【米国株情報】GE傘下のLMウィンドパワー 2030年までに廃棄物ゼロの風力発電ブレードを製造
米ゼネラル・エレクトリック(ティッカーシンボル:GE)の再生可能エネルギー部門であるLMウィンドパワー(GEリニューアブルエナジー傘下、#1)は2021年11月23日、2030年までに廃棄物ゼロの風力発電ブレードを製造することを発表した(*1、2)。
LMウィンドパワーはブレードの製造工程で生じた余分な材料のすべてを、リユース(再利用)・リパーパス(異なる用途での再活用)・リサイクル(再資源化)する方針だ。余剰材料を廃棄物として埋め立てや焼却処分しないことで、よりサステナブルな製造プロセスの構築を目指す。
製造過程で生じる廃棄物をいかに処理するかは、カーボンフットプリント(#2)の削減を目指す多くの産業が直面する最大の課題のひとつだ。LMウィンドパワーでは、業務上でのカーボンフットプリントの3分の1ほどが廃棄物処理によるものである。
ブレードのライフサイクルにおいて、二酸化炭素(CO2)の約75%はサプライチェーン上で排出されているという。そのため、風力発電タービン・ブレードメーカーにとって、カーボンフットプリントの削減にはサプライチェーンでの取り組みが鍵を握っている。
同社によると、風力発電業界ではブレードメーカーが調達した材料の約20~25%が最終製品に利用されていないとのことだ。また、ブレードの製造過程に生じる廃棄物量は、今後10年間で廃止されるブレードの量を上回る見通しとの調査結果が示されている。
各国で再生可能エネルギーの導入が拡大されるなか、風力発電業界プレーヤーの多くが、ブレードの廃棄に関連したサステナブルで管理可能なソリューションの開発を試みている状況だ。たとえば、洋上風力世界最大手のオーステッド(ティッカーシンボル:ORSTED)は6月、グローバルポートフォリオ内の陸上および洋上風力発電所で廃止する風力タービンブレードをすべてリユース・リサイクル・またはリカバー(回収)する取り組みを開始した(*3)。また、独シーメンス(ティッカーシンボル:SIE)傘下の風力発電機世界大手のシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーは9月、洋上風力発電向けとなる世界初のリサイクル可能な風力発電タービンブレードをリリースしている(*4)。
以下は風力発電タービンメーカーの市場シェアランキング(2019年)だ。ESG(環境・社会・ガバナンス)が世界の潮流となるなか、上記の企業においてもサステナブルな製造プロセスの構築が進められると予想される。
順位 | 企業名 | シェア |
---|---|---|
1 | ヴェスタス(デンマーク) | 18.0% |
2 | シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー(スペイン) | 15.7% |
3 | ゴールドウィンド(中国) | 13.2% |
4 | GEリニューアブルエナジー(米国) | 11.6% |
5 | エンビジョン(中国) | 8.6% |
6 | ミンヤン(中国) | 5.7% |
7 | ノルデックス(ドイツ) | 4.9% |
8 | エネルコン(ドイツ) | 3.0% |
9 | ウィンディ(中国) | 2.5% |
10 | 東方電機集団(中国) | 2.1% |
(出所:グローバル・ウィンドエナジー・カウンシルより筆者作成。*5)
日本でも風力発電の課題に挑む企業がある。ブレードのない「垂直軸型マグナス式風力発電機」を製造する株式会社チャレナジーだ。(*6)
一般的に、風力発電は風の力でブレードを回し、その動力を活用して発電するが、風向きの乱れが多いと安定的に発電することができない。その点、チャレナジーの垂直軸型マグナス式風力発電機は垂直軸型であるため、台風のような暴風でも安定して発電することができる。また、薄いブレードは強風で損壊してしまうリスクがあるが、垂直軸型マグナス式風力発電機であれば、そもそもブレードがないため損壊リスクも大幅に低下する。
チャレナジーは垂直軸型マグナス式風力発電機をフィリピンで稼働させたほか、直近ではマダガスカルでも「台風発電」に乗り出したとのことだ。
チャレナジーを含む、風力発電業界の各プレーヤーがよりサステナブルなソリューションを開発することに期待したい。
(#1)LMウィンドパワー…2016年10月、ゼネラル・エレクトリックがデンマークの風力発電機器メーカーであるLMウィンドパワーを買収した。LMウィンドパワーは風力発電用のブレード(羽根)を製造する世界大手。GEはこれまで自社でブレードを製造してこなかったが、LMウィンドパワーの買収により、機器製造から一貫して手掛けることで競争力のあるイノベーションを提供するという。
【参照記事】LMウィンドパワーGE、16億5,000万ドルで、風力発電用ブレードの世界的メーカーLMウィンドパワーを買収
(#2)カーボンフットプリント…商品・サービスのライフサイクルの各過程で排出された温室効果ガスの量を追跡し、得られた全体の量を二酸化炭素(CO2)量に換算して表示すること。
【参照記事】*1 LMウィンドパワー「Towards circular wind turbines: Our zero waste blades commitment」
【参照記事】*2 GEリニューアブルエナジー「Towards circular wind turbines:LM Wind Power to produce zero waste blades by 2030」
【参照記事】*3 オーステッド「Ørsted commits to sustainable recycling of wind turbine blades」
【参照記事】*4 シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー「Siemens Gamesa pioneers wind circularity: launch of world’s first recyclable wind turbine blade for commercial use offshore」
【参照記事】*5 グローバル・ウィンドエナジー・カウンシル「Wind turbine sizes keep growing as industry consolidation continues」
【参照記事】*6 株式会社チャレナジー
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