日本のネットゼロ達成見込みは2168年、イギリスのみ2050年に達成可能。インベスコAMが20ヶ国分析

資産運用大手のインベスコ・アセット・マネジメント株式会社は1月25日、ネットゼロへの移行状況を定期的にモニタリングするためのレポート「Economic Transition Monitor」第1号を発表した。CO2排出量の多い20カ国を「C20」と名付け、C20各国が設定したネットゼロ目標について考察。世界全体の排出量は増え続けており、気温上昇を1.5℃以内に抑えられるかどうか疑問を呈する。さらに、各国のネットゼロの目標年と現状維持の場合の達成見込の分析まで踏み込み、C20の中では唯一イギリスのみが目標達成とし、日本については現状維持の場合の達成見込みを2168年と試算している。

2020年時点における世界のCO2排出量の80%を20ヶ国が占めており、同社がC20として挙げるのは中国、アメリカ、インド、ロシア、日本、イラン、ドイツ、韓国、サウジアラビア、インドネシア、カナダ、南アフリカ、ブラジル、オーストラリア、トルコ、 メキシコ、イギリス、イタリア、ポーランド、フランス。

レポートでは、通常使用されている生産ベースの排出量(国内での経済活動による排出量)だけではなく、消費ベースの排出量、つまり経済活動において消費される財やサービスの生産に必要な排出量(貿易の流れを考慮した構成)も考察し、消費される財の原産地に関係なく、国民のライフスタイルによる選択に起因する排出量の測定を試みている。

C20諸国のうち17ヶ国がネットゼロの目標年度を設定(法定化または公表)している。C20のうち3ヶ国はネットゼロ目標を掲げていない。最近の傾向からイギリスのみが2050年にネットゼロ目標を達成すると考察するが、インベスコ社は一つの国が達成したところで問題が解決しないと断言する。「イギリス以外の国々のうち8ヶ国は、依然として一人当たりの排出量が増加しており、ネットゼロを達成するためにはその傾向を解消する必要がある。なお、日本では一人当たりのCO2排出量は世界平均の2倍、ネットゼロの達成見込みについては2168年」という試算結果を示した。

イギリスについて、「CO2排出量は石炭火力発電から脱却した影響を受けて2006年、07年以降減少。産業ベースの排出量は17位 、消費ベースでは12位の水準。一人当たりの排出量はC20諸国中14位。過去10年間のデータに基づくと、イギリスは2050年までのネットゼロ目標の達成が唯一可能」と判断。C20の中で2番目に経済活動におけるCO2集約度の低い国であり、サービス業に重点を置いている点も根拠として挙げ、「CO2強度は徐々に低下しており、過去10年間における低下はC20中で最速のスピード」と紹介する。

対して、日本は「CO2排出量は、福島第一原発事故の翌年に化石燃料への依存度が高まった12年がピークだが、C20中、生産ベース・消費ベースともに第5位の排出国。一人当たりの排出量はわずかに改善されて生産ベース・消費ベースともにC20中7位」と見立てる。さらに「日本の経済活動におけるCO2強度はC20中12番目。過去10年間におけるCO2強度の削減率ではC20諸国の中位であり、50年までにネットゼロを達成するためには抜本的なペースアップが必要」としている。

レポートは「人口が増加し続け、新興国が発展して所得が増える中で、世界全体の排出量を減少させるには、経済活動におけるCO2強度を大幅に引き下げることが必須」とし、テクノロジー開発の重要性を強調。「新興国の経済発展は、先進国とは異なる方法で実現されなければならない。そのためには、新たな技術への大規模な投資だけでなく、すべての国がクリーンな方法で発展できるような技術共有や資金援助が必要」として、テクノロジー開発の潮流も個人投資家、機関投資家に定期的に紹介していく方針だ。

【参照リリース】インベスコ・アセット・マネジメント株式会社「世界のネットゼロへの移行状況を分析するレポート「Economic Transition Monitor」を発行

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