投資信託とETF、初心者にはどっちが良い?特徴やリスク、手数料で比較

資産の長期運用を計画している方の中には、投資信託とETFの違いについて疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。ETFは上場投資信託とも呼ばれるため、投資が初めての方にとってはわかりにくい言葉です。

この記事では、投資信託とETFの基本的な違いと、長期運用を前提とした合理的な運用方法について解説しています。投資信託やETFについてもっと知りたい、という方はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※価格表記は全て税込です。また信託報酬の表記は全て年率です。

目次

  1. 投資信託とETFの違い
    1-1.売買タイミングの違い
    1-2.注文方法の違い
    1-3.銘柄数・種類の違い
    1-4.手数料で見る投資信託とETFの違い
  2. 初心者はわかりやすさで選ぶ
  3. ETFの代表的な銘柄
    3-1.商品に機動的に投資ができる
  4. 長期運用を考慮したポートフォリオ
    4-1.信託報酬が低いETFで長期運用
    4-2.取扱テーマが多い投資信託の活用
  5. ETFの売買価格と投資信託の基準価額の乖離によるリスクと対策
    5-1.ETFの市場価格と基準価額の乖離問題
    5-2.基準価額と市場価格の乖離対策
  6. まとめ

1.投資信託とETFの違い

投資信託とETFには、決定的な違いがあります。以下、3つのポイントにて解説します。

1-1.売買タイミングの違い

ETFは、株式と同じく取引所に上場しているので、取引時間内であればリアルタイムに売買可能です。取引量が多いETFであれば、状況に応じて機動的な取引が可能です。一方で取引量が少ないETFもあり、リアルタイムですぐに約定しないケースもあり、投資信託に比べると売買成立のタイミングには幅があります。

投資信託の基準価額の更新は1日1回で、注文の段階ではいくらで約定するかわかりません。多くのファンドは、15時が当日申し込みの締め切りとなっており、約定を経て、数日後に受け渡しとなります。

投資信託は約定日や受渡日がファンドによって異なります。国内ファンドは申込日と約定日が同じで、海外ファンドは申込日の次の日が約定日とされているケースが一般的です。

1-2.注文方法の違い

ETFは株式と同様に、売買価格を指定する指値注文ができます。価格を指定せずに、いくらでもいいから売買したい場合、成行注文で売買することも可能です。

ETFは売買のタイミングの他に注文方法も選ぶことができるため、機動的な取引にも対応できます。株式と同様に売り気配と買い気配を表示する板情報を見ることができる点も、ETFの取引における特徴です。

投資信託の注文方法には、口数指定や金額指定はありますが、基準価額の指定はできません。注文した時点で基準価額はわからず、最速でその日の夜22時くらいに申し込み時点の基準価額が判明します。

1-3.銘柄数・種類の違い

ETFの銘柄と投資信託のファンドを本数で比べると、投資信託のファンド数のほうが圧倒的に多くなっています。ETFは約250銘柄程度の取扱ですが、投資信託は約6,000銘柄です(2022年1月19日時点)。

ファンドの本数が多い投資信託ですが、証券会社や銀行、郵便局などで取扱できるファンドはそれぞれ異なり、どの窓口でも約6,000ファンド全てから選んで申し込むことはできません。

ETFはどの証券会社でも同じ銘柄を扱っていますが、銀行や郵便局では株式と同様に取扱がなく、買付不可です。

1-4.手数料で見る投資信託とETFの違い

手数料に関して、ETFと投資信託の違いを確認しておきましょう。

購入手数料

最近では、投資信託の購入手数料を無料としたノーロードのファンドが増えつつあります。ファンドの購入手数料は販売の窓口によって異なりますが、ノーロードが基本とされているファンドを選択すると購入手数料はかかりません。

基本的にETFの銘柄を買い付ける時は、株式と同じく購入手数料が必要ですが、ネット証券を中心に、銘柄の一部を購入手数料無料としているケースや、一定額の取引までなら手数料が無料というケースもあります。

運用管理費用

投資信託では、ファンドを保有している間はずっと信託報酬がかかり続け、ファンドの売買委託手数料も基準価額から引かれます。ETFも銘柄を保有している間、信託報酬が発生しますが、ETFの平均的信託報酬は、投資信託のインデックスファンドの信託報酬にくらべて少し安くなっています。

以下、2022年1月時点のSBI証券の取扱ファンドと、代表的なインデックスファンドの比較です。

ETF

  1. iシェアーズS&P500米国株ETF:0.0825%程度
  2. eMAXIS 米国株式(S&P500)上場投信:0.0858%以内

投資信託

  1. SBI-SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド:0.0938%程度
  2. 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim米国株式(S&P500):0.1144%以内

投資信託で信託報酬が0.07%まで低いファンドは、上記時点では現状見当たりませんでしたので、運用管理費はETFのほうが少し安い傾向にあると言えます。

解約手数料

投資信託の解約時には、ファンドによって信託財産留保額を徴収する場合もありますが、多くの場合無料です。

ETFでは、株式と同様に売買手数料が必要です。売買手数料は証券会社によって異なります。2022年1月時点の情報では、SBI証券楽天証券では、1日100万円以内の取引であれば手数料0円となっています。現状はネット証券を中心に、売買手数料は低く抑えられています。

2.初心者はわかりやすさで選ぶ

初めて投資信託やETFへ投資しようとなると、どの数値で判断したら良いのか、どんなテーマの銘柄が良いのか、判断に迷ってしまいます。

ETFは、インデックスファンドやバランスファンド、商品ファンドで構成されており、レバレッジ型やインバース型を除くと、シンプルでわかりやすい運用を行っている銘柄が多い傾向です。

投資信託は、上昇、下降トレンドに関係なく、収益を目指す複雑な運用を売りにしているファンドも存在しており、素人にはどんな運用をしているのか全くわからないケースもあります。何をしているかわからないファンドは、運用継続の見極めがつきにくくなります。

ファンドへ初めて投資する場合、相場と連動するインデックスファンドのようなシンプルな運用を行っているファンドへ投資するのが良い選択です。

3.ETFの代表的な銘柄

商品指数に連動する銘柄はシンプルでわかりやすく、リアルタイムに状況に応じた取引が可能です。商品ETFの銘柄について解説します。

3-1.商品に機動的に投資ができる

商品ETFは、商品指数に連動することを目標とした上場投資信託のことを指します。主な商品ETFは以下の通りです。

対象指標 名称 管理会社 信託報酬
NEXT FUNDS 金価格連動型上場投信 野村アセットマネジメント 0.55%以内
SPDR®ゴールド・シェア 受益証券 ワールド・ゴールド・トラスト・サービシズ・エルエルシー 0.44%程度
純金上場信託(現物国内保管型) 三菱UFJ信託銀行 0.44%
白金 純プラチナ上場信託(現物国内保管型) 三菱UFJ信託銀行 0.55%
日経・JPX白金指数 NEXT FUNDS日経・JPX白金指数連動型上場投信 野村アセットマネジメント 0.495%
純銀上場信託(現物国内保管型) 三菱UFJ信託銀行 0.55%
パラジウム 純パラジウム上場信託(現物国内保管型) 三菱UFJ信託銀行 0.55%
WTI原油先物価格 WTI原油価格連動型上場投信 シンプレクス・アセット・マネジメント 0.935%
NOMURA原油ロングインデックス NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信 野村アセットマネジメント 0.55%

金など、貴金属

金や白金、銀、パラジウムと貴金属のETFはいくつかありますが、金やプラチナの現物の裏付けがある純金上場信託と純プラチナ上場信託は、ETFの受益証券と引き換えに現物を手にすることができます。貴金属への投資を検討する場合、リアルタイムの取引が可能なETFの検討も良い選択です。

原油

原油はWTI原油とNOMURA原油の2銘柄があります。原油は経済の動きを先取りする傾向があり、マーケットでは注目されている指数です。取引量が多い銘柄なので、リアルタイムの売買も約定しやすく、流動性の高さが特徴です。

4.長期運用を考慮したポートフォリオ

長期運用を想定したポートフォリオを考える時、ETFと投資信託はどのように使い分けると良いのでしょうか。

4-1.信託報酬が低いETFで長期運用

長期運用において、信託報酬などの管理費用は負担になりつづけますので、できるだけ抑えたいところです。わずかコンマ数%でも、10年を超える長期運用を考えると、結果的にかなりの差となって運用成績に現れます。

前述のとおりETFは投資信託と比べて信託報酬がやや低い傾向にありますので、信託報酬が安いETF銘柄を探して、ポートフォリオに組み込み、長期運用の基盤を作りましょう。

4-2.取扱テーマが多い投資信託の活用

投資信託はローリスクなインデックスファンドから、ハイリスクなヘッジファンド系のファンドまで幅広いテーマを取り扱っています。ETFに比べて、投資信託はローリスクとハイリスクどちらも選択できますので、長期運用に備えたローリスクな資産構成とあわせて、機動的にハイリスクな投資を行いたい方は投資信託中心に選ぶと良いでしょう。

5.ETFの売買価格と投資信託の基準価額の乖離によるリスクと対策

ETFにはファンドの基準価額と、相場で形成される売買の価格が存在します。2つの価格の乖離が進むとどうなるのでしょうか。

5-1.ETFの市場価格と基準価額の乖離問題

ETFにはファンドの純資産をもとに計算する基準価額と、市場での取引をもとに算出される市場価格が存在します。

ETFは基本的にインデックスファンドとして運用されていますので、本来はベンチマークとする指標に追従する運用成績を目指さなければいけません。しかし、市場の取引によって売買価格がベンチマークから大きくそれてしまう場合があります。

ベンチマークに連動する運用はETFの大きなメリットであり、投資家もそのつもりでETFへ投資することが前提になりますので、市場の信頼性を確保するためにも市場価格と基準価額の乖離は抑えなければいけません。

市場価格と基準価額の乖離は、ETFが抱える課題とされています。裁定取引のチャンスを生むことにもなり、ETFが投機対象となってしまう問題もはらんでいます。

5-2.基準価額と市場価格の乖離対策

ご参考として、東証では可能な限りETFの価格乖離が起きないように、以下2つの対策が取られています。

  1. インディカティブNAV
  2. マーケットメイカー制度

インディカティブNAVは、ファンドの推定基準価額をリアルタイムに表したもので、投資家はインディカティブNAVを見ながら投資を行います。基準価額よりもインディカティブNAVが高いと、買いが抑制、売りが促進され、逆に低いと買いが促進、売りが抑制されます。インディカティブNAVを基準にした売買の市場原理が働くと、基準価額と取引価格の大きな乖離が起きにくくなるのです。

マーケットメイカーによる取引量の調整も行われることがあります。マーケットメイク制度は適切な流動性を保つことで、市場の健全性を維持する制度です。売買による価格の調整も行われるため、基準価額と取引価格の乖離は修正される仕組みです。

まとめ

ETFと投資信託の違いは、売買のタイミングや注文方法、ファンドの数の差が挙げられます。

ETFは取引時間帯であれば、リアルタイムの取引ができ、指値と成行注文ができるため、機動的な取引も可能です。投資信託はファンドの数が多いため、ハイリスク・ハイリターンのファンドへ投資して、積極的にリターンを狙うことも可能です。

ETFでリスクを取って大きなリターンを狙いたい時は、ブル・ベア型のETFへ投資すると良いでしょう。

ETFと投資信託はどちらにもメリットがありますが、双方とも長期運用、ハイリスク投資に対応できます。ETFと投資信託の特徴をよく理解して、自分の運用スタイルに適した投資先を選択しましょう。

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