NISAとつみたてNISAを切り替える方法は?メリット・注意点も
「一般NISAを始めたが、つみたてNISAに変更したい」などと考える人もいるでしょう。一般NISAとつみたてNISAの勘定の変更は、条件を満たせば可能です。この記事では、一般NISAとつみたてNISAを切り替えるメリットや手続きについて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年4月時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 一般NISAとつみたてNISAの違い
1-1.2024年からは一般NISAは新NISAへ - 一般NISAをつみたてNISAに切り替えるメリット
2-1.非課税枠が余りにくくなる
2-2.長期の非課税運用が可能になる
2-3.商品選択が簡単になる
2-4.買付タイミングに迷わなくなる - つみたてNISAを一般NISAに切り替えるメリット
3-1.投資信託・ETF以外の商品に投資できる
3-2.自分の判断で投資できる
3-3.余裕資金を有効活用できる - 一般NISAとつみたてNISAを切替える方法
4-1.同一金融機関での切替え
4-2.金融機関を変更する場合 - 一般NISAとつみたてNISAを切替えるときの注意点
5-1.初回の買付をするとその年の変更はできない
5-2.保有商品を新口座に移管できない
5-3.一般NISAからつみたてNISAに変更するとロールオーバーできない - まとめ
1.一般NISAとつみたてNISAの違い
NISA(少額投資非課税制度)は、非課税限度額の範囲内で買い付けた金融商品からの運用益に対して非課税になる制度です。NISAには「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類があり、このうち一般NISAとつみたてNISAは年単位で選択が可能です。
一般NISAとつみたてNISAの概要は以下のとおりです。
項目 | 一般NISA | つみたてNISA |
---|---|---|
非課税で保有できる期間 | 5年 | 20年 |
年間の非課税限度額 | 120万円 | 40万円 |
投資対象 | 上場株式・ETF・株式投資信託・REITなど | 長期・分散・積立投資に適した一定の投資信託 |
買付方法 | 通常買付・積立投資 | 積立投資のみ |
NISA・つみたてNISAとも対象者は20歳以上の国内在住者ですが、2023年からは18歳以上が利用できるようになります。
つみたてNISAの投資対象は、主に以下のような条件をもとに金融庁が厳選した投資信託・ETFです。
- 販売手数料が無料
- 信託報酬が一定水準以下
- 毎月分配でない
- 信託期間が無期限または20年以上
1-1.2024年からは一般NISAは新NISAへ
現行の一般NISAは2023年までで終了し、2024年以降は1階部分の積立投資を必須とする2階建ての制度に改正されます。新NISAの非課税投資期間は、現行と同様に5年です。現行の一般NISAと異なる部分は以下の点です。
年間の非課税限度額 | 2階部分:102万円 1階部分:20万円 |
投資対象 | 2階部分:現行の一般NISAの対象から一部を除いた商品 1階部分:つみたてNISAと同様 |
買付方法 | 2階部分:通常買付・積立投資 1階部分:積立投資 |
新NISAとつみたてNISAも年単位での切り替えが可能です。
2.一般NISAをつみたてNISAに切り替えるメリット
現在、一般NISAで非課税運用をしている人がつみたてNISAに変更すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
2-1.非課税枠が余りにくくなる
一般NISAからつみたてNISAに変更すると、年間の非課税限度額を余らせずに使い切りやすくなります。一般NISAの年間の非課税限度額は120万円で、収入の少ない若年層の方などには多すぎる場合もあります。必ずしも非課税枠を使い切る必要はありませんが、NISAでは残った分を繰り越せないため、できるだけ使ったほうが有利です。
つみたてNISAの非課税限度額は年間40万円で、月額約33,000円です。運用資金が少なめの人は、できる範囲でつみたてNISAを長く続けるほうが資産形成につながりやすくなります。
2-2.長期の非課税運用が可能になる
つみたてNISAの非課税期間は最長20年と、一般NISAより長期の非課税運用が可能です。一般NISAもつみたてNISAも元本保証ではありません。しかし、運用が長期にわたると値動きの振れ幅が抑えられ、収益の安定が期待できます。
また、長期運用では、複利効果で効率的に資産を増やせます。同じ元本に利益が生じる単利に対し、複利は利益を元本に加えて運用していきます。元本の増加とともに利益も増えるのが複利効果です。
100万円を年10%で20年運用したと仮定した場合、20年後の元利合計は単利では300万円ですが、複利では673万円になります。単利と複利の差は期間が長いほど大きくなるため、つみたてNISAのほうが複利効果を得やすいというわけです(必ずしも利益が大きくなるというわけではありません)。
2-3.商品選択が簡単になる
一般NISAの投資対象は、投資信託以外にも上場株式やREITなど多岐にわたります。自分に適した商品が明確な、投資経験のある人にとっては、特に一般NISAは魅力ある制度になりやすいと言えます。
しかし、自分で適切な金融商品を選ぶことが難しい投資初心者の方にとっては、選択肢が多いことは必ずしもメリットにはならないのです。
つみたてNISAで買えるのは206本の投資信託と7本のETFであり、各金融機関ではその中の一部を取り扱います(2022年4月26日現在)。そのため、一般NISAに比べるとあまり迷うことなく商品を選べるでしょう。
2-4.買付タイミングに迷わなくなる
つみたてNISAでは、積立の設定をすると買付は自動的に行われます。そのため、買付のタイミングに悩む必要はありません。また、毎回の注文の手間もかかりません。
通常の買付の場合、安く買って高く売るための投資判断が必要です。しかし、そのような判断は経験者にとっても簡単ではありません。つみたてNISAは初心者や一般NISAでの投資が上手くいかない人でも、取り組みやすい投資といえます。
なお、一般NISAでも積立投資は可能です。
3.つみたてNISAを一般NISAに切り替えるメリット
反対に、つみたてNISAを一般NISAに変更するメリットを解説します。
3-1.投資信託・ETF以外の商品に投資できる
つみたてNISAの投資対象は主に株式投資信託で、上場株式やREITには投資できません。つみたてNISAをしていて上場株式などで非課税投資をしたい人は、一般NISAに切り替えるのも選択肢となります。
また、一般NISAでは積立投資も可能です。非課税枠の一部を積立投資に利用し、残りで通常の買付を行う方法もあります。一般NISAでの株式投資などで買付けた銘柄が大きく値上がりすると、非課税投資のメリットも大きくなります。
値上がりの期待できる銘柄に投資していきたい人は、一般NISAへ勘定を変更するとよいでしょう。
3-2.自分の判断で投資できる
一般NISAは積立投資もできますが、取引判断を自分で行う通常の買付も可能です。
つみたてNISAは積立設定を完了すると買付が自動的に行われるため、買付タイミングなどの判断が必要ありません。しかし、投資経験者にとってその点は、物足りなく感じるケースも考えられます。購入する銘柄選定や売買タイミングの判断をすべて自分で行い、運用益を最大化したい人であれば、一般NISAで投資したほうがよいでしょう。
3-3.余裕資金を有効活用できる
一般NISAの1年間の非課税枠は120万円とつみたてNISAより大きいため、余裕資金を運用したい人に適しています。
NISAもつみたてNISAも少額からの投資は可能ですが、まとまった資産を作るには資金は多いほうが望ましいといえます。また、非課税枠はできるだけ使い切ったほうが有利です。
つみたてNISAをやっているが多額の預貯金などがあったり、年間120万円以上の投資ができたりする人は一般NISAに切り替えるのも一つの方法です。限度額いっぱいに非課税投資ができれば、より大きな資産形成が期待できます。
4.一般NISAとつみたてNISAを切替える方法
ここでは、一般NISAとつみたてNISAの勘定を変更する手続きについて解説します。
4-1.同一金融機関での切替え
同じ金融機関で 一般NISAとつみたてNISAを変更するのは簡単です。
- 金融機関に必要書類を請求
- 書類を金融機関に提出
一般NISAとつみたてNISAの勘定を変更する書類は、「非課税口座異動届出書」です。インターネットで手続きが完結する金融機関もあり、その場合、わずかな所要時間で手続きが完了します。
4-2.金融機関を変更する場合
一般NISAとつみたてNISAの切り替えとともに、金融機関の変更も可能です。「銀行から証券会社に変更したい」などの希望がある人は、同時に手続きをするとよいでしょう。
- 変更前の金融機関から「金融商品取引業者等変更届出書」を取り寄せ、必要事項を記入して提出
- 変更先の金融機関に口座開設
- 変更前の金融機関から「勘定廃止通知書」を受け取る
- 変更先の金融機関に「非課税口座開設届出書」を上記の「勘定廃止通知書」とともに提出
非課税口座開設届出書に一般NISA・つみたてNISAを記入する欄があるので、希望する勘定を選択します。金融機関変更を伴う手続きには税務署の確認が入るため、手続き完了までに約1カ月かかります。
5.一般NISAとつみたてNISAを切り替えるときの注意点
一般NISAとつみたてNISAの勘定変更には、いくつかの注意点があります。以下にて押さえておきましょう。
5-1.初回の買付をするとその年の変更はできない
一般NISAとつみたてNISAの勘定変更ができるのは、1月1日から12月31日までの1年間に1回だけです。その間に買付をしてしまうと、12月31日までは勘定や金融機関の変更はできません。
NISA口座の勘定や金融機関変更ができるのは、前年10月1日から当年の9月30日までです。その年に非課税投資をしてしまった場合、10月以降に翌年から変更する手続きを行うことになります。
5-2.保有商品を新口座に移管できない
一般NISAとつみたてNISAの勘定を変更した場合、それまで保有していた商品を新しい口座に移管できません。ただし、買付けた口座で非課税のまま保有を継続できます。一般NISAからつみたてNISAに変更した人でも、一般NISAで買付けた商品を最長5年間は保有できるというわけです。
5-3.一般NISAからつみたてNISAに変更するとロールオーバーできない
ただし、一般NISAからつみたてNISAに変更すると、ロールオーバーができなくなることに注意が必要です。
一般NISAでは5年の非課税期間終了後に、翌年の非課税枠に運用商品を移管できる「ロールオーバー」という仕組みがあります。ロールオーバーによって非課税期間がさらに5年延長できます。しかし、ロールオーバーは現行の勘定が一般NISAで、しかも同一の金融機関でなければなりません。
つみたてNISAに変更後に以前の一般NISAをロールオーバーするならば、前年10月1日から翌年の金融機関と勘定を変更する必要があります。
まとめ
NISAやつみたてNISAを始めたら、なるべく勘定は変更しないほうが無難です。しかし、始めた非課税投資が自分に合わなかったり、他の投資手法に変えたくなったりした場合には、切り替えも可能なことは知っておきましょう。ただし切り替えはいつでもできるわけではないので、タイミングや手続きについて事前の確認が必要です。時間に余裕を持って実行しましょう。
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