ESG経営を行う日本の代表的企業は?5社の取り組みと業績や株価推移も

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の3つの単語の頭文字を合わせた言葉です。企業が目先の利益だけを追求するのではなく、これら3つの要素を経営に取り入れ、持続可能な発展を目指す経営がESG経営です。

近年、大手機関投資家が投資基準にESGを考慮するようになり、ESGへの注目度が高まっています。年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)も、ESGに基づいた株式投資を行っています。

そこで、今回はESG経営を行う代表的企業5社の取り組み、業績、株価の推移を解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年10月11日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. ESG経営を行う代表企業5社
    1-1.ソニーグループ(6758)
    1-2.KDDI(9433)
    1-3.伊藤忠商事(8001)
    1-4.味の素(2802)
    1-5.積水ハウス(1928)
  2. まとめ

1 ESG経営を行う代表企業5社

ESG経営を行う代表企業を選ぶにあたり、MSCI ESGリサーチによるESG格付けと、環境省が実施している「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」を参考にしました。

MSCI ESGリサーチは、世界の企業を対象にESG格付け(最も良いAAAから、最も悪いCCC)を付与しています。日本企業では、AAAが17社、AAが66社、Aが71社、BBBは49社(2022年10月11日時点)です。今回は、AAAの中からソニーグループ、KDDI、伊藤忠商事の3銘柄と、積水ハウスとセイコーエプソンの2銘柄の合計5銘柄について、ESG取り組み例を取り上げます。

1-1 ソニーグループ(6758)

ソニーグループのMSCI ESG格付けは、最上級のAAAです。

同社は、環境への取り組み意識が高く、1994年より「環境報告者」を発行し、最近では2018年から「サスティナビリティレポート」を発行しています。グループ全体のサスティナビリティ推進のために推進担当部署を設置しているほか、社員の意識向上のため、サスティナビリティアワードやイベント・勉強会などを開催しています。

具体的には、新規の資源投資量最小化、水の最適利用、事業所での廃棄物最小化、リサイクル推進、ジェンダーの平等、サプライチェーンにおける人権、労働環境、安全衛生や環境の課題に取り組んでいます。また、2030年までに自社の事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーにするとしています。

2021年度の売上高は、映画や音楽分野の売上増が貢献し、前年比10%増の9.92兆円、純利益は繰延資産に対する評価減の戻り入れにより、同14%減の8,822億円でした。

株価*は9,486円、予想PERが13.8倍です。株価は2022年1月4日の高値(15,725円)から約40%下落し、年初来安値近辺で推移しています。

*株価は2022年10月11日時点、以下同

1-2 KDDI(9433)

KDDIのMSCI ESG格付けは最上級のAAAです。

2019年に「KDDIが目指すSDGs」を発表、2030年を見据えた「KDDI Sustainable Action」を設定しました。サスティナビリティ担当役員と財務担当役員を兼任させ、財務面・非財務面の両面からサスティナビリティ経営の強化に取り組んでいます。

具体的には、国際的な気候変動イニシアチブ(SBTi)のCBT認定を取得、また気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿った情報開示に努めると同時にカーボンニュートラルやサスティナビリティの課題に取り組んでいます。

携帯電話基地局・通信設備などでの省力化や再生可能エネルギーへのシフトを推し進め、KDDIグループ全体で、2050年度の二酸化炭素排出量実質ゼロの実現を目指しています。

2022年3月期の売上高は前年比2.5%増の5.44兆円、純利益が同3.7%増の7,325億円でした。過去5年の平均売上成長率は約2.4%です。大きな売上増は期待できないものの、着実に成長を遂げていると言えそうです。

株価*は4,213円、予想PERが12.4倍、配当利回りが3.0%です。株価は高値圏でレンジ(4,200~4,500円)推移しています。

1-3 伊藤忠商事(8001)

伊藤忠商事のMSCI ESG格付けは最上級のAAAです。

企業理念は「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」です。自社の利益だけではなく、取引先やステークホルダーの期待と信頼に応え、社会課題の解決に貢献したいという願いが込められています。

2018年に策定したサスティナビリティ推進基本方針を基に7つの重要課題を特定し、毎年推進の状況をレビューして、その結果を公表しています。

特に、気候変動への取り組みについては、気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)に賛画を表明し、石炭、発電、石油・ガス開発、パルプ、Dole(農業・食品)の5つのセグメントにおいて、シナリオ分析を実施するなど力をいれています。

また、2050年までに温室効果ガス排出量「実質ゼロ」を実現し、さらに、排出量削減に貢献するビジネスを推進し、2040年までに「オフセットゼロ」を目指しています。

サプライチェーンマネジメントにおいては、外部専門家の助言を受けながら、サプライチェーン上の「人権の尊重・配慮」に対する取り組み状況の確認を進めています。

2022年3月期の売上高は、12.29兆円(前年比18.6%増)、純利益が8,789億円(同99.4%増)と好調でした。エネルギー関連事業や化学品関連事業での、市況価格上昇や取引増加などが売上を押し上げました。

株価*は3,768円、予想PERが7.6倍、配当利回りが3.3%です。株価は現在3,600~4,000円のレンジ内で推移しています。

1-4 味の素(2802)

味の素は、2022年「ESGファイナンス・アワード・ジャパン(環境省)」環境サステナブル企業部門で金賞を受賞しました。同社の強靭で持続可能なフードシステム構築に向けた取り組みや、実効性があるサスティナビリティガバナンス体制の構築が評価されました。MSCI ESG格付けはAAです。

同社は、2030年に「食と健康の課題解決企業」となることを目指し、「10億人の健康寿命の延伸」と「環境負荷の50%削減」の実現が必要だと考え実行しています。また、「環境負荷50%削減」に加え、2050年度までに温室効果ガス排出量のネットゼロを実現することを宣言しています。

具体的な取り組みとしては、温室効果ガス、プラスチック廃棄物、フードロス等による環境負荷の削減の推進が挙げられます。また、資源循環型アミノ酸発酵生産の仕組み活用により、強靭で持続可能なフードシステムを構築し、地球環境の再生に貢献しています。

2022年3月期の売上高は1.14兆円(前年比7.3%増)、純利益が802.2億円(同21.0%増)と好調でした。ヘルスケア等セグメント(電子材料及びバイオファーマサービス)の売上増が、利益を押し上げました。

株価*は3,995円、予想PERが26.1倍、配当利回りが1.4%です。株価は高値圏で推移しています。

1-5 積水ハウス(1928)

積水ハウスは、企業ビジョンの中核にESG経営を据え、働き方や女性活躍などの社会課題、生態系の保全、気候変動など環境課題に取り組んでいます。MSCI ESG格付けはAAです。

具体的な環境への取り組みとしては、「環境未来計画」があります。人にも地球にもやさしい、長く住み継がれていく住環境の創造を目指し、戸建住宅は二酸化炭素排出削減効果が高いZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及に取り組んでいます。

ZEHは断熱性能が高く快適性に優れています。太陽光発電が標準装備されており環境にやさしい住宅です。同社の2021年度の戸建住宅ZEH比率は92%で、日本全体のZEH比率16.8%を大きく上回っています。

こうした取り組みが評価され、同社も2022年「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」環境サステナブル企業部門で金賞を受賞しています。

同社は、2030年度までに社用車の電動化率100%を推進、電動化率を2024年度に32%、2027年度には65%を目標としています。

2022年1月期の売上高は2.58兆円(前年比5.8%増)、純利益が1,539.0億円(同24.6%増)と好調でした。

株価*は2,460円、予想PERが9.5倍、配当利回りが4.0%です。株価は高値圏で推移しています。

*株価は2022年10月11日時点

まとめ

今回はESG経営を行う代表企業5社について取り組みと業績、株価推移を解説しました。機関投資家の投資対象にESGが考慮されるようになると、企業はESGを考慮した経営が主流となるでしょう。

大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤングが、19カ国の機関投資家を対象にESG投資状況を調査した結果、機関投資家の74%がESGへの取り取り組みが遅れている企業を投資対象から除外する可能性が高まっていると回答しました(参照:EY「EY調査、機関投資家の74%が環境問題の実績に乏しい企業からの投資引き上げを検討」)。

今回取り上げた企業ばかりではなく、ESG経営があたりまえになる時代が迫っています。

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