が著しくなってくるにつれて、日本でも当局の対応が差し迫ってくることは間違いありません。今週も研究会の設置が発表されましたが、やはり具体を把握している人物を招聘しないことには机上の空論で終わってしまう恐れがありそうです。
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