2022年6月のFOMC・BOE予想は?雇用統計や利上げ見通しについて解説

2022年6月現在、相場を動かすメインテーマが中銀の金融政策の行方となっています。市場は中銀の見通しよりかなり先行して利上げを織り込んでいるものの、経済指標を確認しながら、市場織り込みに近い水準まで利上げができそうな国が選好される展開となっています。

一方で、引き締める中銀が明らかに増えたことから、長い間緩和マネーが流入していた株式市場は上値が重くなっています。

今回は、FRBとBOEの金融政策決定会合について詳しく解説していきます。

※本記事は6月13日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. FOMC
    1-1.前回5月FOMCの内容
    1-2.直近の経済状況
    1-3.今回6月FOMCの予想
    1-4.発表後の反応予想
  2. BOE政策決定会合
    2-1.前回5月BOE政策決定会合の内容
    2-2.直近の経済状況
    2-3.今回6月BOE政策決定会合の予想
    2-4.発表後の反応予想

1.FOMC

1-1.前回5月FOMCの内容

事前予想通りとなる22年ぶりの0.5%幅での利上げと、6月から月間最大950億ドルでの量的引き締め(QT)の開始を決定しました。0.75%の利上げを主張するかと思われていたブラード氏も反対しませんでした。

パウエル議長は、利上げについては今後数回の会合(特に6月と7月)で0.5%利上げが議論されるべきとの考えが広く共有されており、0.75%の利上げについては積極的でなく、今後の指標次第という姿勢を維持しました。

期待されていたほどのタカ派のトーンではなかったため、米金利は低下・株が上昇・リスクオンのUSD売りとなりました。

また、中立金利についても2~3%を想定しており、3月FOMCで発表された2.375%から引き上げられませんでした。

議事録は、直近のパウエル議長の発言とほぼ一致する内容でした。緩和政策の解除を早めれば、年内において引き締めの効果などを確認し、状況次第ではその後引き締めスピードを抑制する可能性にも言及していることが明らかになりました。

参考:ブルームバーグ「FOMC、積極的利上げ実施すれば年内の政策に柔軟性-議事要

1-2.直近の経済指標

5月NY連銀景況感指数が市場予想+15に対し▲11.6とコロナショック時の2020年3月に次ぐ下落幅となりました。

一方、4月の小売りは前年比+0.9%となり、前月分も+0.5%から+1.4%と大幅に上方修正されました。主な項目では自動車・オンライン小売・フードサービス・電化製品といったところです。前月と比較して上昇した項目も多く、引き続き堅調な消費意欲が確認できます。

4月の鉱工業生産も前月比+1.1%と予想の+0.5%を大きく上回りました。自動車生産が過去2か月上昇しており、供給問題が解決しつつある可能性があります。設備稼働率も79%と前回より上昇しています。

パウエル議長は明確にインフレが後退していることが分かるまで利上げを継続すると改めて表明しました。現在は6月と7月に0.5%ずつ利上げをすることがほぼ織り込まれているものの、その後も状況次第では0.5%幅での利上げの可能性に言及し、これまでのスタンスから若干引き締め姿勢が強まりました。

また多少の痛みも伴うことも認めながらも現在であれば、その痛みに耐えられる良好な環境にあるという認識を示しました。

参考:ブルームバーグ「パウエル議長、「明確で納得できる」インフレ後退まで利上げ継続

一方で、最もタカ派と思われるブラード総裁からは目先のタカ派スタンスは変わっていないものの、インフレ抑制の条件付きながら2023年の利下げの可能性に言及がありました。

参考:ブルームバーグ「ブラード総裁、年内に3.5%に利上げを-23年か24年に利下げも

またもう一人タカ派のボスティック総裁からも、9月に一時利上げを停止する可能性が示されました。これらの発言により、これまでの過度な利上げ織り込みが剥落し金利は低下しました。

参考:ブルームバーグ「アトランタ連銀総裁、9月の米利上げ一時停止「理にかなう」可能性

しかし、ウォラーFRB理事が、数回の会合で更に0.5%の利上げを支持し、必要な限り0.5%幅の利上げが好ましいとのタカ派なコメントを出したことで、再度利上げ織り込みは加速しました。

参考:ブルームバーグ「ウォラーFRB理事、今後数回の会合での0.5ポイント利上げ支持

5月のCB消費者信頼感指数は106.4と予想の103.6は上回ったものの、2月以来の低水準となりました。1年先の期待インフレは7.4%と高水準にとどまり、消費者マインドへの重石となっている様子です。

こうした状況下、貯蓄の取り崩しやクレジットカードの利用拡大を余儀なくされるケースが増えてきています。雇用に関しては十分にあるという回答は51.8%に低下したものの、今後6カ月の労働市場見通しは総じて楽観的な水準になっています。

5月のISM製造業指数は前月比+0.7の56.1と悪化予想に反して上昇しました。企業の楽観的なコメントと悲観的なコメントの比率が5対1となっており、需要の見通しは引き続き強そうです。一方で、雇用指数は49.6と2020年以来初めて50を下回りました。

4月のJOLTS統計では、解雇件数は過去最低を記録し、求人件数は1140万人と高水準を維持したものの、前月比▲45.5万人となりました。内訳を見るとサービス業全般で求人が減少しています。

5月の雇用統計では、非農業部門の就業者数は市場予想を上回る前月比+39万人、失業率は3.6%となりました。いずれもコロナショック前の水準に戻りました。労働参加率は62.3%に増加しました。

非労働力人口は9930万人と高止まりしています。移民の減少やコロナ禍で退職した人たちがそのまま労働市場から離脱した可能性があります。労働者減少による潜在成長率の低下が懸念されます。

平均時給は前月比+0.3%、前年比+5.2%となりました。4月の+5.5%からペースが落ち着きました。

5月のCPIは予想に反して幅広い項目で上昇が加速しました。前年同月比の伸び率が+8.6%と40年ぶりの上昇幅となりました。

3月が+8.5%、4月が+8.3%とインフレがピークに達して落ち着き始めているとの見込みが外れました。

ガソリン価格は過去最高になり、食品価格は1.2%上昇しました。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の1を占める住居費の上昇にも衰えが見えません。

物価高騰の大きな要因である自動車価格は4月からはやや鈍化したものの、引き続き高水準的であり、消費者の生活は強く圧迫されています。

1-3.今回6月FOMCの予想

0.5%の利上げは完全に織り込まれているため、3か月に一度発表されるFOMCメンバーの利上げ見通しであるDOTSチャートに注目です。長期均衡金利の2.375%は変わらないものの、利上げの最終到達点がどの程度上方修正されるのかによって、相場が動くでしょう。

景況感は悪化しているものの、雇用は堅調です。早期に利上げを中断するという選択肢は取らず、淡々と利上げ継続というDOTSチャートを予想します。

1-4.発表後の反応予想

先日、バイデン大統領がパウエル議長とインフレについて協議しました。バイデン大統領はFRBの独立性を尊重すると同時にインフレの責務については主にFRBの管轄だと主張しました。

参考:ブルームバーグ「バイデン氏、物価対策はFRBに主要な責任-パウエル議長と会談

しかし、エネルギーや食料品は、政治問題でありFRBの利上げによって抑えられるものではありません。抑えられるのは住宅などの需要くらいでしょう。

またパウエル議長は利上げには痛みを伴うとも発言しています。

参考:ブルームバーグ「パウエル議長、「明確で納得できる」インフレ後退まで利上げ継続

ただ、現在の堅調な雇用情勢であれば、利上げに耐えられる可能性も十分にあるため、恐らく9月も0.5%利上げへの道筋は示してくると予想します。既に市場は織り込んでしまっていますが、2023年にかけて最終到達金利が市場織り込みの3.2%程度を越えてくるようなら、もう一段のUSD買いとなりそうです。

2.BOE政策決定会合

2-1.前回5月BOE政策決定会合の内容

政策金利を0.25%引き上げて1.00%とすることを決定しました。ハスケル、マン、サンダースの3名が0.5%の利上げを主張し、反対票を投じました。

インフレは今年第4Qに平均10%をやや上回る水準でピークアウト(3月時点は今年4月に8%前後で)と若干上方修正した形となりました。多くの委員が今後数カ月である程度の一段の金融政策引き締めが依然適切とみており、タカ派の側面は打ち出しています。

一方で2023年の成長率予測を▲0.25%と予測するなど、実質所得が低下するなかでの引き締め策という難しい舵取りが必要となりそうです。

ベイリー総裁も政策金利をより一層、大幅に引き上げるべきとの意見には同意しないと述べました。全体としてはハト的な利上げということになり、GBPは売られました。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利1%に上げ-10%インフレとマイナス成長予想

2-2.直近の経済状況

第1QのGDP速報値は前期比+0.8%と予想の+1%を若干下回りました。2月にコロナによる行動制限が解除されGDP全体の6割を占める個人消費が伸びたことから、3月以降の物価高によるマイナスを何とか打ち消すことが出来た形です。

BOEは5月の会合で、第2QのGDPは前期比横ばいになるとの見通しを示しているものの、3月の月次GDPは▲0.1%と既にマイナス転しています。消費者信頼感指数も悪化していることから、見通し通り達成できるかはかなり怪しくなってきました。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利1%に上げ-10%インフレとマイナス成長予想

雇用統計が発表となり、第1Qの失業率が3.7%と48年ぶりの低水準を記録しました。この期間の失業者数が約126万人でした。

同期間の3か月間の求人者数は128.8万人と求人数が失業者数を上回っています。これは、統計開始以来初のことです。異例の人手不足状態であり、5月週平均賃金も前年比+7.0%と前回の+5.6%から大幅に上昇しました。

4月CPIは前年比+9.0%と40年ぶりの水準を記録しました。予想通り電気・ガス料金の引き上げが大きく影響した他、モノやサービスの幅広い項目で物価上昇が進行しています。BOEは第4QのCPI予想を10%と予想しており、労働需給の引き締まりも勘案すると前倒しで達成しそうな勢いです。

4月小売は前月比+1.4%と予想の▲0.3%に対してポジティブサプライズとなりました。主に生活必需品の食料品と衣類が牽引しているため、個人の購買意欲が強いと判断をするには微妙でしょう。

5月サービス業PMIはサービスPMIは58.9から51.8に低下しました。やはり景況感はあまり良くないでしょう。

一方、エネルギー価格高騰による生活費高騰を緩和するため最貧困層中心に150億GBPの消費者支援パッケージを財務省が打ち出しました。これまで景気悪化で利上げ継続には疑問符がついていたものの、財政のサポートがあるなら利上げを継続できる可能性があります。

2-3.今回6月BOE政策決定会合の予想

今回は、据え置きと0.25%と0.50%の利上げに予想が分かれています。市場予想は間を取って0.25%利上げが優勢です。ただ、前回と比較して、今回は0.50%になる可能性が高いと予想します。

5月の会合以降、利上げの効果か物価上昇の悪影響か分からないものの、景況感は確実に悪化しています。しかし、雇用はまだ堅調に推移し賃金も上昇傾向となっています。いまだピークを付けていない物価上昇の中では、雇用市場が堅調な内に利上げをしておきたいと思うメンバーがいる可能性があります。

特に、最近の他国の主要中銀は0.5%の利上げに躊躇しておらず、むしろ早期に上げて、将来的に利下げも視野に入れていることが伺えます。そんな中、財務省が150億GBPの財政支援策を決定したため、BOEとしては、景気を財務省に支えてもらえるうちに、インフレ抑制のための利上げがしやすい環境が整っている状態だと言えます。

2-4.発表後の反応予想

今回据え置いたり、今後の利上げ休止を宣言するなどのハト派サプライズがあった場合、もう一段のGBP売りとなり1.2000を目指す展開を想定します。

ただ今回は、どちらかというと0.5%利上げのタカ派サプライズの可能性の方が高いと予想します。BOEとしては、GBP通貨安が一方的に進行してしまうと輸入物価がインフレを更に引き上げてしまうという点も考慮すると、ハト的な姿勢は示せないでしょう。

0.50%の利上げを実施して、タカ派姿勢を示すのであれば、一気に1.3000を回復する展開も予想できます。

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