利用者の83.9%が幸福度の高まりを実感、ADDressが多拠点生活の社会的インパクトレポート公開。SIIF、RSIFとの共同プロジェクト

定額制多拠点生活サービス「ADDress」を運営する株式会社アドレスは10月15日、「社会的インパクトレポート2020-21」を公開した。ADDressの多拠点生活サービスが社会的課題にどのように関わり、その改善、解決にどれほど寄与したかという「社会的価値」を可視化する初の試みで、同社の出資者で社会課題の解決と多様な価値創造が自律的・持続的に起こる社会を目指す一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)、立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合(プラスソーシャルインベストメント株式会社、RSIF)との共同プロジェクト。

同サービスが目指すべき社会課題におけるKPI(重要業績評価指標)を設定するため、プロジェクトではまず「ロジックモデル」を作成した。これは最終目標に向けて取り組むべき戦略をまとめた「事業設計図」で、時系列別に初期、中期、長期(最終)に整理。社会課題の解決のために意図的に行った活動で生じたサービス、技術、商品(アウトプット)が社会に与えた有形無形のポジティブな変化(アウトカム)を捉えて評価、その要因を分析した。

長期アウトカムとして、受益者が会員の場合は「幸福感を持って生きる人々の増加」、地域を受益者とする場合は「観光によらない地域のあり方の実現」と設計。ロジックモデルに沿って可視化するため、業務データおよび会員・家守アンケートを参考データとして取得した。

初期アウトカム「多拠点生活の増加」では、会員数の増加率、物件数、年間平均物件利用数、同一会員がリピート予約している物件数を可視化。会員数はパンデミック前と現時点で比較して6.42倍に増えている。「新しい出会い・交流の創出」では、家族や旧来の友人・知人や仕事関係者を除いて新たに獲得した交流人数が10名以上と回答した会員が61.3%にも上り、「サービスが新たな出会いを促進した」と判断するに足る結果となっている。会員やコミュニティマネージャーの「家守」が立ち上げた部活動は、21年8月18日時点で22部活715名が登録している。レポートでは初期アウトカムとして「遊休資産の利活用」についても数値化している。

中期アウトカムでは「新たな場所での自己実現」として、多拠点生活先で新たなことにチャレンジした人、そうした地域活動を通して収益を上げた人数についても分析とともに数値化を試みた。また、豊かな暮らしの実現に向けた指標として、経済とは直接結びつかない地域の自然資本や文化資本に触れた体験の数や質も可視化。アンケート回答した会員の85%が自然・文化資本のいずれか、または双方を体験したという結果が出た。

さらに、「交流/関係人口の増加」では、多拠点生活での月平均食費消費額、1コンテンツあたりの平均アクティビティ消費額を数値化。地域で生産活動をすることで収益を上げた人の割合は20.4%、移住意欲のある人は37.6%に上った。アンケート結果から、レポートは「移住に関する土地柄・住環境・地域コミュニティといった課題をサポートする仕組みとしてアドレスが今後、関係人口のみならず移住人口の増加にも寄与していくと考えられる」としている。

長期アウトカム「幸福感をもち生きる人の増加」では、83.9%が幸福度の高まりを実感するという高い数値が出た。地域を受益者とする場合の長期アウトカム「観光によらない地域のあり方の実現」に関する分析は、次年度以降まとめる予定。

アドレス社は、空き家を活用した多拠点生活を楽しむ Co-livingサービスの提供を通じて、全国各拠点で起業やまちづくりなどで活躍する人々と連携し、各地で複業や教育、文化、医療活動などにも関わる関係人口の創出を目指すベンチャー企業。地域の拠点に滞在しながら新しいライフスタイルを実現できる選択肢として、その後のコロナ禍でワーケーションやリモートワークが推奨されたことで注目されている。SIIF は昨年1月、同社の「新たな人的資本を生み出し、都市と地域間で循環させる新しい仕組み作りの担い手としての将来性」に出資を行った。

【関連サイト】社会的インパクトレポート公開「ADDress多拠点生活の社会的インパクト評価」

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