2022年6月RBA・ECB・5月米国CPIは?要人発言や利上げ見通しを解説
2022年6月現在、引き続き世界各国の主要中銀の引き締めの動向が相場変動のメインテーマとなっています。多くの中銀が会合毎にインフレ見通しを引き上げ、スタンスを引き締め寄りにシフトしてきています。
また、景況感の悪化で引き締めペースが落ち着くのではないかと思われていたFRBも、ウォラー理事のタカ派発言から再び急速な利上げを織り込みつつある中、注目の5月CPIが発表となります。今回の数字は6月14日、15日に行われるFOMCのベースとなってくるため、殆どの参加者が今回のCPIをきっかけに動き出そうと待ち構えています。
参考:ブルームバーグ「ウォラーFRB理事、今後数回の会合での0.5ポイント利上げ支持」
今回は、RBAとECBの金融政策決定会合及び米5月CPIについて詳しく解説していきます。
※本記事は6月6日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 6月RBA政策決定会合
1-1.前回5月会合の内容
1-2.最近の経済状態
1-3.今回6月会合の予想
1-4.発表後の反応予想 - 6月ECB政策決定会合
2-1.前回4月の内容
2-2.最近の経済状況
2-3.今回6月会合の予想
2-4.発表後の反応予想 - 米5月CPI
3-1.前回4月CPIの内容
3-2.5月FOMCでのインフレ見通し
3-3.今回5月CPIの予想
3-4.発表後の反応予想
1.RBA政策決定会合
1-1.前回5月会合の内容
前回5月会合では、0.35%へと予想を上回る0.25%幅の利上げが決定され今後の利上げについても言及されました。
ロウ総裁は、引き続き豪州のインフレ見通しは他の国ほど深刻ではないとしながらも、インフレ心理が大きく動かないよう、先手を打って利上げすると、説明しています。
参考:ブルームバーグ「豪中銀が予想上回る利上げ、政策金利0.35%-追加の引き締め示唆」
議事録では、0.15%でなく0.25%の利上げに踏み切った理由として、歴史的に「at least」0.25%の利上げをしてきたためと説明しています。「usually」ではなく「at least」とし、また、0.4%の利上げも検討されたということが明らかになりました。全体としてタカ派に傾倒していることが確認できます。
参考:ブルームバーグ「豪中銀は利上げ幅巡り3つの選択肢を検討、5月会合で-議事要旨」
1-2.最近の経済状況
第1Qの賃金指数は前期比+0.7%、前年比+2.4%と市場予想よりは若干弱かったものの、緩やかに改善しています。しかし、RBAの目標が+3~4%であり、今後急激にタカ派になる可能性は下がりました。
4月雇用統計は前月比+0.4万人と市場予想を若干下回りました。内訳を見ると、フルタイムが+9.24万人、パートタイムがが▲8.84万人ということで、フルタイム雇用者数が増加しています。
また、失業率も前月と変わらず3.9%と1974年以来の最低水準を維持していることから、雇用市場は引き続き堅調であることが示されました。
1-3.今回6月会合の予想
市場は、少なくとも0.25%政策金利を引き上げて0.60%とすることは織り込んでいます。一部では0.4%の利上げの可能性も予想されています。第1QのGDPが予想以上の結果となったからです。
オーストラリアでは、1月に新型コロナ・オミクロン株の感染拡大による経済の減速、2月末~3月にかけてはオーストラリア東部での大雨による洪水被害が起こりました。その影響もあって、同時期の賃金指数などは予想ほど伸びていなかったため、GDPの伸びも控えめな予想となっていました。
しかし、GDPは小幅ながら予想を上回る結果となり、内訳をみると、家計の消費の伸びが堅調に増加していることがわかります。インフレによる価格上昇の影響もあるものの、購買意欲が減速していないことを示しています。
1-4.発表後の反応予想
ロウ総裁とケント総裁補佐は共に中立金利は2~3%の間としており、政策金利は2022年末までに1.75%、2023年末までに中立金利に到達する見通しです。しかし既に市場は2022年末で2.72%の織り込みとなっています。
現在出てきている指標からは、中立金利の変更はなさそうなので、注目は、RBAのインフレと利上げ見通しになります。市場織り込み以上となればタカ派サプライズですが、その可能性は低いでしょう。
ただ、少なくとも前回以上の利上げ回数は織り込まれるはずなので、全体としてタカ派トーンになりやすく、若干のAUD買いイベントと予想します。
参考:ブルームバーグ「豪中銀が予想上回る利上げ、政策金利0.35%-追加の引き締め示唆」
2.6月ECB政策決定会合
2-1.前回4月会合の内容
資産購入プログラム(APP)を4月:400億ユーロ、5月:300億ユーロ、6月:200億ユーロの減額ペースは変えずに7月から9月のどこかで終了するとの見方を示しました。一部では、APP終了の前倒しが期待されていたため、ハト的な結果でした。
また、主要金利の調整も市場ではAPP終了と同時に利上げという期待感があったものの、APP終了後の一定期間後に行われ、穏やかなものになると繰り返しました。こちらについても市場の期待を否定する形となりました。
ただ、「sometime after」は1週間から数か月を意味するとされています。仮に1週間を採用するのであれば、7月に前半にAPPを終了し後半から利上げ開始の可能性は残された形となっており、3月よりはタカに傾いていました。
ラガルド総裁は次回6/9の会合でAPP終了及び将来の利上げ方針について決定すると述べました。
参考:ブルームバーグ「ECB、資産購入終了時期6月明示か-インフレリスク高まったと総裁」
2-2.最近の経済状況
4月のECB以降、ECB高官から続々と利上げに向けてのメッセージが出てきています。当初は利上げだけでしたが、いつの間にか7月の最初の利上げはほぼ確定的となり、更に利上げ幅まで0.5%に言及する高官が現れました。
ラガルド総裁も当初は、債券購入プログラム(APP)終了後、数週間内の7月の利上げの可能性を示唆していました。
参考:ブルームバーグ「ラガルド総裁も7月利上げ示唆、債券購入終了後「数週間」あり得る」
その後、資産購入プログラム(APP)での純購入は第3Q(7-9月)の早い段階で終わり、フォワードガイダンスに沿って7月の理事会で金利を引き上げ、第3Q末までにマイナス金利を脱却できる可能性が高いことを示唆しました。事実上7月と9月の理事会で0.25%ずつ金利を引き上げ、現在▲0.5%の中銀預金金利をゼロまで戻す計画です。
今回、ラガルド総裁のブログでの発表となりましたが、恐らくECBメンバー内である程度合意は取れた上での発信だと思われます。
参考:ブルームバーグ「ECB、9月末までにマイナス金利脱却の公算大-ラガルド総裁」
また、ハト派のレーン主席エコノミストがラガルド総裁と同じく7月と9月に0.25%ずつの利上げを示唆しました。
参考:ブルームバーグ「ECBレーン理事、7月と9月の0.25ポイント利上げ「基準のペース」」
ドイツ5月CPIは、前年比+7.9%と前回の+7.4%から伸びが一段と加速しました。スペインも+8.7%と上昇したものの、5月のユーロ圏CPIも前年比+8.1%と1997年の統計開始以来最高を更新しました。
ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給不安からエネルギーや食料品の他幅広い項目で値上がりが確認できました。ECBの利上げ期待を正当化する内容であるものの、ECB内では0.25%ずつの緩やかな利上げと0.5%の大幅利上げとで意見が分かれている状態です。引き締めによる景気後退リスクも勘案する必要があります。
2-3.今回6月会合の予想
今年は7月・9月・10月・12月の4回残っているものの、市場では全ての会での0.25%の利上げと10月までに0.5%の利上げが一度あり、年末までに0.61%に到達すると織り込まれています。
今回は、APP終了と同時に具体的な時期と引き上げ幅には言及せず、第3Qに利上げを実施すると発表すると予想します。ECB内にはタカ派理事も沢山いて0.5%の利上げを支持している可能性があるものの、まだ引き締めによる景気後退リスクについて全体のコンセンサスは取り切れていないと考えます。
2-4.発表後の反応予想
注目点は、ラガルド総裁が0.5%利上げにどこまで踏み込んだ見解を示すのか、これまで以上にタカ派な姿勢を強めているのかといった部分でしょう。
現時点ではECBは中立金利を1~2%の間という見解です。仮に据え置かれたとして、どの時点で中立金利を越える引き締めに移行するのかどうかが重要です。
6月は3か月に一度のマクロ経済予想も発表されるものの、2年後のインフレ見通しが2%を超えるのかどうかにも注目です。米国よりもインフレのピークは後ろ倒しとなっており、もし長期的に2%を超えると予想するのであれば、それは金利引き上げの効果が不足し需要が維持されることを意味します。市場での織り込みが進みEURは買われる可能性はあるものの、低いと予想します。
3.米5月CPI
3-1.前回(4月)の内容
4月CPIは予想前年比+8.1%を上回る+8.3%となりました。前月比でも+0.3%と引き続き力強い伸びを見せております。中身を見ても、航空運賃を筆頭に、食料品・サービス・家賃・新車価格など幅広い分野でインフレが落ち着いていないことが示されました。
一方でベース効果剥落の影響もあり、3月の前年比+8.5%という数字は越えられなかったということで、ピークを付けたという見方もできます。次回6月10日発表のデータを見るまでは判断しにくいです。
3-2.5月FOMCでのインフレ見通し
声明文とパウエル議長の発言を分析すると、基本的に米国経済は堅調で、需要も相応にあるものの、いまだに供給制約が解消できておらず、これらの需給不均衡を反映してインフレが高進してしまっているという認識です。
また労働市場の環境が改善しており、賃金上昇圧力が強すぎることが逆に物価上昇にとって問題となってきているため、継続して利上げをする必要があるという判断です。
FRBとしては、景気後退をさせずに物価の安定を取り戻せると考えている様子です。早期に物価を元に戻すことが最善ということから、前例のないペースでの利上げという形になっているのでしょう。
参考:ブルームバーグ「FOMC、積極的利上げ実施すれば年内の政策に柔軟性-議事要旨」」
参考:ブルームバーグ「パウエル議長、「明確で納得できる」インフレ後退まで利上げ継続」
3-3.今回5月CPIの予想
前年比+8.2%と予想されています。4月の+8.3%、3月の+8.5%を見比べると、もし予想通りとなればインフレは3月にピークを付けていた可能性が濃厚となります。
今後のインフレのデータを見なければならないものの、少なくとも6月と7月に0.5%利上げを実施したのち、9月も0.5%という確率は多少下がるでしょう。
3-4.発表後の反応予想
9月以降の米国の利上げについて、ウォラーFRB理事発言などをきっかけに、6月・7月と同じく0.5%利上げを行うという期待が高まっています。雇用は堅調で若干落ち着いたとはいえ賃金は高水準が維持されています。
エネルギー・食料品価格には大きな減速は見られていません。CPIは高水準が維持されるというのが大方の予想となっています。
ただ、今回のCPIの結果を見てからFOMCの予想に繋げたいと考える参加者が殆どでしょう。どちらかというと米金利上昇とUSD買い方向にポジションは傾いているものの、そこまで大きくポジションが偏っているということはありません。
今回の数字を受けて素直に反応すると予想します。具体的には、USD買いサイドは3月の+8.5%を超えている時、USD売りサイドは8%を下回った時、に大きく反応すると予想します。
参考:ブルームバーグ「ウォラーFRB理事、今後数回の会合での0.5ポイント利上げ支持」
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