オーステッド、25年までに全サプライヤー100%再エネ利用要請。製薬大手GSKも持続可能な調達プログラムを発表

デンマークのエネルギー大手オーステッド(ティッカーシンボル:ORSTED)は8月10日、2025年までに全サプライヤーが使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替える目標を発表した(*1)。

同目標は、エネルギー業界初となる、科学的根拠にもとづく40年までのネットゼロ目標の達成をサポートするものだ。オーステッドは06年以来、スコープ1(#1)とスコープ2(#1)の排出原単位(#2)を87%削減しており、25年までに自社のカーボンニュートラルの達成に向けて順調に進捗している。

今後も再生可能エネルギーの拡大をすすめるとともに、科学的根拠にもとづいて気候アクションを起こすことにコミットする。そのため、再生可能エネルギー発電設備に必要な部品製造、輸送、設置、運用に伴うサプライヤーの排出削減にも取り組んでいる。そして今回、再生可能エネルギー100%目標の対象を、戦略的サプライヤーから全サプライヤーに広げる。

新目標の達成には、①オンサイトの再生可能エネルギー発電設備への投資、②再生可能エネルギープロジェクト関連のPPA(電力購入契約)市場への参入、③グリーン電力証書の購入などのアクションが求められる。オーステッドはサプライヤーが最良なソリューションを選択できるよう支援する意向だ。

オーステッドは20年にサプライチェーン脱炭素化プログラムを策定。同社で利用する部品などの調達額で60%を占めるとともに、もっとも炭素集約型の分野の戦略的サプライヤーと協働し、洋上風力サプライチェーンの脱炭素化を進めている。

同プログラムの一環として、風力タービン(風車)、基部、ケーブル、変電所の製造やその他部品・サービスの提供に際し、戦略的サプライヤーに対して100%再生可能エネルギーを利用する目標を設定した。同プログラムは、策定から2年間ですでに大きな進展をみせているという。戦略的サプライヤーの大半は100%再生可能エネルギーを利用しているほか、15%のサプライヤーは25年までに再生可能エネルギー100%目標の達成にコミットしている。

オーステッドは、世界でもっとも影響力のあるサステナビリティ指標のひとつであるコーポレート・ナイツ社のグローバル100インデックス(22年度)にて、「世界で最も持続可能なエネルギー企業」に4年連続で選出された気候変動対策のグローバルリーダーだ(*2)。7月上旬には世界最大級の洋上風力発電所プロジェクト「Hornsea 3」の事業権を獲得(*3)。サプライチェーン全体の1.5度目標達成を推進する「1.5度サプライチェーン・リーダーズ」にも参加し、気候変動を抑制する取り組みを強化する。

また、英製薬大手グラクソ・スミスクライン(ティッカーシンボル:GSK)は9月20日、新たにサプライヤー向けの持続可能な調達プログラムを発表した(*1)。各サプライヤーのサステナビリティ関連の取り組みにコミットすることを要請および支援し、ネットゼロとネイチャー・ポジティブ(#3)の実現を目指す。

製薬業界の環境フットプリント(#4)の多くは、サプライチェーン(供給網)が占めている。とくに、資源を大量に消費する医薬品原薬(医薬品有効成分、APIs)の製造は環境負荷が高い。GSKの場合、カーボンフットプリント(#5)の40%はサプライチェーン上で発生しているほか、サプライヤーが水、廃棄物、生物多様性に大きなインパクトをもたらしている。このことから、サプライチェーンで協働することは、ネットゼロと生物多様性の保全というGSKの環境目標を達成するうえで極めて重要となる。

新たに公表した持続可能な調達プログラムは、サプライヤーに対し、炭素、電力、熱、交通、水、廃棄物、持続可能で森林破壊ゼロの原材料調達に関する取り組みにコミットすることを要請および支援する。

取り組みには排出量の開示、炭素削減目標の設定、SBT(#6)イニシアチブの1.5℃シナリオに沿った計画の遂行、再生可能エネルギーへの切り替え、水ストレスの高い地域での持続可能な水資源利用100%(ウォーターニュートラル)の実現、GSKの責任ある調達に関する最低基準の準拠などが含まれる。輸送業者にはグリーン輸送関連ソリューションの提供を求める。プログラムの一環として、サプライヤーによる新たな環境サステナビリティ手法の教育および導入を積極的にサポートする。10月には160社超のサプライヤーと、共通目標の達成に向けた協働の仕方などを協議をした。

近年は、サプライヤーを協調としてサステナブルな取り組みを実践する企業が散見される。米小売り大手ウォルマート(WMT)は、30年までにサプライチェーン全体で10億トン(ギガトン)のGHG削減を目標とする「プロジェクト・ギガトン」を展開する。現在では4,500社超のサプライヤーが参画し、気候アクションに関する民間部門最大級のコンソーシアムとなる。21年12月には、プロジェクト・ギガトンを通じた新たな融資プログラムも開始し、融資の面からサプライヤーのサポート強化を図っている(*2)。

(#1)スコープ1…事業者みずからによるGHGの直接排出。
スコープ2…他社から供給された電気や熱などを使用して発生する間接排出。

(#2)排出原単位…一定量の電気をつくる場合のCO2排出量。

(#3)ネイチャー・ポジティブ…生物多様性の損失に歯止めをかけ、自然をプラスに増やしていくこと。

(#4)環境フットプリント…原材料の調達から廃棄、再利用まで、製品や企業活動が環境にどれだけの負荷を与えているかを定量的に示すもの。

(#5)カーボンフットプリント…商品やサービスの原材料の調達から製造、輸送、消費後の廃棄、再利用に至るまでのライフサイクル全体で排出されたGHGを二酸化炭素(CO2)排出量に換算すること。

(#6)SBT…SBT(Science Based Targets):パリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた企業の温室効果ガス排出削減目標。国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による気候変動に関する共同イニシアチブ「SBTイニシアチブ」が目標を認定する。

【参照記事】*1 オーステッド「Ørsted extends its 100% renewable electricity target to all suppliers
【参照記事】*2 オーステッド「World’s Most Sustainable Energy Company 2022
【関連記事】*3 オーステッド、英政府の再エネ支援制度下にて世界最大級の洋上風力発電所事業獲得。2027年運営開始へ
【参照記事】*4 グラクソスミスクライン「GSK launches Sustainable Procurement Programme for suppliers
【関連記事】*5 【米国株情報】ウォルマート、GHG排出削減に向けた新たな融資プログラムを創設

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