不動産投資に広がるESG意識。GLMが全国の投資用不動産保有者400名に調査

投資用不動産の株式会社グローバル・リンク・マネジメント(GLM)は2月24日、全国の投資用不動産保有者400名を対象にしたESG(環境・社会・企業統治)に対する意識調査の結果を発表した。不動産投資のESGの認知度は前回調査(2021年1月)の24.3%から30.5%に、「重要だと思う」という回答も25%から31%に上昇していた。

調査はGLMが19年設立した「グローバル都市不動産研究所」による調査・研究の第14弾。今年1月13日から17日にかけインターネットで400人から回答を得た。内訳は年齢別では20代52人、30代120人、40代120人、50代54人、60代54人で、30~40代が過半数。職業は経営者・役員17人、会社員203人、公務員25人、自営業・自由業38人専業主婦・主夫48人、パート・アルバイト44人、その他25人。年収では500万円未満が100人、500万円以上1000万円未満が161人、1000万円以上139人。

はじめに、「ESG」という言葉を聞いたことがあるかを訊ねたところ、聞いたことが「ある」は41%(昨年調査33.8%)。続いて「不動産のESG投資」の認知度については、「知っていた」が30.5%となった。

次に、不動産のESG投資の認知は不問で、その内容について、投資先を判断する材料・要素として重要だと思うかを聞いた。「重要」は31%、「どちらかというと重要」は44.8%で、計75.8%(前回計73%)が「重要だと思う」と回答。重要だと思う理由を複数回答で聞いたところ、「中長期的な資産価値の維持に寄与する」「賃料収入などリターンに好影響をもたらす」と、資産へのメリットを挙げる回答が5割前後を占めた。ESGという言葉は知らなくても、投資先の判断で環境・社会に対する好悪の影響を考慮する投資家が増えていることがうかがえる。

さらに、不動産のESG投資が重要だと思う人に対して、ESGのどのような分野で重要だと思うかという質問は、前回は「地域社会・経済への貢献」がもっとも高く、「気候変動への対応」が続いた。今年は「健康性・快適性」の向上が48.8%で最多となり、地域社会・経済への寄与が続いた。順位の変化について、同研究所は「家で過ごす時間が長くなり、自分たちが生活する居住環境へ目を向けた」ことが背景にあるとした。ほか、「災害への対応」が前回の33.9%から40.9%に増加していた。

今後の不動産投資で、ESGを意識するか尋ねた結果、「必ず意識する」が20.5%(前年比3.5ポイント増)、「投資目的によっては意識する」が45%(前年比-0.5ポイント)、「投資対象となる物件によっては意識する」(前年比-1.0%ポイント)となった。そこで「どのような目的なら意識するか」と掘り下げると、昨年は3位だった「余剰資金の活用」が43.7%で最多に。余剰資金の活用と不動産のESG投資の親和性があると受け止めた不動産投資家が多いと見られる。

同研究所は、ESG対応を進めている物件の価格に対する影響を探るため、ESG対応物件の購入額の増額に対する意識を調査した。結果、「意識はするが、購入費用に差が出ることは許容できない」が最も多かったものの、27.6%と全体の四分の一程度に留まった。

増額の許容額については、「1~2%」が19.4%、「3~4%」が20.5%、「5~6%」が20.8%で、1~6%で全体の約60%を占めた。昨年との比較では「1~2%」が15.9%から19.4%に増えている一方、「9~10%」も3.6%から5.6%にアップした。

最後に、ESGを意識すると回答した人に、今後の不動産投資でどのような物件を意識かを聞いた。結果は「ワンルーム区分マンション」が42.2%で最多、昨年から大きく増えた。2位は「ファミリー向け区分マンション」の32.6%。一方、ホテル、事務所・店舗、商業施設、物流・倉庫、データセンターは1割に満たない結果となった。同研究所は「すでにオフィスなどの業務施設についてのESG対応は始まっているが、あまり知られていないか、コロナの影響で人々の興味がレジデンス分野にシフトしているのかもしれない」と推測している。

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