円安による生活への影響と、資産を守るための対策は?FPが解説

2022年の春から、為替が大きく円安に振れました。円安とともにウクライナ紛争による物価上昇からインフレも進行中です。今回は多くの人に影響のある円安とインフレ、そこから資産を守る方法について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年7月5日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 急激な円安の原因は?
    1-1.日米の金利差拡大
    1-2.日本円の信用力の低下
    1-3.米ドル以外の通貨に対しても円安が進行
  2. 円安による生活への影響は?
    2-1.円安のメリット
    2-2.円安のデメリット
  3. 為替の今後の見通しは?
    3-1.今後も円安の進行が見込まれる
    3-2.米国の株安による揺り戻しの可能性も
  4. 円安から資産を守るための対策
    4-1.外貨預金
    4-2.外貨建てMMF
    4-3.外国債券
    4-4.金投資
  5. まとめ

1.急激な円安の原因は?


出典:日本銀行「外国為替市況(日次)」より筆者作成

2021年以降は緩やかに進行していた円安ドル高が2022年に入り加速、さらに2022年3月以降に爆発的な上昇が続いています。年初から3月上旬まで1米ドル115円前後で推移したレートがその後大きく円安方向に変動し、4月下旬に約20年ぶりに130円に到達しました。

1-1.日米の金利差拡大

米国はコロナ禍の影響などによる不況のために2020年3月から政策金利を大幅に引き下げ、量的緩和政策に転じました。これによりマイナス金利政策を続けていた日本との金利差が縮小し、ドル円は1米ドル110円から緩やかに円高に振れていきます。

その後、米国経済は回復し、金融引締めの必要性が出てきました。2022年の3月には政策金利を0.25%から0.5%に引き上げました。その後もさらなる利上げが行われています。

これに対して、日本は金融緩和政策を継続する方針が決定しています。そのため、日米の金利差が拡大する結果となりました。通常、為替市場においては金利の低い通貨が売られ、高い通貨が買われます。つまり、ドル円であれば日本円が売られて米ドルが買われ、円安ドル高になるというわけです。

1-2.日本円の信用力の低下

ウクライナ危機後にも円安が進んだことは、日本円の信用力低下の表れと考えられます。かつては「有事の円買い」という言葉があり、戦争や大きな経済変動など起こると日本円は買われていました。

相場全体がリスクを避ける傾向のときには、信用力のある通貨や安全性が高いと考えられる通貨が買われやすくなります。外貨建てMMFとは、外貨建てで格付けの高い短期債券などで運用される投資信託の一種です。

1-3.米ドル以外の通貨に対しても円安が進行

米国以外の主要国も、ほぼ同じタイミングで政策金利を引き上げ始めています。そのため、米ドル以外の世界各国の通貨に対しても円安が進行しています。英国ポンド・豪ドルなどの主要国の他、南アフリカランド・メキシコペソのような高金利通貨に対しても同様です。

2.円安による生活への影響は?

2011年頃の日本は為替介入が必要なほどの円高に苦しみましたが、過度の円安にも大きなデメリットがあります。既に現れ始めている円安のメリット・デメリットを解説します。

2-1.円安のメリット

超円高の時代には、円安に転じることが望まれていました。円安にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

輸出企業の利益が増える

円安は、自動車など輸出関連企業にとってプラスです。円安になると海外の企業や人が、日本製品を安く購入できます。そのため、輸出した製品の価格競争力が増して売れやすくなり、企業の収益が上がります。

たとえば対米ドルで1円円安に振れると、トヨタの営業利益が400億円増加すると言われています。

観光客の増加に期待

2022年6月から、新型コロナウィルス感染症のために停止されていた訪日外国人客(インバウンド)の受け入れが一部再開されました。旅行業界だけでなく、百貨店などにも円安によるさらなる商機拡大が期待されます。

外貨建て資産の価値が上がる

米国株など海外投資をしている人は、外貨建て資産の円での価値が上がります。たとえば1米ドル110円の場合、1万米ドルは110万円ですが、1米ドル130円であれば130万円です。外貨ベースの運用益に関係なく、為替差益が期待できるのです。

2-2.円安のデメリット

今回の円安では、どちらかというと負の影響が懸念されています。円安のデメリットを理解しておきましょう。

インフレによる家計へのダメージ

円安になると海外から輸入するモノの値段が上がります。また、石油など製造業の原料になる資源も値上がりし、製品の値上げが避けられません。モノだけでなく電気料金などの光熱費も上がり、今まで以上に家計からお金が失われているのです。

海外旅行先の物価が高くなる

円安になると、海外旅行をするときも悪影響があります。現地で買うと割安とされていたブランド品や高級品が、すべて高くなってしまうからです。宿泊費も高くなるため、今までは高級なホテルに泊まれた人もダウングレードしなければならないケースもあるでしょう。

3.為替の今後の見通しは?

急激な円安は消費者にとってはマイナスの影響が大きく、先行きに不安を感じる人も多いでしょう。そこで、為替市場の今後の見通しについて考えてみます。

3-1.今後も円安の進行が見込まれる

円安の原因となっているのが日銀の金融緩和政策です。物価の抑制には金利の引き上げが有効ですが、簡単にはできない事情があります。日本の普通国債残高は約1,000兆円で、令和4年の利払い費は8.2兆円と試算されています。

金利の引き上げは利払いの増加を意味しており、さらなる財政悪化のおそれがあるのです。そうしたことから、日銀は今後も量的緩和を継続する見込みです。

一方、米国では今後も利上げが予定されているため、日米の金利差は拡大し、円安も進行すると見られています。

3-2.米国の株安による好転の可能性も

しかし、最近の米国の株安を景気後退のサインと見る意見もあり、FRB(連邦準備制度理事会)による政策金利の引き上げに歯止めがかかる可能性も考えられます。それに対し日本では欧米諸国に遅れて経済活動が活発になり、景気回復の兆しが見えてきています。

状況次第では低金利を見直す可能性も考えられますが、黒田総裁の任期満了(2023年4月)後となるでしょう。つまり、今後の日米の経済変動次第で、過度の円安は落ち着く可能性もあります。

4.円安から資産を守るための対策

円安からもたらされるインフレにより、相対的にお金の価値は下がります。物価上昇以上の収入増が見込めない場合、運用によるインフレ対策が必要です。インフレに強い資産としては、外貨建て資産、商品(金など)などがあります。

いずれも元本が保証されておらず、必ず利益が得られるとはかぎりません。しかし、運用は利益を狙うだけなく、インフレから資産価値の目減りを防止する守りの目的でも活用可能です。ここでは、インフレに強くて始めやすい運用方法を紹介します。

4-1.外貨預金

外貨預金は米ドルなどの外国の通貨での預金で、国内の銀行で取り扱っているので誰でも気軽に口座開設できます。米国だけでなく多くの国は日本より高金利なため、円預金に比べて利殖性があり、円安に振れれば為替差益も期待できます。

ただし、円高の際には為替差損を被る点に注意が必要です。加えて外貨預金は円を外貨に替える、外貨を円に替えるときにそれぞれ為替手数料がかかり、金額は金融機関ごとに異なります。外貨預金をするなら、金利だけでなく為替手数料も比較して金融機関を選びましょう。

4-2.外貨建てMMF

外貨建てMMFとは、外貨建てで格付けの高い短期債権などで運用される投資信託の一種です。元本保証ではありませんが、外貨ベースでは元本割れするリスクが低い運用商品です。外貨預金と同様に海外の高金利が享受でき、いつでも換金できます。

外貨預金と外貨建てMMFの比較

それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

項目 外貨預金 外貨建てMMF
利回り 運用実績に応じて変動 一般的に固定利率
元本保証 元本保証ではない 外貨ベースでは元本保証
金利・分配金にかかる税金 源泉分離課税 源泉分離課税
為替差益にかかる税金 申告分離課税 雑所得として総合課税
換金性 いつでも解約可能 定期預金は原則解約不可
金融機関破綻時 分別管理により保護される ペイオフ対象外

4-3.外国債券

米国国債など外貨建ての債券は、日本の国債や社債よりも高金利な傾向にあり、外貨ベースでは元本割れのリスクはありません(為替リスク、債務不履行リスクはあります)。格付けが高めの債券であれば、比較的低リスクな運用方法です。

外国債券は販売期間や取り扱う証券会社が限られており、買いたい場合はこまめに情報をチェックする必要があります。

4-4.金投資

インフレとはモノの価値が上がり相対的にお金の価値が下がることを指すため、金のような現物資産はインフレに強いと言われています。また、「有事の金」とも言われるとおり、2022年2月のウクライナ危機以降、金の市場価格は急上昇しています。

金を購入しても利息が得られるわけではなく、急激な経済変動時に資産の目減りを避ける役割が大きいと言えます。そのため、資産の一部に金を保有するのは、リスクヘッジとして有効です。

まとまった資金がなくても、「純金積立」なら1,000円から始められるネット証券もあります。

まとめ

日米の金利差による円安は、2022年中は続くと考えられます。輸出関連企業にとっては追い風となる円安も、一般消費者にとってはマイナス要因です。円安によってインフレが進むと、現金や預貯金の額面は変わらなくても価値が目減りします。

円安対策には、資産の一部をインフレに強い外貨建て資産などで保有する方法があります。自分に合った円安対策を検討してみましょう。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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