「物語が生まれる、希望のまちをつくる」NPO法人抱樸が都内で進捗報告会を開催、寄付を呼びかけ

NPO法人抱樸(ほうぼく)は2022年11月18日、「希望のまちプロジェクト」の進捗報告イベントを、明治学院大学キリスト教研究所の後援を受けて同大学の白金キャンパスで開催した。希望のまちプロジェクトは、北九州にある暴力団の本部事務所の跡地をほうぼくが買い取り、その地に複合型社会福祉施設を建設、「誰もが助けてと言えるまち」を目指している。

イベントでは、希望のまちプロジェクト顧問で元厚生労働事務次官の村木厚子氏、手塚建築研究所代表の手塚貴晴氏と手塚由比氏、作家・活動家の雨宮処凛氏、哲学研究者の永井玲衣氏、ゆずりは所長の高橋亜美氏、東京工業大学 副学長の上田紀行氏、明治学院大学教授の渡辺祐子氏、明治学院大学副学長の永野茂洋氏がゲストとしてリレー形式で講演し、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏もビデオメッセージを寄せた。

手塚貴晴氏は、希望のまちプロジェクトで建設される施設について「共生する植物のように、お互いに助け合っていることをイメージして設計した」と話し、手塚由比氏は「初めて来る人たちにとっても、住んでいる人たちにも居心地が良い場所を目指している」と意気込みを示した。

村木氏は、希望のまちプロジェクトについて「誰かに『助けて』と打ち明けるのはすごく勇気がいる。だから、その手前が必要。居場所があり、世間話ができて、愚痴や泣き言が言えて、そこから相談があって専門家の支援につながっていく。希望のプロジェクトがつくる『助けてと言えるまち』は、そういうつながりをつくれる場所になると思っている」「希望のプロジェクトは『施設づくり』ではなく、『まちづくり』をしようとしている。これからつくる施設そのものも、まちになる・地域になるということが素晴らしい」と思いを伝え、「この取り組みが北九州から全国に広がるためには、データと実例が必要。希望のまちを、この実例にしたい。ぜひみなさんにも応援してほしい」と呼びかけた。

雨宮氏は、「私自身も困窮者支援をしているが、この2年半は毎日野戦病院のような状態」とコロナ禍での過酷な現実を伝え、「北九州市で希望のまちプロジェクトが先行してくれたら、ものすごく良いモデルになる」とプロジェクトの重要性を訴えた。

永井氏は、「希望のまちが誰にとっての希望なのかという問いを考えてみると、それは私にとっての希望。ほうぼくが掲げる『なんとかなる』という言葉を、まわりの人から言ってもらえるということ、それだけで希望」「『助けて』と言える希望のまちをつくるために、今まさにほうぼくが『助けて』と言っている。私もそれに応えたいし、みなさんと一緒に希望のまちをつくっていきたい」と笑顔を見せながら語った。

高橋氏は、「『助けて』と言うのはとても勇気がいるので、希望のまちが目指す、安心して『助けて』と言える環境をつくることは本当に大事。加えて、希望のまちでは『助けて』と直接口にしなくても、その人の生きてる姿や表情を誰かが見てくれて声をかけてくれる、何か魔法のようなことが起こっていくんじゃないかと思っている」と大きな期待を寄せた。

上田氏は、「今の社会は表面上の成績とか生産性とか、役に立つということを目指して褒めあっているが、その人が老いたり病になったりしたときには認められるだろうか。人間性を切り捨て、人間の振れ幅というものがなくなって、今の社会はとても不自由になっている。そういった中で、子どもたちの多くも1回の人生で失敗をしてはいけないと思ってしまっているが、失敗した人や苦しんでいる人を大人が救う姿を何度も見せていくことで、子どもたちにも『失敗しても誰かが助けてくれる』という希望を見せることができる。希望のまちは、苦しいことを苦しんで、楽しいことを楽しめる、人間としての自由があり、人間のダイナミズムをどんどん広げてくれる」と言葉に力を込めた。

永野氏は、自身の取り組みから「言葉がわからない外国人の子どもが住みやすいまちをつくれば、それは日本人にとっても必ず住みやすいまちになる」とまちづくりに関しての所見を述べ、「私も希望のプロジェクトを応援していきたい」と語った。

ゲスト講演を受けて、ほうぼく代表の奥田知志氏は「たくさんの方々に来ていただいて、本当に心強く感じている。またゲストのお一人お一人からのお言葉が、本当に沁みた。希望のまちがどうあるべきか、というゲストのみなさんのお話を持ち帰り、形にしていきたい」と総括した。

また、ほうぼくのこれまでの活動にも触れ、「野宿をしているホームレスの方は、生きる気力を失うほどに追い詰められてしまっている。『生活保護申請をしよう、私達が全部やるから一緒に生きていこう』と言っても、『はい、わかった、助けて』と言う人は少ない。それはなぜか。それは、もう一回生きていこうとする気が起きないから。内発的に生きる動機が湧いてこない。では、どうすればその気になってくれるのか。私は、人とのつながりしかないと思う。」

「孤立化した社会の中では、自分だけしかいない。これは本当にきついことなんじゃないか。人とのつながりが失われるということは、その人との間で紡がれる『物語』を失うということ。その物語は、生きる意味であり動機でもある。この物語を生み出すまちを、私はつくりたい。」

「1990年に北九州市で中学生がホームレスを襲う事件が起こった。その事件に関して、ホームレスのおじさんが『こういうことは早くやめてほしいけど、その中学生は家があっても帰るところがないんじゃないか。誰からも心配されてないんじゃないか。帰るところがない、誰からも心配されてないやつ、そういうやつの気持ちは、俺はホームレスだからわかる』と言った。私は、その言葉を聞いて雷に打たれるほど衝撃を受けたが、このおじさんと出会った場所が、実は希望のまちから歩いて5分のところ、そこが襲撃事件のあった場所。振り返れば30数年前に、私にとって一番のきっかけになった、衝撃を受けたのがこの場所だった。」

「私はそれから、ホームレスのおじさんたちをずっと追いかけてきたが、あの中学生はその後どうなったんだろうか。夜中の2時に街をウロウロしても誰からも心配されなかった彼らは、ひょっとすると工藤会という組織の中で『お前に期待してる、お前が必要だ』と言われて物語が与えられていったということもあったんじゃないか。だがその物語は、人を幸せにしたんだろうか。私はもう、子供たちをそっちには渡さない。この希望のまちに来たら、物語が生まれる。『君が生きていく物語』がここで生まれる。30年来の宿題を果たすためにも、この希望のまちはどうしてもやりたい」と決意を語った。

奥田氏が希望のまちに込めた強い想いは、ほうぼくに関わる一人ひとりの心や自治体をも動かし、「みんなで希望のまちをつくる」という一つの大きな物語になろうとしている。

一方で、資金面では2022年4月から寄付を募っているが、2023年3月31日までの寄付金目標3億円に対し、2022年11月14日時点で1億1,029万4,289円(36.7%)の進捗と、施設の建設資金は依然として不足している状況だ。2022年11月1日からは、北九州市によるふるさと納税での応援クラウドファンディング(ガバメントクラウドファンディング※)も開始されており、2023年1月29日まで寄付を受け付けている。

希望のまちで紡がれるのは、愛と再生の物語だ。希望のまちづくりに関わっていくことで、私たち自身もまた、自分が生きたい物語や大切な人との物語を見つめ直していくことができるのかもしれない。

【関連サイト】ふるさとチョイス・ガバメントクラウドファンディング「“希望のまちプロジェクト” 誰一人取り残さない「希望のまち」を実現したい~暴力団本部事務所跡地をみんなの拠点に~
【関連サイト】認定NPO法人抱樸「希望のまちプロジェクト
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※ガバメントクラウドファンディング®(GCF®)とは、ふるさとチョイスがふるさと納税制度を活用して行うクラウドファンディング。

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