寄付金の勘定科目はどう仕訳する?法人・個人それぞれ注意点を解説
事業上寄付金を支出して、会計帳簿の処理をする際、勘定科目はどのように仕訳をすればよいのでしょうか。
法人と個人では、寄付金を支出した場合の税法上の取扱いが大きく異なります。また、仕訳をする勘定科目によっては、税額が大きく変わってくることもあるので注意したいところです。
本記事では、寄付金の仕訳をおこなう際の勘定科目について、法人と個人に分けて解説していきます。
※記事内の税金・税率などは2021年11月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 法人の場合の寄付金
1-1.法人税における寄付金の意義と取扱い
1-2.基本的な寄付金の仕訳
1-3.接待交際費に該当する場合の寄付金の仕訳
1-4.広告宣伝費に該当する場合の寄付金の仕訳
1-5.福利厚生費に該当する場合の寄付金の仕訳
1-6.給与に該当する場合の寄付金の仕訳 - 個人の場合の寄付金
2-1.所得税における寄付金の取扱い
2-2.個人が寄付金を支出した場合の仕訳 - まとめ
1.法人の場合の寄付金
法人が寄付金を支出した場合、法人税法上、寄付金として取り扱うことになる範囲が個人の場合よりも広いので注意が必要です。
逆に、金銭を贈与した場合であっても、支出した相手方が事業関連者であったり、支出目的に直接的な事業関係性が認められたりする場合は、その性質に応じた事業上の経費となるため、対応する勘定科目で仕訳をおこないます。
寄付金と接待交際費には損金算入限度額規定があるため、他の勘定科目で仕訳をおこなった方が、法人税の課税所得を圧縮することができ、法人税の軽減につながります。
1-1.法人税における寄付金の意義と取扱い
法人税法では、寄付金は、法人が行った「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」と定義されています。金銭や資産の贈与以外に、低額譲渡や債権放棄、無利息貸付けなどが寄付金に該当することがあります。(※参照:国税庁「寄附金の範囲等」)
また、「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」に該当するものであっても、一定の場合には、寄付金とはならず他の勘定科目で処理することになります。
たとえば、法人の事業と直接関係があると認められる広告宣伝費、交際費、福利厚生費などに該当する場合、寄付金にはなりません。また、法人の役員などの私的な支出と認められた場合、その役員などに対する給与として処理する必要があります。
法人税における寄付金損金算入の取扱い
法人が寄付金を支出した場合、損金算入の取扱いは、寄付の相手先によって異なります。国や地方公共団体への寄付金と指定寄付金は全額が損金算入されますが、特定公益増進法人に対する寄付金とそれ以外の寄付金で、損金算入に限度額があります。(※参照:国税庁「寄附金を支出したとき」)
特定公益増進法人に対する寄付金の損金算入限度額は、次の算式によって計算されます。
(資本金等の額×当期の月数/12×3.75/1,000+所得金額×6.25/100)×1/2
その他の寄付金の損金算入限度額は、次の算式によって計算されます。
(資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1,000+所得金額×2.5/100)×1/4
1-2.基本的な寄付金の仕訳
基本的な仕訳例として、公益財団法人に1,000,000円を現金寄付した事例についての仕訳例を考えてみましょう。
公益財団法人への寄付は、公益の増進に寄与する目的で使用されるといえます。法人の事業と直接に関係があるとも認められず、純粋な寄付金として扱われます。したがって、次のように仕訳をすることができます。
借方 | 貸方 |
---|---|
寄付金:1,000,000円 | 現金:1,000,000円 |
1-3.接待交際費に該当する場合の寄付金の仕訳
取引先の開催した祝賀パーティーに協賛金500,000円を支出した事例を考えてみましょう。
協賛金は金銭の贈与ですが、取引先などの事業関係者に対し、取引関係を円滑に進行するために行われたものである場合、法人税法上、接待交際費に該当するといえます。したがって、次のように仕訳をすることができます。
借方 | 貸方 |
---|---|
接待交際費:500,000円 | 現金:500,000円 |
1-4.広告宣伝費に該当する場合の寄付金の仕訳
一般消費者に抽選で金券を配布するために、1,000,000円を支出した場合について考えてみましょう。
金銭その他の資産の無償の供与であっても、不特定多数の者に対する宣伝的効果を持つものは、広告宣伝費に該当します。したがって、次のように仕訳することが可能です。
借方 | 貸方 |
---|---|
広告宣伝費:1,000,000円 | 現金:1,000,000円 |
1-5.福利厚生費に該当する場合の寄付金の仕訳
従業員に対し、社内規程に基づいて、10,000円の慶弔見舞金を支出した場合について考えてみましょう。
金銭の贈与であっても、従業員の慰安のために通常要する費用は福利厚生費に該当します。したがって、次のように仕訳することができます。
借方 | 貸方 |
---|---|
福利厚生費:10,000円 | 現金:10,000円 |
1-6.給与に該当する場合の寄付金の仕訳
会社の役員の結婚披露宴の費用として、会社から1,000,000円を拠出した場合について考えてみましょう。
このような金銭の贈与は、役員個人に対する経済的利益の供与であり、役員報酬に該当するといえます。なお、役員報酬は利益処分的な性質も備えていることから、損金算入が厳しく制限されており、このような臨時的な役員報酬は、法人税の課税所得計算においては、損金不算入になる可能性が高いでしょう。
借方 | 貸方 |
---|---|
役員報酬:1,000,000円 | 現金:1,000,000円 |
2.個人の場合の寄付金
個人で寄付金を支出した場合は、事業を営んでいる場合であっても、所得控除あるいは税額控除を利用して所得から控除することになるのが原則となります。そのため、事業上の帳簿で仕訳をおこなう場合は、事業主への貸付として処理をします。
2-1.所得税における寄付金の取扱い
個人が寄付金を支出した場合、所得税法における取扱いには、一般的に、所得控除と税額控除があります。
所得控除
所得税の課税される所得金額の合計額から差し引くことができる控除の一つとして、寄附金控除があります。(※参照:国税庁「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」)寄附金控除額は、次の算式で計算されます。
寄附金控除額=その年に支出した特定寄付金の額―2,000円
所得から控除できる寄付金額は、その年の総所得金額の40%から2,000円を差し引いた金額が上限となります。減税となる所得税額は、この寄付金控除額に所得税の税率(0%~45%までの所得額に応じた累進税率)を乗じた額となります。
なお、特定寄付金は寄付金のうち、一定の団体などへの寄付や金銭の拠出を対象としています。
税額控除
所得税では、寄付金額から2,000円を差し引いた額の30%~40%を、所得税額から直接控除する制度もあります。 税額控除の金額は、次のように計算します。
寄付金税額控除額=(その年に支出した一定の寄付金の額―2,000円)×40%(30%)
控除される所得税額は、その年の所得税額の25%が上限となります。
控除対象となる寄付金額の上限は所得控除よりも少ないですが、累進税率が23%以下(課税所得が900万円未満)であれば、税額控除の方が所得控除よりも軽減される税額は多いといえるでしょう。
なお、上述の所得控除の対象となる寄付金は、特定寄付金のうち一定の団体などへの寄付金に限定されます。
2-2.個人が寄付金を支出した場合の仕訳
所得税法では、寄付金は、所得控除と税額控除という家事費の控除枠において、控除することになります。したがって、個人事業主が事業所得の計算をおこなう帳簿上で、100,000円の寄付金支出があった場合、事業主への貸付けとして処理します。次のように仕訳をすることができます。
借方 | 貸方 |
---|---|
業主貸:100,000円 | 現金:100,000円 |
まとめ
法人の場合、法人税法上、寄付金として取り扱う範囲が広い一方、同じ金銭の贈与などであっても他の勘定科目として取り扱うことができることがあります。勘定科目によっては、寄付金として仕訳をするよりも、法人税額の軽減につながります。
個人の場合、所得税法上、寄付金は所得控除か税額控除で家事費控除をするのが原則です。事業上の帳簿で仕訳をおこなう場合は、事業主への貸付として処理しましょう。
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