2021年10月上旬の為替動向、10月末に向けての見通しは?ファンドマネージャーが解説
2021年10月上旬は、米金利の上昇や、中国不動産会社の問題が注目される場面が多くありました。この記事では、2021年10月上旬の振り返りと、10月末へ向けての見通しを解説します。
目次
- 2021年10月上旬の振り返り
- 各国の動向は?
2-1.米国
2-2.中国
2-3.欧州
2-4.イギリス
2-5.オーストラリア
2-6.ニュージーランド
2-7.カナダ
2-8.その他 - 各国の動向は?
3-1.10月下旬に向けての注目材料
3-2.米CPI・インフレ動向
3-3.中国不動産会社関連問題
1.2021年10月上旬の振り返り
全体的に米金利の上昇が目立ちました。株は若干下落、為替ではUSD買いが優勢となりました。タカ派だったFOMCだけでなく、エネルギー価格上昇が世界的な物価高を誘発し、多くの国がインフレに対する警戒を強める中、FRBに対しても早期利上げ観測が強まったことで米金利が上昇しました。
一方で、米金利の上昇は株の上値を抑え、中国の不動産会社の信用不安なども重なり、一時的にリスクオフの雰囲気も強まることもありましたが、米金利の低下は限定的となり、為替市場ではUSD買いが強まりました。
USD/JPYは、109円前半から110円前半のレンジ上限を突破し、112円台まで上昇しました。米利上げによるUSD買い、リスクオフによるUSD買い、リスクオンによるクロス円の買い(円売り)と、どのような材料が来ても買われる展開となりました。
その他EUR(ユーロ)やGBP(イギリスポンド)は上値の重い展開となりましたが、AUD(オーストラリアドル)やCAD(カナダドル)など資源国通貨は、資源価格上昇による買い圧力も強く、USD買いの展開の中にあって、あまり売られませんでした。
各国の動向は?
2-1.米国
米債務上限問題や新年度予算案において民主党と共和党の調整が難航していましたが、予算案に関しては新年度開始の前日9/30に12月上旬までの超短期間暫定予算を可決し、政府機関閉鎖は免れました。
それでもまだ債務上限問題が残っており、デフォルトリスクは抱えたままでした。しかし、共和党から11月末までやり繰りするため、十分な額だけ債務上限を超短期間引き上げる案が提示され、ギリギリのところでデフォルトも回避できそうです。
ただ、これらの問題は単純に決定が先延ばしされただけで根本的な解決には至っておらず、共和党は、後は民主党単独で財政調整措置で解決するようにとの声明を発表して、協力姿勢を示していないことから、11月末にまた波乱がありそうです。
注目されたFOMCですが、予想以上にタカ派だった印象です。DOTS(ドットチャート)に関しては、2022年は18名中9名が利上げで平均1回以上の利上げに上方修正、2023年と2024年も半数が合計4回以上の利上げと、事前予想よりもタカ派寄りです。更に、パウエル議長がハト派発言で抑え込むのかと予想されていましたが、雇用も含めてテーパリング開始基準は満たされているとタカ的な発言が飛び出しました。
また、テーパリング終了時期も2022年半ばと予想しているとのことで、市場予想である毎月国債100億ドル・MBS50億ドルのペースでテーパリングを実施するなら、逆算して11月には開始しなければなりません。既に雇用についてのハードルを下げているなかで、想定通りに進展した場合は11月テーパリング開始が正当化されると表明しているということは、余程雇用統計が崩れない限りは、11月の可能性が濃厚になってきました。
実際10月7日に発表された雇用統計は予想を大幅に下回りましたが、金利の低下は瞬間的で、すぐに上昇するなど、テーパリングや利上げ織り込みに全く影響を及ぼしていません。
ワクチン
米製薬会社メルクが実施した臨床試験で、コロナ経口治療薬が重症化もしくは死亡するリスクを50%減らせることが中間分析で分かりました。万が一開発に成功するなら、昨年のワクチン開発成功時と同様のリスクオン相場が始まるかもしれません。
2-2.中国
米国が、中国の産業補助金について調査を開始することを検討しています。産業補助金は中国の社会主義国家たる所以でもあり、受け入れるわけにはいかないと考えられます。一方で、米中貿易交渉の再開について両国が合意したとの報道が出てきています。第1フェーズ合意の履行の確認という内容が発表されていますが、今後の展開に要注意です。
また、深刻な電力不足問題が急浮上しました。当局が掲げるエネルギー目標が厳しく、既存の石炭発電が使えないことが原因です。しかし、深刻な経済活動の停滞に繋がってきたことから、中国指導部は、鉱業各社に石炭フル生産命令による電力不足解消を指示しました。これを受けてエネルギー価格が上昇しています。
2-3.欧州
欧州の物価上昇が止まりません。原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇が直接の原因ですが、それ以外にも供給サイドの混乱が長引いていることも要因の一つです。ラガルド総裁も需要と供給の不均衡について懸念を示していましたが、一応供給サイドの問題は一時的であり過剰に反応するべきではないという立場を維持しています。
しかし、米国もそうですが「一時的」がどの程度になるかについて、誰も具体的に示せないでいます。ECB議事録でもインフレ圧力に関する様々な議論があった様子が伺い知れますし、今後のECBの政策の転換に注意する必要があります。
2-4.イギリス
BOE政策決定会合は予想以上にタカ派となりました。政策金利は9-0で据え置きでしたが、QEについては7-2で決定ということで、ラムスデン副総裁が反対に加わりました。景気の回復というよりは、供給サイドや物資不足によるインフレ見通しの引き上げが目立っています。
直近の天然ガスの高騰もあり、2022年半ばまで4%を超えるリスクの可能性を示しました。不透明要因としては、労働者が恩恵を受けている賃金サポートの失効後の状態を挙げていますが、この先、部品不足により製造業が稼働できず雇用が崩れて景気回復が停滞するようなことがあると、スタグフレーションのリスクがあるように思えて、あまり良い物価と金利上昇には思えません。
天然ガス高騰の影響でエネルギー供給会社の破綻が続いています。イギリスには、「プライスキャップ」というエネルギー販売価格の上限規制があり、仕入れコストが上がってもそれを価格に転嫁できないことから経営が苦しくなっています。
7月辺りからトラックドライバー不足により輸送が滞り食糧不足となっていたようですが、ここにきてガソリン不足も加わり、経済活動に大きなダメージとなりそうです。BOEは景気減速よりもインフレを注視する様子がありますが、このような状況で利上げを実施した場合、景気が更に悪化するのではないかという懸念があります。市場は2022年末まで3回の利上げを織り込んだ状態ですが、若干行き過ぎのような気がします。
2-5.オーストラリア
RBA政策決定会合では、従来の政策が全て維持されました。ロックダウンの経済へのダメージなど楽観視しているような声明もありましたが、「2024年まで利上げするために必要な材料は揃わない」という見方が楽観的な見方を全て打ち消した形になっています。
多くの国が、インフレに備えるべく金融政策をタカ派転せざるをえない状況になっていることと比較すると、RBAのスタンスは相対的にハト派を維持していることになります。しかし、資源価格の上昇は相当な恩恵をもたらしているはずであり、意外に早く景気の回復と共にRBAのスタンスのタカ派転換が見られるかもしれません。
2-6.ニュージーランド
RBNZ政策決定会合ですが、今回は直前に政府がゼロコロナ方針を諦めたことから、予想通り0.25%の利上げとなりました。コロナショック以降ノルウェーに続いて先進国の中では2番目となります。声明文も、当然タカ派的でしたが、住宅価格のところだけは持続可能ではないとしています。
注目の今後の方針ですが、一応次回以降も利上げを実施するというニュアンスでしたが、あまりはっきりとしたものではなく、既に相当利上げ織り込みが進んでいる市場からすると物足りない結果となり、発表後からNZDは売られました。
2-7.カナダ
カナダで拘束されていた中国通信機器大手会社ファーウェイのCFOが起訴を取り消されバンクーバー空港から中国に向けて出国しました。これにより中国で拘束されていたカナダ人2名も解放されました。両国及び米国との関係が回復に向けて一歩前進しました。
2-8.その他
9月20日から18ヶ国の中央銀行が金融政策の発表を行い、7か国が利上げを実施しています。大統領の介入によりまさかの利下げを実施したトルコを除くと、半分の中央銀行が金融緩和解除方向へのスタンスを示したことになります。これらの国に共通していることは、インフレが高止まりしていることです。
3.10月下旬に向けての注目材料
3-1.FOMC議事録
10/13に議事録が公表されます。2022年の利上げを予想したメンバーは18名中9名でしたが、この9名に含まれていると見られるダラス連銀総裁とボストン連銀総裁が倫理規定違反で辞任を表明しています。また、同じくタカ派のクラリダ副議長も倫理規定違反が取り沙汰されており、もう一人タカ派のクウォールズ副議長も任期満了を迎えることから、最大4名のタカ派メンバーが入れ替わる可能性を考慮して、細かく各メンバーの意見を精査する必要があります。
2-2.米CPI・インフレ動向
債券利回り上昇の背景にあるのは物価上昇です。8月の米PCE(個人消費支出)デフレータは前年比+4.3%、コアデフレータは前年比+3.6%となっており、インフレターゲットの2%をはるかに超える水準です。PCEデフレータは3月分から、コアデフレータも4月分から2%を超えての推移となっています。
米FRBは直近のインフレについて一時的なものであるという認識を崩していませんが、“一時的”な状態が既に半年程度継続しており、FOMCメンバーからは警戒感を強める発言が増えています。今回のCPIの事前予想は、前年比+5.3%・コアは前年比+4.0%で、8月と同水準で高水準が維持されるという予想です。エネルギー価格の上昇やサプライチェーン問題を受けた供給制限によって、物価上昇が落ち着く気配は見えません。
しかし、雇用についてはここ2カ月続けてやや残念な伸びになっていますが、万が一CPIが今回予想を下回るようだと、利上げの織り込みの剥落と共に金利低下の材料になる可能性があります。
3-3.中国不動産会社関連問題
恒大集団の9月23日・9月29日償還分の社債については、支払う意思を見せたためデフォルト認定まで30日の猶予期間に入っています。したがって10月23日が事実上の期日になります。
しかし、その前に10月4日に別の米ドル建て社債が償還されなかったため、支払い猶予5営業日である10月11日までに支払いが行われなかった場合、クロスデフォルトが適用され、恒大集団が抱える残りのすべての借り入れについても返済期日が到来していなくてもデフォルトになったものと見なされ、債権者は恒大集団に返済を要求できるようになってしまいますから、資金繰りが更に苦しくなります。
また恒大集団だけでなく、10月4日にデフォルト認定されたファンタジア、10月15日と11月8日にもその他の不動産会社の社債の償還期限が到来します。どれも資金繰りが苦しいと言われている会社であり、中国国内の社会問題になり、国内消費の減退に繋がる恐れがあるため、注意が必要です。
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