遺贈寄付とは?メリットや手続きの流れ・費用、遺言書の手数料助成キャンペーンも
自身が亡くなった後の財産をNPO・公益法人などに寄付する「遺贈寄付」は、少額からでも寄付ができる社会貢献活動の一つです。
遺贈寄付には遺言書に寄付について記載する方法がポピュラーですが、相続時点ではじめて家族が遺贈寄付の遺志を知ることのないよう、事前に相談しておくことが大切です。その他、遺言書作成には専門知識が必要となり、弁護士など専門家に依頼するとコストがかかるなど、注意しておきたいポイントもあります。
本記事では遺贈寄付の方法とメリット、手続きの流れと遺言書作成費用、遺言書の手数料助成キャンペーンについて解説していきます。
※本記事は、2022年10月12日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- 遺贈寄付とは
1-1.遺贈寄付のメリットと注意点 - 遺贈寄付の手続きの流れ、遺言書作成の費用
2-1.遺贈寄付の方法を選ぶ
2-2.家族や身近な人と話し合う
2-3.専門家への相談を検討する
2-4.場合によっては遺言執行者を指定する
2-5.遺言書に記載する - 遺贈寄付の遺言書作成ができる手数料助成キャンペーン
- まとめ
1.遺贈寄付とは
遺贈とは遺言書・信託などで自身が亡くなった後に財産を人・団体に無償で譲ることを指し、特定の人・団体に寄付することを「遺贈寄付」と呼びます。公益法人・認定NPO法人などへの遺贈寄付は基本的に相続財産ではないとみなされ、相続税の課税対象外です。
遺贈寄付には遺言書による寄付と信託財産による寄付、相続寄付の3種類があります。
- 遺言書による寄付
- 信託財産による寄付
- 相続寄付
遺言書による寄付は、亡くなった方が遺言書に自身の財産を地方自治体やNPO法人・公益法人などに寄付する事を記す方法です。
信託銀行や信託会社に財産を託し、亡くなった後に公益法人などに寄付をしてもらう方法を信託寄付と呼びます。寄付した信託財産は相続財産から控除できるため、結果的に相続税はかかりません。
財産を相続した方(相続人・受遺者)が相続財産を寄付することを「相続寄付」と言います。遺贈寄付を希望する方が生前に相続人・受遺者に直接話す、手紙を残す、エンディングノートに記載するなどの方法で意向を伝え相続した人が寄付する方法が相続寄付です。
相続寄付は、相続人、または受遺者が寄付者となりますが、こちらも国・地方自治体・特定の公益法人・認定NPO法人などに相続寄付をした際には寄付財産は相続税の対象とならない特例があります。
※参照:国税庁「相続財産を公益法人などに寄附したとき」
1-1.遺贈寄付のメリットと注意点
遺贈寄付は少額からでも寄付が可能で、自身が亡き後の財産を社会貢献に活用できるというメリットがあります。
「社会貢献をしたいが、忙しくボランティアに参加できない」「寄付をしたいけど、老後資金を余分にとっておきたいので今はできない」という方でも、寄付を検討しやすい方法となります。
なお、信託財産による寄付は信託銀行・信託会社との契約に基づき実行されますが、遺言書による寄付・相続寄付については、相続人の意向によっては遺贈寄付が実行されないこともあります。
遺言書に遺贈寄付の記載があっても遺産分割協議で相続人全員が寄付をしないことに合意している場合は、遺産分割協議が成立し遺贈寄付は実行されません。
相続においては相続人の意向も重要となりますので、遺贈寄付を検討している方は元気なうちに家族や身近な人と話し合っておくことが望ましいと言えるでしょう。
2.遺贈寄付の手続きの流れ、遺言書作成の費用
遺贈寄付の手順・費用について解説していきます。
- 遺贈寄付の方法を選ぶ
- 家族や身近な人と話し合う
- 専門家への相談を検討する
- 場合によっては遺言執行者を指定する
- 遺言書に記載する
2-1.遺贈寄付の方法を選ぶ
上で述べた通り遺贈寄付には遺言書による寄付、信託財産による寄付、相続寄付の3つの方法があります。
信託銀行・信託会社などと契約し信託財産による寄付を選ぶと遺贈寄付を実行できますが、手数料を支払う必要があります。また、遺言書による寄付・相続寄付と比べ遺贈寄付を撤回・変更する際には手間と時間がかかります。
一方で、遺言書に記載する、生前に伝え相続寄付をしてもらう方法は信託の手数料はかからない一方で、相続人の意向によっては実行されない可能性があります。それぞれのメリット・デメリットを比較して方法を選びましょう。
また、遺贈寄付の方法と合わせて金額や寄付先の団体も決めておくと良いでしょう。
2-2.家族や身近な人と話し合う
遺言書を書く前に、遺贈寄付を含めた相続について家族や身近な人と話し合いましょう。お互いに話し合うことで、相続時のトラブルを回避し、遺贈寄付を実行できる可能性が高くなります。
2-3.専門家への相談を検討する
遺言書には自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があり、それぞれ法律により定められた要件を満たす必要があります。
不備があった場合には法的に無効となってしまいますので、遺言書を作成する前には専門家への相談も検討されてみると良いでしょう。
2-4.場合によっては遺言執行者を指定する
遺言執行者は遺言の内容を実行すると同時に、相続に関わる手続きや必要書類の収集を代行できるため相続人の負担を軽減できます。
相続人の負担を軽減したい方、遺言書による寄付を検討している方は遺言執行者を選任することも選択肢の一つです。
遺言執行者は未成年者・破産者以外であれば就任することができます。家族を遺言執行者に指定することも可能ですが、相続の場面では利害関係が生じるため、弁護士などの専門家もしくは相続人・受遺者では無い信頼できる第三者を指定することも検討されてみると良いでしょう。
2-5.遺言書に記載する
遺言書で遺贈寄付を行う場合は、遺言書に遺贈寄付を行う旨と寄付する財産について詳細を記載しましょう。遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」という二つの方法があります。
特定遺贈とは特定の財産・権利、一定額の金銭を遺贈する方法で、包括遺贈は財産に対する一定の割合を指定する遺贈です。
例えば、不動産を特定遺贈したい場合には「以下の不動産を○○法人に遺贈する(以下は所在地や地番など)」と記載します。
包括遺贈したい際には「私が所有する金融資産のうち〇割を○○(団体名)に遺贈し、残りの〇割を私の長男○○太郎に相続させる」と記します。
時間が経つにつれて、遺贈寄付を含めた相続に関する自身の意向が変わる可能性がありますので、遺言書の内容は定期的に見直しましょう。
3.遺贈寄付の遺言書作成ができる手数料助成キャンペーン
一般社団法人日本承継寄付協会では、2022年9月12日(月)〜2023年2月28日(火)の期間で、遺贈寄付の専門家報酬の一部(5万円分)を助成するキャンペーン(遺贈寄付の専門家報酬助成キャンペーン)を実施しています。
こちらのキャンペーンは全国の士業、金融機関等遺贈寄付の相談を受ける専門家への報酬を対象に行い、寄付検討者への負担を軽減する目的で実施されている「フリーウィルズキャンペーン」の一環となります。
フリーウィルズキャンペーンとは、遺贈寄付が盛んなイギリスで毎年「Free Wills Week (Month)」として専門家が遺言書を無料で作成するイベントの日本版です。
日本承継寄付協会では、日本でも遺贈寄付の文化が根付くように、数多くの地方自治体・大学・団体・士業事務所などの専門家を賛同パートナーとして、各種キャンペーンを開催しています。
フリーウィルズキャンペーンのスケジュール
- フリーウィルズウィーク(無料寄付遺言書作成週間):2022年8月22日(月)〜31日(水)※終了
- 遺贈寄付の専門家報酬助成キャンペーン:2022年9月12日(月)〜 2023年2月28日(火)
まとめ
遺贈寄付の方法とメリット、手続きの流れ、遺言書作成費用と遺言書の手数料助成キャンペーンについてお伝えしてきました。
この記事を参考に遺贈寄付の方法や手順・遺言書作成について知り、今後に活かしていきましょう。
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