独シーメンス・エナジー、風力発電機ガメサを完全子会社化へ。合理化で立て直し図る

ドイツの重電大手シーメンス・エナジー(ENR)は5月21日、風力発電機子会社のシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー(SGRE)を完全子会社化すると発表した(*1)。資源高やプロジェクト遅延などを背景にガメサが赤字に転落するなか、完全子会社化して業績の立て直しを図る。

産業システム大手のシーメンス(SIE)から分社化したシーメンス・エナジーは、ガメサ株を約67.1%保有している。今回、残りの株式について1株当たり18.05ユーロで買い取る。取得価格は17日終値の14.13ユーロに27.7%のプレミアムを上乗せする。株式取得は2022年下半期に完了する見通しであり、ガメサを完全子会社化したのちにスペイン証券取引所から上場廃止する意向だ。

コスト高やプロジェクト延期などの影響を受け、ガメサの業績は急速に悪化。業績の下方修正を繰り返していたことも投資家に嫌気され、株価は21年1月の高値から53%下落している(*2)。

苦境に陥るガメサの立て直しを求める株主の声も強まるなか、シーメンス・エナジーはガメサを完全子会社化し、製造、サプライチェーン、プロジェクト、顧客管理の領域に強く関与していく方針だ。サプライチェーンやロジスティクスコストの削減にくわえ、連携プロジェクトや共同で研究開発を進めることにより、3年で年間約3億ユーロ(約420億円)のコストシナジーを見込む。完全子会社化することで、二酸化炭素(CO2)を削減するソリューションやグリッド分野のテクノロジーを求める顧客に対し、ワンストップサービスも提供できるようになるという。

シーメンス・エナジー監査役会のジョー・ケーザー議長は、ガメサの完全子会社化はシーメンス・エナジーが化石燃料から持続可能なエネルギーソリューションを提供するエネルギー・トランジション(#1)を推進するうえで重要だと述べた(*1)。これは顧客、従業員、株主、最終的には社会に利益をもたらすと付け加えた。

風力発電の需要自体は旺盛だ。世界風力会議(GWEC、#2)は4月4日に公表した年次報告書「グローバル風力レポート2022」にて、50年までにネットゼロ(温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする)を実現するためには、21年比で4倍となる風力発電の拡大が必要であるとの見通しを示した。

資材・輸送費高が各社の経営を圧迫するなか、米ゼネラル・エレクトリック(GE)傘下のGEリニューアブルエナジーが、風車タワー基部を3Dプリンティング技術を活用するなど、コスト削減に向けた取り組みを推進する企業も散見される。

(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。

(#2)世界風力会議…風力発電に関する国際業界団体。デンマークの風力発電機大手ヴェスタス(ティッカーシンボル:VWS)やオーステッド(ORSTED)、英石油大手のシェル(SHEL)などが加盟している。

【参照記事】*1 シーメンス・エナジー「Siemens Energy AG announces a voluntary cash tender offer for all outstanding shares in Siemens Gamesa Renewable Energy, S.A. with intention to delist and integrate the business
【参照記事】*2 マドリード証券取引所「Bolsa de Madrid – Data of SIEMENS GAMESA RENEWABLE ENERGY, S.A.

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