「野村ブラックロック循環経済関連株投信」の投資先は?成績や手数料の分析も【2022年9月】

近年のESG投資への関心の高まりをうけて、環境問題の解決を運用成果に結びつけるファンドはないかと、探している人もいるのではないでしょうか。ESG投資は数十年前から提唱されていましたが、環境問題への意識が高まるにつれて、近年注目度を増しつつあります。

記事内では野村ブラックロック循環経済関連株投信の概要や運用の手法、成績について詳しく紹介します。環境関連の投資先を探している人はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。

目次

  1. 野村ブラックロック循環経済関連株投信とは?
    1-1.サーキュラー・エコノミー(循環経済)
    1-2.3つの分野に着目
  2. ファンドの投資先・全42銘柄の組入上位10銘柄と企業の取り組み例
    2-1.コカ・コーラユーロパシフィック・パートナーズ
    2-2.マイクロソフト
    2-3.イボクア・ウォーター・テクノロジーズ
  3. ファンドのパフォーマンスを徹底分析
    3-1.Aコース 為替ヘッジあり(米ドル売り円買い)
    3-2.Bコース 為替ヘッジなし
    3-3.環境関連株は年初から苦戦が目立つ
  4. 世界が直面する7つの環境問題
    4-1.海洋汚染
    4-2.化学物質・有害廃棄物の越境移動
    4-3.オゾン層の破壊・地球温暖化と酸性雨
    4-4.鉱物資源やその他資源の減少
    4-5.森林破壊・砂漠化
  5. まとめ

1.野村ブラックロック循環経済関連株投信とは?

野村ブラックロック循環経済関連株投信は、野村アセットマネジメントが、ブラックロック・グローバル・ファンズ-サーキュラー・エコノミー・ファンドに投資する、ファンズオブファンズ方式を採用しています。

以下、野村ブラックロック循環経済関連株投信の詳しい概要や、運用方針を紹介します。

1-1.サーキュラー・エコノミー(循環経済)

サーキュラー・エコノミーとは、簡潔に説明すると、資源やエネルギーを再利用して、無駄な廃棄物を出さない循環のことを指します。サーキュラー・エコノミーの研究は世界各地で進んでおり、現状100以上の定義がありますが、明確に定められた定義はありません。

数ある定義の中でも、国際的なサーキュラーエコノミー推進団体であるエレン・マッカーサー財団によるサーキュラー・エコノミー3原則は、サーキュラー・エコノミーとはなにか?という問いに端的に答えています。サーキュラー・エコノミー3原則は以下のとおりです。

  1. 廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う
  2. 製品と原料を使い続ける
  3. 自然システムを再生する

サーキュラー・エコノミー3原則を踏まえた上で、世界最大規模の運用会社であるブラックロックによる、サーキュラー・エコノミーの考え方は以下の3点に集約されます。

  1. 今まで廃棄されていた製品や原材料を新たな資源と捉える
  2. 廃棄物を出さずに資源の循環を目指す
  3. イノベーションの進化こそが、持続可能な経済を促進させる

以上の思想に基づいた3つの着目点を、次項で紹介します。

1-2.3つの分野に着目

同ファンドの資料によると、ブラックロックの銘柄選定は、以下3点を勘案して行われます。

  1. 変化に適応する企業
  2. 変化の恩恵を受ける企業
  3. 変化を促進する企業

各項目ごとに詳細を説明します。

変化に適応する企業

変化に適応する企業とは、環境保全のためにサーキュラー・エコノミーに柔軟な対応を見せている企業を指します。具体的には、以下のような取り組みを評価ポイントとしています。

  • 従来のプラスチックでなく、再生プラスチックやプラスチックの代替品となる素材を積極的に活用する
  • 温室効果ガスの削減や、気候変動対策への取り組みに対して惜しみない投資を行う
  • カーボンニュートラルへの具体的な取り組みを行う

進みゆく環境破壊に対して、積極的に対策を講じ、持続可能な社会を目指している姿勢が注目ポイントです。

変化の恩恵を受ける企業

変化の恩恵を受ける企業とは、サーキュラー・エコノミー活動で発生した新たな需要を掴み、収益性のあるビジネスに転換している企業を指します。サーキュラー・エコノミーの流れで新たな需要を獲得した事業の例は、以下のとおりです。

  • 廃プラスチックの再生事業
  • リサイクル品で作る紙製パッケージの生産
  • 回収した資源を再利用できるソリューションの開発

サーキュラー・エコノミーへの意識が高まるにつれて、変化の恩恵を受ける企業は、より必要とされ、業績を伸ばし続けると見られています。

変化を促進する企業

変化を促進する企業とは、サーキュラー・エコノミー活動の先頭に立ち、社会へ変化することの影響を与え続ける企業を指します。有名な例として、スターバックスのプラスチック排除の活動が挙げられます。国内コンビニエンスストアの、プラスチック製スプーンやマドラーを不必要に使わない流れも、変化を促進する企業の活動です。

他には、水に含まれている有害物質を肥料に変えるイノベーションをもつ企業も、変化を促進する企業としてピックアップされています。

2.ファンドの投資先・全42銘柄の組入上位10銘柄と企業の取り組み例

3-3.全42銘柄の組入上位10銘柄

銘柄 国/業種 構成比率
1.Republic Services 米国/資本財サービス 4.5%
2.イボクア・ウォーター・テクノロジーズ 米国/資本財サービス 3.9%
3.マイクロソフト 米国/情報技術 3.1%
4.コカ・コーラ ユーロパシフィック パートナーズ 米国/生活必需品 3.9%
5.Waste Management 米国/資本財サービス 3.6%
6.グラフィック パッケージング ホールディング 米国/資本財サービス 3.6%
7.ブランブルス リミテッド 豪州/資本財サービス 3.5%
8.ネスレSA スイス/生活必需品 3.3%
9.SIGグループ スイス/素材 3.3%
10.シーメンスヘルシニアーズAG ドイツ/ヘルスケア 3.2%

以下では、上記ファンドの組入銘柄の中から3つの企業をピックアップし、各社ごとの取り組みを以下に紹介します。

  1. コカ・コーラユーロパシフィック・パートナーズ
  2. マイクロソフト
  3. イボクア・ウォーター・テクノロジーズ

2-1.コカ・コーラユーロパシフィック・パートナーズ

世界最大のコカ・コーラボトラーであるコカ・コーラユーロパシフィック・パートナーズは、業界のリーディングカンパニーとして、積極的に環境問題に取り組んでいます。

2040年までに温室効果ガスの排出量の実質ゼロを目標に掲げ、直近の2025年までに製品のパッケージ素材を全てリサイクル、再生可能なものにすることを発表しました。

自社のみならず関連のサプライヤーにも、環境問題への取り組みやESG活動の評価を軸とした融資プログラムを開始する計画も明らかにされています。

一連の活動をブラックロックでは、変化に適応する企業として評価しています。

2-2.マイクロソフト

マイクロソフトは、2030年までに二酸化炭素の排出量を実質マイナスにする「カーボン・ネガティブ」を目標に掲げました。目標達成への具体的な取り組みは以下のとおりです。

  • マイクロソフトが手動する世界のプロジェクトで130万トンの炭素を除去
  • エネルギー関連のパートナーに5,000万米ドル(約55億円)を投資
  • サプライヤー行動規範を改定し、温室効果ガス排出量の開示を義務付ける

人気デバイスのSurfaceは、今後100%リサイクル可能な商品として売り出すとしており、マイクロソフトの環境問題への取り組む姿勢をうかがい知ることができます。

マイクロソフトの環境問題への取り組みを、ブラックロックでは変化に適応する企業として評価しています。

2-3.イボクア・ウォーター・テクノロジーズ

イボクア・ウォーター・テクノロジーズは、アメリカのペンシルベニア州ピッツバーグに本社を置く総合水処理エンジニアリング企業です。水に含まれる有害な成分を肥料に作り変える技術にてサーキュラー・エコノミーに貢献。水浄化システム、排水処理設備は、上下水道が整備されていない国や地域はもちろん、先進諸国の政府や自治体、企業からも技術が採用されています。

イボクア・ウォーター・テクノロジーズは、水質改善による環境負荷軽減に大きく貢献し、サーキュラー・エコノミーの流れを作り出している点が評価ポイントです。

3.ファンドのパフォーマンスを徹底分析

野村ブラックロック循環経済関連株投信は為替ヘッジありのAコースと、為替ヘッジなしのBコース、それぞれ2種類のファンドが運用されています。

投資家から募った主な資金は、ブラックロック・グローバル・ファンズ-サーキュラー・エコノミー・ファンドを経由、銘柄へ投資されるファンズオブファンズ形式を採用しています。

※以下、2022年9月16日時点の情報です。

3-1.Aコース 為替ヘッジあり(米ドル売り円買い)

基準価額 9,466円
純資産 49,587百万円
信託報酬 1.83%
トータルリターン −28.77%(1年)
設定日 2020年8月24日

分配金

決算期 分配金(円)
2022年8月 0
2020年2月 10
2021年8月 10
2021年2月 10
設定来累計 30

3-2.Bコース 為替ヘッジなし

基準価額 12,997円
純資産 87,139百万円
信託報酬 1.83%
トータルリターン −9.32%(1年)
設定日 2020年8月24日

分配金

決算期 分配金(円)
2022年8月 10
2020年2月 10
2021年8月 10
2021年2月 10
設定来累計 40

3-3.環境関連株は年初から苦戦が目立つ

野村ブラックロック循環経済関連株投信の主な組入銘柄である環境関連株は、年初からの地政学リスクや高インフレによって下落しています。環境関連株式は世界株式に比べてエネルギーセクターの配分比率が低く、資本財セクターの比率が高いことも、下落に拍車をかけました。

運用チームからの報告によると、上半期の2022年6月30日時点の騰落率は、2021年末からAコースで30.1%、Bコースで16.3%下落しています。Aコースの下落幅が拡大している要因は、内外金利差の拡大によるヘッジコストが増えたためです。

ファンドマネージャーからの報告によると、足元の状況は悪いものの、長期的に見ると普遍的な需要をもつサーキュラー・エコノミー銘柄は社会情勢の追い風を受けて、良好な見通しを維持すると予測しています(参照:野村アセットマネジメント「年初来の市場下落を受けて」)。

4.世界が直面する7つの環境問題

サーキュラー・エコノミーや、環境問題への取り組みのきっかけともいえる5つの環境問題を紹介します。

  1. 海洋汚染
  2. 化学物質や有害廃棄物の越境移動
  3. オゾン層の破壊による地球温暖化や酸性雨
  4. 鉱物資源やその他資源の減少
  5. 森林破壊・砂漠化

それぞれの項目について、詳細を紹介します。

4-1.海洋汚染

近年、プラスチックごみによる海洋汚染は、深刻さを増しています。

海に捨てられたプラスチックゴミは、細かく砕かれ自然に研磨されて5mm以下の微細なマイクロプラスチックへ。自然に還らないマイクロプラスチックは世界中に漂流し、海洋汚染を拡大しています。北極や南極でもマイクロプラスチックの存在が確認されているほどです。

マイクロプラスチックを飲み込んでも、人体に影響はないとされていますが、海の生態系への影響が懸念されています。

4-2.化学物質・有害廃棄物の越境移動

1970年代に欧米諸国を中心として化学物質や有害廃棄物を途上国に廃棄したことに起因する問題が、1980年代に顕在化しました。越境投棄は投棄の責任が分かりにくく、回収が進みません。途上国へ押し付けられる有害廃棄物は、うまく処理されずに地球規模の問題にまでに発展しています。

有害な廃棄物の国境を越える移動を規制する「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が1989年3月に締結され、2019年12月時点では、186カ国が加盟するまでに規模は拡大しました。

地球規模の環境問題は、各国の環境リテラシーにかかっているといっても過言ではありません。

4-3.オゾン層の破壊・地球温暖化と酸性雨

有害な紫外線から人体を守るオゾン層の破壊は、1970年代には国際的な議論が開始され、1985年3月に国際協力を定める「オゾン層の保護のためのウィーン条約」の締結や、その2年後、オゾン層を破壊する物質生産、消費を制限する「モントリオール議定書」の締結と、着実に対策がなされてきました。

気象庁のデータを読み解くと、オゾン層破壊によるオゾンホールの出現面積は直近10年ではおおよそ横ばい状態で推移しています(参照:気象庁「南極オゾンホールの経年変化」。

近年では、温室効果ガス問題とも相まって、酸性雨による建物や農作物への影響も懸念されています。新たに顕在化する環境問題への対応も迫られています。

4-4.鉱物資源やその他資源の減少

電子機器などに使われる鉱物資源の減少は、サーキュラー・エコノミーにて解決すべき課題です。金銀鉛などはこの後30年〜40年の間に枯渇するとも言われています。サーキュラー・エコノミーのソリューションにおいて、鉱物資源の再利用を促進することは重要な課題です。

貴重な金属は、普段私たちが使っている電子機器にも含まれており、加工済みの金属は「都市鉱山」とも呼ばれています。東京2020オリンピック・パラリンピックで使われた約5000個の金・銀・銅メダルは、都市鉱山から集めた金属から作られました。

今後、貴金属リサイクルの考え方はより一般的なものとなるでしょう。

4-5.森林破壊・砂漠化

森林破壊による砂漠化は、地球全体の環境保全を考える上で欠かせないテーマです。土地の有効活用や木材確保のための森林伐採は、世界中各地で進められました。二酸化炭素を吸収する森林の減少が、温暖化にも繋がるとされています。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国や中国、インドでは、深刻な砂漠化に悩まされています。

水が地表を洗い流し、農作物に壊滅的なダメージを与える水食は、砂漠化が原因です。砂漠化による地域ごとの貧富の格差や、土地の奪い合いは新たな紛争の火種になるとも言われており、重大な社会課題となっています。

まとめ

野村ブラックロック循環経済関連株投信は、持続可能な社会にむけて、無駄な廃棄物を減らすサーキュラー・エコノミーを推進する企業に投資するファンドです。ファンドでは、以下3つの観点から銘柄を選定しています。

  1. サーキュラー・エコノミーを受け入れて改善を目指す企業
  2. 環境保全への取り組みを通じて社会へ問題提起する企業
  3. サーキュラー・エコノミーを通じて収益を狙う企業

社会課題に取り組む企業へ投資するESG投資やSDGsの考え方は、世界のリーディングカンパニーが負う責務となり、今後よりスタンダードとなるでしょう。

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