大和AM「社会課題解決応援ファンド」の投資方針や投資先は?運用成績や手数料も【2022年10月】

大和アセットマネジメントが運営する社会課題解決応援ファンドは、社会課題への取り組みをテーマとして、社会貢献度が高いと判断される企業へ投資しています。

社会貢献度の高い企業は、社会課題の取り組みと収益をどのように関連付けているのでしょうか。当記事ではファンドの分析とともに、大和アセットマネジメントの社会課題解決についての考え方を紹介します。ESG活動関連のファンドを探している人は、記事内容を参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年9月26日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 「社会課題解決応援ファンド」とは?課題解決に取り組む企業に注目
    1-1.社会課題へ着目
    1-2.継続的な成長株へ着目
    1-3.急成長株の発掘
    1-4.中小型株もチェック
  2. 「社会課題解決応援ファンド」が注目する企業の社会貢献
    2-1.ディップ
    2-2.オイシックス・ラ・大地
    2-3.GMOグローバルサイン
    2-4.トビラシステムズ
    2-5.BIPROGY
  3. ファンドのパフォーマンスを徹底分析
    3-1.社会課題解決応援ファンドの基本情報
    3-2.分配金
    3-3.全144銘柄中の組入上位10銘柄
    3-4.時価総額規模別の構成
    3-5.中小型株のグロース株で構成されるファンド
  4. 今後の注目テーマ
    4-1.働き方改革
    4-2.DX
    4-3.ESG活動
  5. まとめ

1.「社会課題解決応援ファンド」とは?課題解決に取り組む企業に注目

大和アセットマネジメントが運営する「社会課題解決応援ファンド」は、社会課題の解決に取り組む企業に価値を見出し、投資妙味のある銘柄を選定し運用を行うファンドです。

銘柄を選ぶときのポイントは以下、4点です。

  1. 社会課題への取り組み
  2. 継続的な成長を見込める
  3. 急成長株への投資
  4. 中小型株への投資

それぞれの項目ごとに詳細を解説します。

1-1.社会課題へ着目

社会課題解決応援ファンドが銘柄選定においてもっとも重要視するポイントは、ファンド名のとおり社会課題です。

社会に必要とされ、長きにわたる成長を目指す企業にとって、社会課題への取り組みは欠かせません。ユーザーにメリットがある商品やサービスを提供し、ユーザーを助け、幸せにする企業が、持続的な成長を実現します。つまり、世の中の困りごと、社会課題の解決に取り組む企業こそが、時代を担う良い企業となりうるという考え方です。

SNSなどの発信によって、社会課題は瞬く間に世の中に顕在化する時代になりました。人々の社会課題への関心も高まりつつあります。ファンド運営チームは、このような背景から、社会課題への明確な取り組みを示す企業が、存在感を表していくと考えています。

日本政府の政策や、SDGsにも注目

社会課題解決応援ファンドは、日本政府の政策に関する投資テーマにも注目しています。日本政府の政策に関する投資テーマには、以下の内容が挙げられます。

  • 少子高齢化
  • SDGs

日本政府は、避けようがない少子高齢化をネガティブなものとしてのみ捉えず、新たな成長分野を生み出すきっかけとして捉えています。また、日本版SDGsとして「SDGsアクションプラン」を掲げる日本政府は、今後、社会課題の解決に向けて、新たな国策を打ち出すでしょう。

ファンドでは、柔軟な発想と取組によって、社会課題の解決を目指す企業へ注目しています。

1-2.継続的な成長株へ着目

社会課題解決応援ファンドが選定している銘柄は、継続的な成長が見込まれるサステナブルグロース株で占められています。運営チームが成長株を選ぶ時のポイントは、以下のとおりです。

  • 商品やサービスが社会から必要とされる構造を持っている
  • 競争優位性を表すROEや利益率

市場で高いシェア率を誇り、競争に強い銘柄は長期的な高リターンが期待できます。

企業の商品やサービスが、社会課題をどのように解決し、ニーズを獲得できるのか見極めるために、IPOを行う企業や未上場の企業の調査、日本政府の政策調査、企業調査アナリストとの連携などあらゆる手段をつくしています。

競争に強く、持続的な成長が見込めるか

持続的な成長には、競争優位性が欠かせません。シェアの維持や拡大、高い利益率などは、高い競争力あってのものです。

運用チームが実施している競争力の判定には、以下の分析手法が用いられています。

  • 企業とのミーティングによるビジネスモデルと経営陣の分析
  • ESG活動の考慮
  • 多くのメンバーによる多様な分析

財務諸表から得られる数値分析と合わせて、実際の現場感覚も重視している点が特徴的です。長期的な成長の持続性を実現するには、ESG活動は欠かせない要素です。

1-3.急成長株の発掘

市場では、1年〜2年の間に急成長を遂げる銘柄が毎年多く生まれています。社会課題解決応援ファンドはアクティブファンドとして、急成長株もしっかりと抑えていく運用方針です。銘柄選定のポイントは、人気と業績です。

  • 国策に関連する企業は成長期待から関心が集まりやすく、将来の人気が期待できる
  • 社会課題の意識が高まるに連れて、社会課題に取り組む企業の業績があがりやすい

国策に追従しつつ社会課題に取り組む企業は、現時点で注目度が低くても、急成長を遂げる可能性があると見込まれています。ここでも、世界的な社会課題への意識の高まりからESG活動を重要視しています。

1-4.中小型株もチェック

選定が難しいとされる中小型株にも、積極的に投資しています。中小型株の銘柄選定の難しさは、以下の理由によるものです。

  • 担当アナリストがついていないため情報が定かでない
  • 市場の認知度が低く企業評価が正しくなされていない
  • 価格形成が不十分で、本来の企業価値が図りにくい

逆に、正しい調査の上で正当な企業価値を判断できれば、投資妙味はあるといえます。中小型株への積極的な投資は、大和アセットマネジメントの調査力と分析力の自信のあらわれです。

継続的な成長株や、短期間での急成長株が出やすく、社会課題への寄与度が高い企業が多い中小型株の市場は、高い将来性を秘めていると考えられています。

2.「社会課題解決応援ファンド」が注目する企業の社会貢献

ファンドの組入銘柄の中から、コロナ禍の中、社会貢献活動を行っている5つの企業をピックアップしました。

  1. ディップ
  2. オイシックス・ラ・大地
  3. GMOグローバルサイン
  4. トビラシステムズ
  5. BIPROGY

2-1.ディップ

ディップはバイトルやはたらこねっとなど、人材系広告媒体を中心に手掛ける企業です。

ディップではユーザーへ向けて、コロナ禍で休業を余儀なくされた場合の休業補償を行っています。アルバイトや派遣社員、契約社員など雇用の安定を獲得しにくい人へ向けて、半月分の収入相当額を支援しました。また、媒体の掲載企業に向けて、コロナ禍によって人手不足となった会社や店舗へ、速やかに代替要員を送る対応も行っています。

ディップは人材を支え、供給することで社会貢献を形にしています。

2-2.オイシックス・ラ・大地

オイシックス・ラ・大地は、オイシックスと大地を守る会の経営統合によって誕生した会社です。個人宅への食品宅配を主な事業としています。

オイシックス・ラ・大地はコロナ禍でダメージを受けた北海道の観光産業や、食品メーカー、生産者を支援するために「お家で⾷べて応援︕北海道物産」をスタートしました。食品宅配を強みとするオイシックス・ラ・大地ならではの支援策です。緊急事態宣言下の観光、食品産業の下支えに貢献しました。

2-3.GMOグローバルサイン

当時のGMOグローバルサインは、コロナ禍で在宅勤務を余儀なくされた企業へ電子契約サービスAgreeを1年間無償提供しました。押印のために出社を余儀なくされるケースに対応できるとして、電子契約書は大いに役立っています。

その後、旧社名のGMOクラウドから、現社名のGMOグローバルサインに社名変更し、電子契約の需要の高まりを受けて業績は向上。GMOモビリティクラウド株式会社と経営統合し、AgreeはGMOサインへ名称変更しました。そして2022年の4月には、プライム市場への上場を果たしています。

2-4.トビラシステムズ

トビラシステムズは、迷惑電話を効果的に拒否するセキュリティシステムなどを提供する会社です。他には、IoTプラットフォームの提供や、ビックデータ解析も請け負っています。

トビラシステムズでは、自社独自の迷惑電話フィルタ機能を活用し、コロナ禍に乗じた特殊詐欺被害の拡大防止に取り組みました。

手持ちのスマートフォンが社内電話の代わりになるトビラフォンの開発や、クラウドサービスによるテレワーク環境の構築にも貢献しています。

2-5.BIPROGY

BIPROGYは2022年4月に、日本ユニシスからの商号変更によって誕生した会社です。主な事業はクラウドなどのソフトウェア・ソリューションの提供やアウトソーシングです。金融・製造・自治体など幅広い業種からの依頼に応えています。

コロナ禍によって、テレワークへの対応が急務となった会社へ、すぐに使えるクラウド型ネットワークサービスの「Wrap」や、新しい働き方とコミュニケーションを支援するツール「Learning Cast」を無償で提供しました。

コロナ禍にて急な対応が迫られる状況での、大手企業の貢献は、社会活動の重要な下支えとなっています。

3.ファンドのパフォーマンスを徹底分析

社会課題解決応援ファンドは、日本が抱える社会課題への取り組みに向けて、積極的に活動している企業をピックアップし、投資するファンドです。決算は6月と12月、運用状況を鑑みて分配金を出します。

4つの投資テーマは以下のとおりです。

  1. 人々や社会が抱える潜在的な課題をいち早く捉え、ビジネスとして取り組む企業
  2. 社会的に注目されている課題に取り組み、収益の獲得をめざす企業
  3. 製品やサービスの提供を通じて、課題解決への取組みをサポートする企業
  4. 課題が解決されることによって恩恵を受ける企業

各項目ごとに詳細を分析します。

※以下、数値は2022年9月26日時点の情報です。

3-1.社会課題解決応援ファンドの基本情報

基準価額 12,607円
純資産 3,782百万円
信託報酬 1.57%
トータルリターン −14.33%(1年)
設定日 2018年12月26日

3-2.分配金

決算期 分配金(円)
2022年6月 10
2021年12月 10
2021年6月 600
2020年12月 1,800
2020年6月 150

※設定来合計3,570円

3-3.全144銘柄中の組入上位10銘柄

銘柄 業種 構成比率
1.Abalance 電気機器 6.7%
2.フューチャー 情報通信業 6.3%
3.SBテクノロジー 情報通信業 6.0%
4.塩野義製薬 医薬品 5.0%
5. ステムリム 医薬品 4.8%
6.GREEN EARTH INST サービス業 4.0%
7.ストライク サービス業 4.6%
8.ウエストホールディングス 建設業 4.1%
9.M&Aキャピタルパートナー サービス業 3.7%
10.ケイアイスター不動産 不動産業 3.6%

3-4.時価総額規模別の構成

規模 比率 銘柄数
TOPIX 小型株 53.60% 81銘柄
東証グロース(除くTOPIX) 18.70% 22銘柄
東証スタンダード(除くTOPIX) 12.10% 5銘柄

3-5.中小型株のグロース株で構成されるファンド

社会課題解決応援ファンドは、国内の中小型株をメインに構成されたアクティブファンドです。組入銘柄の7割近くが、中小型株にて運用されています。

国内小型グロースのカテゴリーでは平均的な運用成績です。年2回の決算時に分配金を出しており、最高額は2020年の12月決算時の1,800円です。直近の決算では10円となっていますが、運用成績が良い時は、積極的に分配金を出しています。

月ごとの組入上位10銘柄は頻繁に入れ替えられており、積極的な売買が行われている印象です。

信託報酬は、1.57%とアクティブファンドとしては平均的で、国内中小型株式を中心に構成されているためリスクはやや高めです。

4.今後の注目テーマ

社会課題解決応援ファンドが今後、注目したい分野は以下の通りです。

  • 働き方改革
  • DX
  • ESG活動

世の中の変化をプラスにとらえ、新たなビジネスチャンスを模索する企業に注目しています。以下、項目ごとの詳細を説明します。

4-1.働き方改革

柔軟な働き方に対応できる在宅勤務は、注目の分野です。柔軟な働き方を提供できる企業は、人材採用において高い競争力を持つことができます。旧態依然とした働き方しか容認できない企業は、良い人材を確保できなくなるでしょう。

在宅勤務が進むと、電子契約や経費精算クラウド、ワークフローシステムの需要が高まります。企業間のコミュニケーション不足を解消するツールとして、ビデオ通話やチャットアプリの需要増加も注目ポイントです。

4-2.DX

DX化推進の重要性は、経済産業省が提唱する2025年の壁問題にも見て取れます。実際は2025年よりも前に、コロナウイルスの影響によって、DX化が進んでいないために見られる諸問題が顕在化しました。コロナ禍によって、急速にDX化が進められ、DXの重要性も社会へ浸透しつつあります。

今後は5Gの普及に伴い、より一層DX化が進むと見られています。DX化へ積極的に取り組む企業と、そうでない企業の間には大きな競争力の差が生じるでしょう。

4-3.ESG活動

企業の社会貢献は社会から関心を集め、株主などのステークホルダーからの信頼度や認知度のアップ、ブランディングへの影響など、多くのメリットを生み出します。従業員や取引先が困っている時の支援は、永続的な信頼へ繋がり、企業が成長するための大きな足がかりともなるでしょう。

企業が負うべき社会課題解決のテーマは、ESG活動に集約されています。ESG活動への取組内容は、選ばれる企業の前提条件となります。

まとめ

大和アセットマネジメントが運営する「社会課題解決応援ファンド」は、企業が行う社会貢献を通じて、社会課題に取り組む企業をピックアップし、運営しています。混迷の時代にあえて社会課題に取り組み、新しいソリューションを見出す企業に投資します。

アクティブファンドとして機動的な取引を行い、積極的な売買によって銘柄の構成比率も月ごとに変動しています。販売会社が少ないため、購入機会が限定されますが、社会課題をテーマとしたファンドに興味がある人は、検討してみてはいかがでしょうか。

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