世界労働機関とナイキ 衣類・フットウェア業界の労災減少にむけたイニシアチブ開始

世界労働機関(ILO)の「ビジョン・ゼロ・ファンド(#1)」と米スポーツ用品大手ナイキ(ティッカーシンボル:NKE)は8月29日、衣類・フットウェア(履物)を生産する労働者のケガや死亡事故をへらすためのイニシアチブを開始した(*1)。労働災害の原因をつきとめ、労働安全衛生の向上に資するツールの提供をめざす。

同イニチアチブを通じ、衣類・フットウェア業界に従事する労働者の通勤時の事故原因にくわえ、労働者とその家族、および業界全体へのネガティブインパクトを把握する。そして、労災を削減するために、さまざまな状況下で適用できる共通の標準化されたアプローチの開発をめざす。

経済協力開発機構(OECD)のデータによると、世界中で毎年130万人が通勤時に死亡し、最大5,000万人がケガを負っているという。世界の道路交通事故の約10~22%は商用車によるものである。

衣類・フットウェア業界に従事する労働者もまた、多くの国々で道路交通事故にまきこまれている。その理由として、長距離通勤やバイクのような安全性の低い乗り物の利用、徒歩通勤、大型商用車によるロードシェアをあげている。

同イニチアチブでは、複数の国々で労働者、雇用主、政府、およびILOの専門家と協議し、「セオリー・オブ・チェンジ(#2)」の策定を試みる。ナイキの製品を生産する工場がある国では、通勤時の安全性向上に資する実践的で容易に利用できるガイダンス資料も作成する計画だ。

ナイキは、サプライヤーをふくめたバリューチェーン(価値連鎖、#3)で、安全・衛生・健全な職場環境の提供をめざす。これは、同社の製品を生産するひとびとに世界水準の安全・健全な職場環境の構築をめざす「2025 Health & Safety Target」に沿うものだ。

近年はESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まるなか、多くの企業が職場環境の改善にむけた取り組みを強化している。アマゾン(AMZN)は従業員の身体への負担を軽減する搬送ロボットの研究開発をすすめる。エアビーアンドビー(ABNB)は従業員の働く場所や居住地を自由に選択できるようにし、柔軟な働き方がしやすい環境を整備する(*2)。こうした動きが広がり、誰もが安心して働くことができる環境や、働き方を自由に選べる環境が整っていくことに期待したい。

(#1)ビジョン・ゼロ・ファンド…2015年にG7とILOが協力して開始。「グローバル・サプライチェーンにおける重大・致死的な労災、傷害、職業疾病の発生をゼロにする」というビジョンをかかげ、安全衛生の課題解決資するソリューションの開発・提供をめざす。政府、使用者・労働者団体、企業、その他のステークホルダーを結集する。

(#2)セオリー・オブ・チェンジ…社会課題の解決を目指す事業経営の骨子の考え方。

(#3)バリューチェーン…企業の事業活動(原材料調達から製造、流通、販売、アフターサービスまで)を価値創造のための一連のながれとしてとらえ、付加価値を分析するツール。

【参照記事】*1 世界労働機関「Occupational safety and health: ILO’s Vision Zero Fund and Nike launch initiative to reduce injuries and deaths from road accidents among garment and footwear workers
【関連記事】*2 エアビー、働く場所や居住地を自由に選択できる環境整備。転居でも給与維持

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