欧米各国の中銀が相次ぎ利上げ、インフレ抑制を重視。すでに弱気相場入りへ

欧米各国の中央銀行が相次いで政策金利の引き上げを実施している。市場でリセッション(景気後退)懸念が高まるなか、中銀は利上げを継続し、急激に進むインフレの抑制を重視する姿勢を示す。

急ピッチな利上げを進めるのが米国だ。米連邦準備理事会(FRB)は3月に0.25%の利上げに踏み切ったのにつづき、5月には0.5%、6月には27年7か月ぶりの上げ幅となる0.75%の利上げを決定した(*1)。

5月の米消費者物価指数(CPI)の伸び率が前年同月比8.6%と約40年ぶりの水準を更新するなか、パウエル議長はインフレの抑制を最優先し、利上げを継続する方針を強調する。ブレイナード副議長は米CNBCのインタビューに対し「9月に利上げをいったん停止することは非常に難しい」と述べた(*2)。

イングランド銀行は6月16日、5会合連続の利上げを決め、政策金利を0.25%引き上げて1.25%とする決定を下した(*3)。英国は物価高騰による「生活費危機」に直面する。光熱費の大幅値上げを受け、5月のCPIは前年同月比9.1%上昇し、40年ぶりの高水準に達している。

欧州中央銀行(ECB)も米英と同じくインフレ抑制を重視しており、7月に約11年ぶりとなる利上げに踏み切ることを発表(*4)。さらに、スイス国立銀行は6月16日、約15年ぶりとなる政策金利の引き上げを決めた(*5)。

世界的に利上げの波が押し寄せるなか、リセッション懸念がくすぶっており、投資家はリスク回避の姿勢を強めている。株式市場では、金利上昇時に売られやすい高成長株が組み込まれるナスダック総合株価指数が年初来で約30%売り込まれ、すでに「弱気相場」入りしている(*6)。

為替市場に目を転じると、日米金融政策の方向性の違いを背景に、ドル円は6月に約24年ぶりの円や水準となる1ドル=137円台をつけ、今月には1ドル=138円台もつけている。急激なドル高は海外売上高比率の高い米企業の業績に影響を及ぼしており、米マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)が22年4~6月期の業績見通しを引き下げている(*7)。

【参照記事】*1 米連邦準備理事会「Federal Reserve Board – Federal Reserve issues FOMC statement
【参照記事】*2 CNBC「Fed Vice Chair Lael Brainard says it’s ‘very hard to see the case’ for the Fed pausing rate hikes
【参照記事】*3 イングランド銀行「Bank Rate increased to 1.25% – June 2022
【参照記事】*4 欧州中央銀行「Monetary policy decisions
【参照記事】*5 スイス国立銀行「Monetary policy assessment of 16 June 2022
【参照記事】*6 Yahoo Finance「NASDAQ Composite (^IXIC) Charts, Data & News
【関連記事】*7 マイクロソフト、4~6月期の業績予想を下方修正。ドル高が重し

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