IEA、太陽光パネルの生産地の8割が中国だと報告。各国へ分散呼びかけ

国際エネルギー機関(IEA)は7月7日、太陽光パネルのサプライチェーンを分析した特別報告書を公表した(*1)。太陽光パネルの製造段階で中国が8割のシェアを占める現状に鑑み、ネットゼロエミッションへの安全な移行を実現するために生産の拡大・多様化を進めるよう呼び掛けている。

中国が産業政策として太陽光パネルの生産拡大に努め、イノベーションの支援に注力したことで、世界中の市場で太陽光は最も安い発電技術となっている。一方、このことは太陽光発電のサプライチェーンに不均衡をもたらしている、とIEAは指摘する。

コモディティ価格の高騰やサプライチェーンのボトルネックにより、2021年は太陽光パネルの価格が約20%上昇した。特に主要材料であるポリシリコン市場にこれらの問題が顕著に表れ、世界各地で太陽光パネルの供給遅れと価格上昇を引き起こした。こうした課題に対して各国の政策立案者が更なる対応を図る必要があるという。

太陽光パネルの製造の中心は、直近10年間で欧州、日本、米国から、投資の拡大とイノベーションの創出によって主導権を握る中国へ移った。中国は太陽光パネルの主要なすべての製造工程で80%超のシェアを握っている。さらに、ポリシリコンやウエハーといった主要素材に関しては、今後数年で中国のシェアは95%以上に上昇すると予測する。

50年までにネットゼロエミッションを実現するというIEAのシナリオに沿うには、30年までに太陽光発電の年間発電量を4倍以上に増強する必要がある。太陽光パネルの主要素材であるポリシリコン、インゴット、ウエハー、セル、モジュールの生産能力に関しては、30年までに現在の2倍以上とし、既存の生産設備の近代化も必要になるという。

IEAのファティ・ビロル事務局長は「中国は太陽光発電のコスト引き下げに貢献したが、供給網が地理的に集中しているのは各国政府が対応すべき潜在的な課題だ」と述べ、生産地の分散化を求めた(*1)。

中国は太陽光発電分野で圧倒的な市場シェアを握るほか、風力発電や電気自動車(EV)、原子力といった脱炭素化に資する主要産業において存在感を高めている。一方、同国は世界最大の石炭消費国でもある。習近平国家主席が60年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと表明しており、国を挙げた脱炭素化への取り組みに今後も注目したい。

【参照記事】*1 IEA「The world needs more diverse solar panel supply chains to ensure a secure transition to net zero emissions

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