ブロックチェーンを使った金融商品『デジタル証券(ST)』とは?

今回は、様々なモノやサービス、事業を小口化・証券化できる『ST(セキュリティトークン)』事業を準備中のHash DasHから寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 暗号資産から生まれたブロックチェーンシステムの限りない展開
  2. デジタル証券(ST)とは
  3. ICOとの違い
  4. IPOとの違い
  5. 投資家から見たデジタル証券
  6. デジタル証券でできること

暗号資産から生まれたブロックチェーンシステムの限りない展開


もともとブロックチェーンはビットコイン(暗号資産)を稼働させるために作られた技術でした。サトシ・ナカモトと名乗る人物の論文では、「銀行などの金融機関を通さずに直接に決済取引でき、そして事実上非可逆的なコンピュータが取引の安全を担保する」旨が記され、ブロックチェーンはまさにその機能を発揮しています。

2008年のこの論文発表から14年、この技術は、ビットコインなどの暗号資産のみならず、世界中で様々なシーンに活用されています。例えば、食品の生産、流通、加工の経緯を記録してサプライチェーンの健全化に、アート、音楽などデジタルコンテンツを管理することで権利の確保に、住民票の登録や選挙の投票など行政事務にも―。

トレーサビリティ(追跡可能性)、データが改ざんされにくい構成、自動的に契約が完結するスマートコントラクトは、あらゆるビジネスシーンに展開が可能であろうと思われますが、投資、資産運用の世界にも非常に親和性の高いものです。金融商品とブロックチェーンの融合は「デジタル証券」という形で具現化しつつあります。

デジタル証券(ST)とは

デジタル証券とは、「ブロックチェーンを使って発行された有価証券」です。そもそも「有価証券」とは一定の財産を持っている権利を表す「証書」で、代表的なものとしては証券会社で取り扱っている株式や債券があります。デジタル証券は、コンピュータ上に書き込んだデータを証書とするもので、その証書を「セキュリティ・トークン=ST」といいます。

ブロックチェーン技術によりペーパーレス化した有価証券は、金融商品取引法で有価証券として認められ、金融庁の監督下で取り扱われることになりました(2020年5月より)。昨今、新聞等で、金融商品取引法に従ったSTは「デジタル証券」と称されています。

ペーパーレス化と法整備の結果、企業の資金調達シーンに劇的な変化をもたらすことになります。その他の資金調達方法と比較しながら、デジタル証券の特徴を見ていきましょう。

ICOとの違い


ブロックチェーンを使ってトークンを発行し、資金を調達する方法にICO(イニシャル・コイン・オファリング)があります。ICOは、事業やサービスの内容を記載した報告書(ホワイトペーパー)を公表すれば誰でもお金を集めることができます。2018年には全世界で2兆円を超える金額が調達されましたが、同時に詐欺的な案件も横行してしまいました。

デジタル証券も同じようにブロックチェーンを使ってトークンを発行し、資金調達をします。ICOとの大きな違いは、財産的価値の裏付けがあり、金融商品取引法の規制対象であることです。そのため厚い投資家保護が図られ、厳しい説明責任、運用状況の開示が義務とされ、金融庁の監督下で管理体制の厳重な証券会社のみが取り扱うことができます。これにより、詐欺的案件の発生は考えにくいものとなっています。

IPOとの違い


会社が株式を発行することで資金を調達することをIPO(イニシャル・パブリック・オファリング、新規株式公開)といいます。事業を行うためにお金を集めるという点、金融商品取引法下で金融庁の監督下での実施する点で、デジタル証券と同様です。

違いは、IPOの実施には非常に大きな負担が求められることです。証券取引所の上場基準を満たすために業績を維持しながら内部管理体制を構築し、膨大な申請書類の準備は数年の期間が必要です。一方、デジタル証券は事業開始前でも可能で、IPOほどは書類のボリュームや体制を要求されません。また、会社の資本を集めるだけでなく会社が保有する様々な資産を証券化できます。

投資家から見たデジタル証券

デジタル証券は、ICOとIPOの“いいとこ取り”といえる金融商品ですが、お金を提供する投資家側の“いいとこ”を整理してみましょう。

まずは、既に述べたように詐欺もしくは詐欺まがいの発行が行われない安心感でしょう。顧客保護を担保する方法の一つとして、デジタル証券の資産内容、運用状況は、金融庁が提供する「EDINET(エディネット)」で誰でも見ることができます。デジタル証券の募集中も、商品の詳細が書かれた有価証券届出書を同じサイトで確認できます。

また、ブロックチェーンの管理がもたらすメリットが享受できることが期待されています。従来の証券システムは大規模なサーバーが必要でしたが、ブロックチェーン管理では複数のノードにデータが保存されることになります。そのため、サーバーダウンによる取引停止がなくサーバー管理コストも低減されます。また、ブロックチェーンはデータの改ざんが困難であり、ハッキングなどのターゲットになりにくいといった特性もメリットの一つとなるでしょう。なお、証券取引所では一般に取引時間が限られていますが、ブロックチェーンでの取引は、基本的に24時間365日稼動することができます。

現段階で、これらのシステム的なメリットがすべて提供できているわけではありませんが、業界としてインフラの整備に努めています。

デジタル証券でできること

デジタル証券は汎用性が非常に高く、証券化できないモノやサービスはないのではないかとさえ思われるほどです。それというのも、GK-TK(合同会社-匿名組合)の仕組みを使うため、合同会社で保有したり事業にすることができるモノやサービスであれば、有価証券として組成することは可能だからです。ちなみに、GK-TKは従来から機関投資家や一部の富裕層向け商品の組成に使われてきた仕組みであり、これが一般投資家にも広く提供できるようになったことも、デジタル証券がもたらした画期的な進歩であると思います。

証券業界では、まずは財産価値が分かりやすい資産として不動産を小口化したデジタル証券が一般投資家向けにいくつか発行・募集されました。確かな現物資産を裏付けに一定の収入を見込むことができ、かつ、金利動向や経済指標の発表で価格が短期的に左右されない安定的な投資対象は、証券会社が一般投資家向けに取扱う金融商品としてはかつてないものでした。

不動産小口化商品を皮切りに、いままで機関投資家や一部の富裕層だけが入手可能だった金融商品が、一般の投資家向けにも募集され、日本国民の財産形成手段の選択肢が飛躍的に拡大することが望まれています。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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