サラリーマン大家になるメリット・デメリットは?リスクや損益通算の仕組みも

サラリーマン大家になるのは、投資額も大きくなり手間もかかるため、ハードルが高いと躊躇している方もいらっしゃると思います。

しかし、サラリーマン大家には、融資を受ける際に定期的に収入を得ていることが評価されやすく、給与所得と不動産所得の損益通算ができることがあるなど、専業大家にはない数多くのメリットもあります。

この記事では、サラリーマン大家になるメリットとデメリット、リスクや損益通算の仕組みについても解説していきます。

※記事内の税金・税率などは2022年4月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. サラリーマン大家になるメリット
    1-1.融資を受ける際にサラリーマンの属性を活用できる
    1-2.業務の大部分を管理会社へ委託できる
    1-3.一定規模の資産性収入を得ることができる
    1-4.団体信用生命保険に加入することができる
    1-5.給与所得と不動産所得の損益通算ができる場合がある
  2. サラリーマン大家になるデメリットとリスク
    2-1.収益物件の調査やシミュレーションに手間をかけることが難しい
    2-2.収益物件の運営や収支管理にコストや手間がかかる
    2-3.修繕費リスク、空室リスク、金利上昇リスクなどを負担する必要がある
    2-4.収益物件の出口戦略を検討する必要がある
    2-5.本業の勤務に影響を及ぼすおそれがある
  3. 不動産所得が赤字である場合の損益通算の仕組み
  4. まとめ

1.サラリーマン大家になるメリット

サラリーマン大家になるメリットとして、不動産投資ローンの融資審査で給与収入があることが評価されやすいという点があります。さらに、家賃収入が給与収入のリスクヘッジになるというメリットなどがあります。

1-1.融資を受ける際にサラリーマンの属性を活用できる

不動産投資では、投資金額が大きいため、融資を受けて収益物件の購入をすることがほとんどです。

金融機関による不動産投資ローンの融資審査においては、収益物件の収益性や資産性のほか、購入者の属性も審査対象となります。家賃収入と給与収入を併せて返済原資の評価がなされるため、一定額以上の給与収入があるサラリーマンであれば、比較的容易に融資を受けることが可能になるでしょう。

給与収入がない専業大家と比較して、サラリーマン大家は融資を受ける際には、サラリーマンの属性を活用できる分のメリットがあると言えます。

1-2.業務の大部分を管理会社へ委託できる

不動産投資では、運用していく過程で、入居者の募集、入居者対応・集金管理、物件の修繕・原状回復などの運営業務が発生しますが、これらの業務は不動産管理会社などの外部業者に委託することができます。

本業が忙しいサラリーマンの方であっても、ほとんど手間をかけることなく運用することが可能であるということは、サラリーマンの方が不動産投資を検討するうえで大きなメリットの一つです。

ただし、物件の大規模修繕や売却などの重要な意思決定は、オーナーがおこなう必要があります。管理会社や不動産投資会社のサポートを得ることは可能ですが、最終的な投資判断やその責任はオーナーに帰属することに注意しておきましょう。

1-3.一定規模の資産性収入を得ることができる

サラリーマンの給与収入は、人が労務を提供することの対価である勤労性の収入です。人の労働することができる時間や体力には限度があり、病気や怪我、老化などで労働できなくなるリスクもあります。

これに対して、不動産収入は、資産を運用することによって得られる資産性の収入です。不動産投資では、勤労性収入と同程度かそれ以上の規模の資産性収入を得ることができます。勤労性収入のリスクを補い、複数の収入源を確保することに役立つといえるでしょう。

1-4.団体信用生命保険に加入することができる

収益物件を購入するために金融機関で融資を受ける際、団体信用生命保険に加入することが多いといえます。

団体信用生命保険とは、金融機関等から融資を受けている債務者が、死亡したり高度障害状態になったりしたときに、生命保険会社が債務残高相当分の保険金を金融機関等に支払い、保険金を債務の弁済に充てる制度です。

団体信用生命保険に加入することで、不動産投資で融資を受けていて、本人が死亡等の状態になったとしても、遺族に借入のない状態で収益物件を残すことができます。

【関連記事】不動産投資ローンの団体信用生命保険、仕組みや種類は?注意点も

1-5.給与所得と不動産所得の損益通算ができる場合がある

不動産投資の家賃収入は、不動産所得として毎年確定申告をおこなって、その収入にかかる所得税と住民税を納めます。このとき、不動産所得は「不動産収入―必要経費」によって算出されますが、必要経費には収益物件の建物の減価償却費が含まれます。

中古物件の耐用年数は簡便法によるため、実際に建物を利用できる期間と比較して短く、毎年の減価償却費が大きくなりやすい傾向があります。

減価償却費が大きくなり不動産所得がマイナスになると、給与所得と損益通算をおこなって所得税のかかる課税所得が減る場合もあります。このようなケースでは、給与所得のない専業大家と比べて、税制上のメリットを受けやすいというメリットがあります。

2.サラリーマン大家になるデメリットとリスク

サラリーマン大家になるデメリットとしては、手間がかかることが挙げられます。オーナーは、購入判断や収支管理、運用や売却の判断をおこなう必要があります。場合によっては、本業に影響が生じるおそれもあるでしょう。

また、不動産投資には、空室リスク、金利上昇リスク、修繕リスクなどの様々なリスクが存在することもデメリットといえます。

2-1.収益物件の調査やシミュレーションに手間をかけることが難しい

不動産投資は収益物件の家賃収入を運用の主な収入源とするため、購入時には物件の資産性や収益性について慎重に調査を行うことが必要です。

不動産の資産性については、主に土地の路線価と建物の建築価格から判断します。一方で、収益性は周辺地域の賃貸需要と利回り相場から判断します。

融資を受けて購入する場合は、融資審査の際に金融機関がこのような調査をおこないますが、オーナー自身も経営者として、キャッシュフローがいくらぐらいになるか、慎重にシミュレーションをして購入判断をしたいといえます。

サラリーマン大家の場合は本業があるためにこのような収入物件の調査や収支シミュレーションに手間をかけることが難しいというデメリットがあります。エリアの不動産動向に詳しい不動産投資会社のサポートを受けるなど、工夫が必要になってきます。

2-2.収益物件の運営や収支管理にコストや手間がかかる

不動産投資では、家賃収入を得ていくために収益物件を運営する必要があります。運営の過程では、入居者の募集、入居者対応・集金管理、物件の修繕・原状回復などの様々な業務が発生します。

管理会社に委託する場合には、管理手数料などのコストがかかります。また、管理会社に委託する場合であっても、重要な意思決定はオーナーがおこなう必要があります。

また、不動産投資の収支管理は最低限オーナーが行わなければなりません。オーナーの業務として、収支がマイナスになっていないかどうか、そして想定通りの運用ができているかどうかを定期的に確認する必要があるでしょう。

運用実績が想定を下回っている場合はその原因を分析し、投資の収支を改善するために、何らかの対策を講じる意思決定や手続きをおこなっていくことになります。運営方針については管理会社のサポートを受けることも可能ですが、最終的な判断は投資家自らが行う必要があるのです。

2-3.修繕リスク、空室リスク、金利上昇リスクなどを背負う必要がある

不動産投資では、運用収入面からもリスクがあります。空室リスクや陳腐化による家賃下落リスクがあります。家賃収入は、新築時から築20年程度までに20%下落するケースもあり、特に注意しておきたいポイントです。

また、融資を受けて購入する場合は、金利上昇によってキャッシュフローが圧迫されるリスクもあります。

さらに、建物一棟を所有する形式の不動産投資では、外壁塗装や共用の給排水設備などの修繕費用のすべてをオーナーが負担する必要があります。修繕費が大きくなり、修繕費の平準化ができないため、キャッシュフローが悪化するリスクが高くなります。

万一、災害が生じたときには、建物が損壊したり、家賃収入がなくなったりするリスクもあります。不動産投資をおこなっていくにあたっては、このような付随するリスクを把握し、適切に対応していく必要があるといえます。

2-4.収益物件の出口戦略を検討する必要がある

不動産投資をおこなっていくにあたっては、利益を確定するために、収益物件の出口戦略を検討する場合があります。

出口戦略は、投資目的や収益物件の種類などに応じて異なります。相続を行うのか、どのようなタイミングで売却をするのか、オーナーそれぞれが自身で考える必要があります。

例えば、投資目的が資産形成にある場合には、インカムゲインとキャピタルゲインのトータル収益を最大化する戦略を採ることになります。このようなキャピタルゲインの収益を考慮するには、物件の購入前から常に出口戦略を検討する必要があります。

また、出口戦略はそのまま売却する方法に限られません。収益物件が一棟物件である場合、更地にして売却したり、新築建物を再建築して再投資したりする出口戦略も考えられます。

出口戦略を検討するには不動産投資の知識を蓄えたり、市場調査などの手間がかかります。ややテクニカルな投資判断をする必要がある点は、本業のあるサラリーマンにとってはデメリットであるといえるでしょう。

2-5.本業の勤務に影響を及ぼすおそれがある

サラリーマンが不動産投資をおこなう場合、本業の勤務にも、手間や社内規程などの観点から影響が生じるおそれがあります。

運用における重要な意思決定や手続き、収支管理には、オーナー自身が関わる必要があります。投資規模が大きくなったり、投資目的が資産形成にあったりする場合、意思決定にオーナーが関わる場面が比較的多いといえるでしょう。

業務量が増えると、本業の勤務に影響を及ぼすおそれがあります。また、勤務先の会社の副業禁止規定に触れる可能性もあるので注意が必要です。

3.不動産所得が赤字である場合の損益通算の仕組み

不動産所得は、所得税法上、総合課税所得というグループに分類されます。総合課税所得は、そのグループに属する他の所得と合算し、累進税率によって所得税が計算されます。総合課税所得のグループ内では損益通算ができることになっています。(※参照:国税庁「所得税法(基礎編)令和4年度版」)

不動産所得はその年中の総収入金額から必要経費を控除した金額であると規定されています。必要経費に計上できる支出は総収入金額を得るために直接要した費用やその年に生じた期間対応の経費に限られていますが、建物部分の減価償却費も計上可能なため、会計上の赤字が大きくなりやすいという特徴があります。

これらの規定された必要経費が総収入金額を上回り、不動産所得が会計上で赤字となった場合は、同じ総合課税所得である給与所得や事業所得、雑所得などと損益通算して課税所得を計算することができます。

つまり、不動産所得の赤字をサラリーマンの給与所得と損益通算することで、軽税率適用段階まで所得を減らすことができれば、税率差分が手元に残ることになります。

ただし、減価償却費が計上できる期間は不動産の法定耐用年数内に限定されていることや、売却時には不動産の取得費から差し引く必要があります。損益通算を主な目的とした不動産投資を行っていると、これらの税効果が期待できなくなった時にキャッシュフローが合わず、運営が困難になることも想定されるため注意が必要です。

まとめ

サラリーマンが不動産投資をおこなうのは、融資付けに属性を生かすことができ、家賃収入や土地の資産がリスクヘッジになるというメリットがあります。

他方で、オーナーは運用・投資判断に関する業務をおこなう必要があり、手間がかかります。不動産投資には様々なリスクがあることにも念頭に置いておきたいといえます。

投資の収支には定期的に注意を払い、手元資金を充分に確保して投資をおこなうようにしましょう。また将来の予測もたて、出口戦略も検討しておくようにしましょう。

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