不動産投資ローン、抵当権と根抵当権の違いは?抹消手続きの方法も
不動産投資で金融機関とローンの契約を行う際、「根抵当権」を設定するケースがあります。根抵当権と通常の抵当権とはどのような違いがあるのでしょうか?
抵当権は特定の不動産を担保として設定しますが、根抵当権は不特定の債権を対象としており、定められた「極度額」の範囲内でローンを借り入れ・返済します。投資用物件に根抵当権が設定されている事例がありますので、抹消手続きの方法を知っておくことも重要です。
今回の記事では、抵当権と根抵当権とは何か、4つの違い、根抵当権抹消の手順をお伝えしていきます。
目次
- 抵当権・根抵当権とは
1-1.抵当権と根抵当権
1-2.根抵当権の「極度額」 - 抵当権・根抵当権、4つの違い
2-1.対象となる債権
2-2.権利の抹消
2-3.連帯債務者
2-4.元本の確定 - 根抵当権の抹消手続きの方法
3-1.ローン残債と売却価格の相場を比較
3-2.金融機関と相談
3-3.根抵当権の抹消手続き - まとめ
1.抵当権・根抵当権とは
まずは抵当権・根抵当権とは何か、根抵当権の「極度額」についてお伝えしていきます。
1-1.抵当権と根抵当権
投資用ローンにおける抵当権とは投資用不動産を担保に設定し、返済が滞った場合に不動産を差し押さえ競売にかけられる権利を指します。
金融機関は抵当権を設定し、競売による売却又は担保物件を貸し出し、賃料といった収益を弁済に充てることにより、返済されない債務を回収できる可能性があります。ローンを完済した時には、法務局で抵当権抹消登記の手続きを行い、不動産から抵当権を外すことが出来ます。
一方、根抵当権は「継続的な取引」を前提としたもので、不動産の価値を基に算定された貸し出し金額の上限を「極度額」として設定、極度額の範囲内で担保する抵当権です。
抵当権は特定の不動産を対象としているのに対し、根抵当権は不特定の債権を対象としています。継続的に融資・返済を繰り返す場合、根抵当権を設定することで、抵当権の設定・抹消手続きを行う費用と手間を省くことができます。
1-2.根抵当権の「極度額」
根抵当権にはあらかじめ融資する人とされる人の間で取り決めた「極度額」が設定されます。
金融機関によっては「借入金額は極度額の○%以内まで」と設定するところもありますので、「極度額=貸出限度額」ではないということをおさえておきましょう。なお利害関係者の合意があれば、極度額は変更する事ができます。
2.抵当権・根抵当権、4つの違い
抵当権・根抵当権には主に以下の4つの違いがあります。
- 対象となる債権
- 権利の抹消
- 連帯債務者
- 元本の確定
2-1.対象となる債権
抵当権の担保となる債権(借入金)は主に購入予定の不動産ですが、根抵当権の担保となる債権は特に定められていません。そのため何度でも融資を受ける事ができます。
根抵当権を設定する際には、債権者と債務者があらかじめ契約日や金額、返済、利率などと共に極度額と債権の範囲を話し合い、決めた内容を契約書として書面化、契約を締結します。
2-2.権利の抹消
抵当権は担保となっている不動産のローンを完済することで、事実上消滅します。登記簿上で抵当権は設定されていますが、金融機関から必要書類を受け取り、法務局で抹消の手続きを行い権利が抹消できます。
一方で根抵当権は、1件の借り入れと返済が終わった後でも再びやり取りが行われる可能性があるため、当事者間で合意が無いと抹消手続きを行う事ができません。
2-3.連帯債務者
抵当権には1つの借り入れに対して連帯して債務を負う「連帯債務者」の設定が可能ですが、根抵当権ではほとんどのケースで連帯債務は認められていません。
抵当権は特定の不動産に対して設定されますが、根抵当権は返済金額や期間、対象が定められてないため連帯債務が出来ない形となっています。
2-4.元本の確定
不動産をローンで購入する際、抵当権を付ける場合には返済金額や期間が既に確定しています。根抵当権は、設定した時には元本が確定されておらず、定める場合もあれば定めない場合もあります。
設定時から3年経過すると元本の確定を請求できるようになり、請求から2週間後には元本を確定することになります。
3.根抵当権の抹消手続きの方法
基本的に抵当権が付いた不動産は売却ができないため、抹消手続きが必要となります。手順は以下の通りになっています。
- ローン残債と売却価格の相場を比較
- 金融機関と相談
- 根抵当権の抹消手続き
3-1.ローン残債と売却価格の相場を比較
不動産を売却する時にローンが残っている場合は、ローン残債と売却価格の相場を比較しましょう。ローン残債は金融機関に尋ねる、売却価格の相場は不動産会社に査定を依頼する事で分かります。
不動産会社の査定で提示された査定額とローン残債を比べ、ローン残債が上回る時はオーバーローンとなります。
根抵当権は特定の不動産を担保としたものではありませんが、オーバーローン状態の家は金融機関が根抵当権を外すことに同意しない可能性が高いと言えます。オーバーローンの不動産は、金融機関に売却の可否・価格の了承を得て、権利を外す「任意売却」を検討してみましょう。
【関連記事】不動産の任意売却とは?メリット・デメリットや売却手順を解説
なお、通常の抵当権は残債が無くなることで抹消されますが、根抵当権は借入金をすべて返済しても消滅することはありません。以下の手続きが必要になるため、注意しましょう。
3-2.金融機関と相談
根抵当権を外す際は、当事者の合意が必要となりますので、金融機関と相談を行います。合意が得られた際は話し合い、元本を確定します。金融機関と未返済額や金利、返済期限などについて話し合い、返済額を明確にする「元本確定」を行います。
3-3.根抵当権の抹消手続き
管轄の法務局で根抵当権の抹消手続きを行います。必要となる書類は以下の通りです。
- 根抵当権抹消登記申請書
- 登記原因証明情報
- 抵当権設定契約書(登記済証)
- 代理権限証明情報
- 会社法人等番号の分かる書類または資格証明情報
- 委任状(代理人に依頼する場合)
「根抵当権抹消登記申請書」は法務局のホームページで印刷する事が可能です。2~5の書類は、金融機関から送付されてきます。いずれも日付や基本情報に誤りが無いか、確認しておきましょう。
登記手続きは法務局の窓口で直接書類を持参する方法のほかに、オンライン・郵送でも申請が可能です。
自身で手続きを行う事が困難である方は、費用はかかりますが司法書士への依頼も検討しましょう。代行を依頼する際には、押印済みの委任状が必要となります。
まとめ
抵当権と根抵当権は対象となる債権や抹消の方法が異なります。一番の違いは根抵当権が「債権を特定しない」ことで、抹消には金融機関の合意が必要となり通常の抵当権抹消より手間がかかります。
根抵当権が設定されている場合、返済が完了しても消失しない特徴があります。売却時にトラブルとなるケースもあるため、事前に抹消手続きの手順・方法について確認しておきましょう。
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