新NISAは現行からどう変わる?注意点やつみたてNISAとの違い・比較も
2014年から始まったNISAは、少額ながらも非課税の優遇措置が受けられる制度として、投資に初めて挑戦する投資家から人気を集めてきました。内容をマイナーチェンジしながら、つみたてNISAやジュニアNISAなどの派生制度が誕生しつつ現在に至ります。
シンプルな制度の一般NISAは、2024年に内容を一新して、新NISAとして新たな非課税制度として生まれ変わります。この記事では、新NISAの変更点や、つみたてNISAとの違いや使い分けなどNISAに関する内容を網羅的に解説します。
※この記事は2021年10月12日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 20%の税金がかからないNISA制度
1-1.現行NISAの概要
1-2.NISAのメリット
1-3.ジュニアNISAは制度終了 - いままでのNISAと新NISAとの違い
2-1.長期運用向けに調整された新NISA
2-2.新NISAの活用方法 - つみたてNISAと新NISA、選ぶのはどちら?
3-1.新NISAとつみたてNISAの違い
3-2.運用スタイルに適したNISAを選ぶ - 現行NISA、新NISA、つみたてNISAのロールオーバーについて
- NISA運用上の注意点
- まとめ
1.20%の税金がかからないNISA制度
2024年からスタートする新しいNISAは、現行のNISAからどのような点が変わるのでしょうか。現行のNISAの制度をあらためて確認しつつ、比較してみましょう。
1-1.現行NISAの概要
一般NISAとは、NISA口座を通じて購入した金融商品の収益が、5年間に渡って非課税となる制度です。ポイントは以下の4点となります。
- 日本国内に住む20歳以上の人なら誰でも利用可能
- 一般NISA口座を通じた年間120万円までの投資による収益が、最長5年間非課税に
- 一般NISAの対象商品は、上場株式、株式投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など
- ロールオーバー制度によって5年以降も継続可能
通常、株式や投資信託で得た収益には20.315%の税金が課税されます。10万円の収益の場合、約2万円が徴収されて、受け取りは約8万円です。100万円の場合は約20万円となり、20%の課税の大きさがわかります。しかしNISAを使うと税率が20%から0%になり、投資家に大きなメリットをもたらすのです。
1-2.NISAのメリット
NISAは投資家にとってメリットが多い制度です。主なメリットを以下にピックアップしました。
- 売却益、譲渡益、分配金、配当金全て非課税の対象
- 投資上限内であれば回数の制限がない
- ロールオーバーにより5年以上の運用も可能
あらゆる収益が非課税となり、5年を超えても売却せずに保有を続けられるロールオーバー制度はNISAのメインとなる制度です。投資枠内であれば何回購入しても良い、という点は分散投資によるリスク分散にも適しています。
1-3.ジュニアNISAは制度終了
子供の成長に合わせて資産を積立られるジュニアNISAは、2023年末をもって制度終了となります。子供や孫の教育資金の準備や生前贈与に活用できる制度で払い出しに制限がありましたが、2024年以降は払い出しの制限が解除されるとあって現在、注目されています。
2.いままでのNISAと新NISAとの違い
現行のNISAと新NISAの変更点を確認しつつ、新NISAの活用方法を考察してみましょう。
2-1.長期運用向けに調整された新NISA
新NISAの大きな変更点は、非課税枠がつみたてNISAのような低リスク枠と、従来通りの株式などに投資できる2つの枠となった点です。以下、3つの変更点を解説します。
投資上限額と内訳
投資上限枠は120万円から122万円となり、2万円だけ上限が上がりました。内訳は20万円のつみたてNISA対象商品による運用と、102万円の上場株式や株式投資信託による運用の2階建てとなりました。
1階は20万円、2階は102万円の枠で、1階を先に埋めて2階の枠を埋めます。1階の枠は20万円となっていますが、1階60万円、2階枠が42万円になっても可とされています。
- 1階:20万円
つみたてNISAと同じ商品が対象で積立投資のみ可
つみたてNISAへロールオーバーできる - 2階:102万円
1階で積立投資を行った場合、2階部分が使える
対象商品
1階部分と2階部分は対象商品が異なります。1階部分の20万円は、つみたてNISAと同じ対象商品となり、運用も同じです。2階部分の102万円は従来のNISAと同じ対象商品ですが、レバレッジを効かせたブルベア型のようなファンドは運用できなくなりました。
新NISAは短期の収益を狙うよりも、長期運用に適した制度に変更されています。
区分 | 対象商品 |
---|---|
1階部分 | つみたてNISAと同じ |
2階部分 | 上場株式 投資信託 ETF REIT (レバレッジを効かせた投信などは除く) |
2-2.新NISAの活用方法
20万円の積立枠と合わせて、残りの102万円枠も積立に使うことができる制度となっていますので、従来のつみたてNISAよりも多く投資したい方は、新NISAを使うと良いでしょう。月によって積立が多い時と、個別株を買う月など使い分けも可能です。
基本は積立投資に使いつつ、ピンポイントで個別株投資にも活用する、という使い方ができます。
3.つみたてNISAと新NISA、選ぶのはどちら?
新NISAとつみたてNISAの違いを確認しつつ、それぞれの活用方法を考察してみました。
3-1.新NISAとつみたてNISAの違い
新NISAとつみたてNISAの特徴を表にまとめてみました。大きな違いは、非課税期間と投資枠です。新NISAは、現行NISAとつみたてNISAを組み合わせたハイブリッド型の設計です。
新NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
投資枠 | 122万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年 | 20年 |
ロールオーバー | 1階部分はつみたてNISAへ簿価で移行可能(2028年まで) | 不可 |
投資期間 | 2024年~2028年 | 2018年~2042年 |
投資対象 | 1階部分 つみたてNISAと同じ 2階部分 レバレッジ投信などを除く個別株、投信、上場投信 |
金融庁の基準を満たす投信、ETF |
3-2.運用スタイルに適したNISAを選ぶ
新NISAとつみたてNISAどちらを選ぶかは、102万円の枠をどう活用するか?という点がポイントになります。
短期目線での収益も狙う
毎月20万円の積立投資を行いつつ、上昇トレンドの個別株や、IPOに参加して買付をしたい、という場合には新NISAの良さを活かすことができます。IPOの場合、上場時点で大きな収益が出るケースがありますので、NISAの非課税制度のメリットを享受できる可能性があります。
長期運用による資産形成
つみたてNISAは、年間の投資枠が40万円ですが、非課税期間が20年と長く設定されている点がポイントです。NISAはつみたて専用で運用したい、という方はつみたてNISAをうまく活用して資産形成すると良いでしょう。
4.現行NISA、新NISA、つみたてNISAのロールオーバーについて
- 現行NISA:新NISAへ時価でロールオーバー可能
- 新NISA:2028年まで簿価でつみたてNISAへロールオーバー可能
現行のNISAは2023年まで非課税期間となり、順次新NISAへロールオーバーにより移行します。新NISAの1階部分については、2028年以降、つみたてNISAへロールオーバーすることによって、非課税期間を延長できる仕組みです。
現行NISAは時価によって新NISAにロールオーバーするとされていますが、この場合の「時価」は各市場の終値のうち、最も低い価格となります。また新NISAからつみたてNISAへのロールオーバーは「簿価」を用いるとされており、この場合の簿価は特定口座に記された基準価額です。
時価によっては、120万円を超えてロールオーバーする場合もありますが、上限を超えていてもそのままロールオーバー可能です。
2階部分は現時点ではロールオーバーなしとされていますが、運用スタートまでに制度内容が変更される可能性もあります。色々な人に投資に参加してもらうためにスタートしたNISAですが、最近の制度変更を見ると、長期運用への優遇措置にシフトしつつあることがわかります。
5.NISA運用上の注意点
NISAを使った運用では、複数の口座の損益を合算して税務申告する仕組みである損益通算を使えません。
損益通算を使うと、株式Aで50万円の収益、株式Bで20万円の損失がある場合、損益通算を行うことで、収益30万円とすることができ、課税金額を減らすことができます。特定口座ですでに源泉徴収されている場合でも、確定申告により還付を受けられます。
NISA口座は、他の特定口座や一般口座との損益通算ができないので、年間の損益がマイナス(損失)となった場合はNISAのメリットを活かすことができません。また最大3年間にわたって収益と損失を損益通算する繰越控除も、同様にNISA口座ではできません。
まとめ
新NISAの変更ポイントは、より長期の資産形成に最適化された、という点です。122万円の枠のうち、20万円はつみたてNISA枠となり、20万円の枠を使わないと残りの102万円枠を使えない仕組みとなっています。
いままでNISAを株式の買付に使っていた方にとっては少々使いにくくなった反面、長期運用をメインで行い、株式にも少し投資したいという方にとっては使いやすい制度となります。
新制度スタートまでに変更が加わる可能性もありますが、株式と投資信託、ETFにバランスよく投資したい方は、新NISAを活用してみてはいかがでしょうか。
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