データから見るトレーダー向けNFTマーケットプレイス
今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の中村翔太 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
2021年頃にブームを引き起こしたNFTの取引を行うOpenSeaを筆頭としたマーケットプレイスは、2022年には多数の企業やプロジェクトが参入し、様々なNFTマーケットプレイスを提供しています。以前の記事でもNFTマーケットプレイスをまとめましたが、今回は以前扱わなかったものを取り上げ、さらにデータを用いて比較を行い、NFTマーケットプレイスについて概観します。
OpenSea
OpenSeaは、NFTマーケットプレイスの中で最大級の市場規模を誇るプラットフォームで、2017年12月に創業を果たし、ニューヨークに本社を構えるスタートアップ企業により運営されています。
主な特徴としては、スマートコントラクトを書くことなく誰でも簡単に自分のNFTプロジェクトを開始することができる点や、OpenSeaが提供するコントラクトでは二次流通の際にNFTの作者は、クリエイターフィーとして収益を得ることが可能となっている点が挙げられるでしょう。また、2022年11月時点では、7つのブロックチェーンネットワークに対応しており、利用者層や経済圏に大きく影響することが見込めるため、今後、対応するブロックチェーンは増えていくのではないかと思われます。
OpenSeaにはNFTの取引に必要な、おおよその機能が備わっており最もスタンダードなNFTマーケットプレイスであり、NFTの単なる売買だけでなく、ユーザーは2種類のオークション形式で販売を行うことが可能となっており「Sell to highest bidder」という一般的なオークション形式の販売方法と「Sell with declining price」という価格が随時下がる、ダッチオークションとも呼ばれる方法を選択することができます。
また、プラットフォーム上で表示されている作品は、全てがOpenSeaのコントラクトからミントされているわけではなく、他のマーケットプレイスを利用してのミントや、自分でコントラクトを作成し、デプロイするなどしてNFTを作成したものも表示されています。しかし、注意しなければならない点として、OpenSeaのプラットフォーム上で表示されるには特定の条件があり、メタデータと呼ばれるjsonデータの構造がサポートされている形式でなければ表示されないということが挙げられます。
Dune Analyticsというブロックチェーンデータ分析ツールによると、2022年11月時点でのアクティブユーザー数はおよそ26万3,000人とクリプト全体のベアマーケットも合間ってか、全盛期のユーザー数の約半数まで落ち込んでしまっています。
また、今年の初めにシリーズCで$3億の資金調達を達成し、企業価値は$133億にまで到達しユニコーンWeb3企業の一旦をになっています。
Blur
Blurは、プロトレーダー向けのNFTマーケットプレイスとして2022年10月にローンチしたプロジェクトで、運営チームにはMIT、Citadel、TwitchやY Combinator等での経験を持つ開発者とクリエイターが参加しており、既にParadigmやKeyboard Monkeyなど10名以上の投資家からおよそ1,100万ドルの資金調達を果たしました。
主な特徴として、エアドロップを介してトレーダーへのインセンティブ設計というロイヤリティの仕組みが挙げられます。この仕組みでは、NFTトレーダーは独自のロイヤリティを設定することが可能となっており、これによりNFTの製作者への収益率は変動し、トレーダーへのエアドロップ量も変動します。従って、トレーダーがロイヤリティを無しとした場合はNFTの製作者には収益が発生せずトレーダーへのエアドロップも発生しません。逆にロイヤリティを多く設定したトレーダーはにはより多くのエアドロップが与えられます。
また、Blurの公式Twitterでは、取引ボリュームがOpenSeaを上回ったことを報告するツイートがされており、ここまで広く注目されている背景としてBlurがとった戦略が大きく関係しているとされています。戦略の詳細として、Blurは、トレーダーをプラットフォームに集めるための戦略として「プラットフォーム手数料の一時停止」を打ち出し、他のプラットフォームで取引した際に生じる手数料をロイヤリティに回すことでエアドロップを獲得するように推奨しています。
X2Y2
X2Y2は、トレーダー向けのNFTマーケットプレイスとして2022年2月にローンチしたプロジェクトで、運営チームは真に分散化されたNFT市場を構築し、それをコミュニティに還元するというビジョンを共有しています。
主な特徴として、ERC-20トークンを利用した独自のユーティリティトークンを発行し、ガバナンスや手数料の共有によるインセンティブ設計をしている点が挙げられます。これにより、高品質のNFTのリストと取引促進やプラットフォームユーザーに報いると説明しています。
また、このX2Y2トークンはUniswapなどで取引することが可能になっており、2022年11月29日の時点では1ドルあたり、23.5X2Y2トークンとなっています、日本円に直すと1X2Y2あたりやく5.88円となっています。
X2Y2はTwitterにて既存のNFTプロジェクトとこれから新たに立ち上げるNFTプロジェクトの両方全てのコレクションにロイヤリティを強制することを決定した旨をツイートしました。背景として、同月10日にOpenSeaがロイヤリティを徴収し続ける方針であることを発表した影響もあると考えられます。クリプト業界全体の市場低迷もあり、NFT保有者はできる限り高額で販売するためにロイヤリティを強制しない、もしくは選択できるプラットフォームに出品する傾向にあるとされ、現在ではそのようなプラットフォームが主流になりつつありBlurもその中の1つです。そんな逆風の中で、X2Y2のクリエイターを尊重した方針決定は「勇敢な動き」と言えるでしょう。
Dune Analyticsを利用した比較
NFTのデータを専門としたリサーチチームであるsealouncにより提供されているDuneのダッシュボードを利用して、本記事で取り上げた3つのマーケットプレイスの、取引ボリューム、ユニークユーザー、取引回数について比較します。
2022/11/30 | Volume | UU/k | Volume/UU | TX per Users | Average transaction price |
OpenSea | 1,633ETH | 5,343 | 0.3056ETH | 2 | 0.15ETH |
Blur | 1,430ETH | 1,514 | 0.9445ETH | 4.5 | 0.2ETH |
X2Y2 | 204ETH | 180 | 1.13ETH | 1.8 | 0.62ETH |
やはり、OpenSeaは最大級のマーケットプレイスであるため、ユニークユーザー数は頭ひとつ抜きん出ています。4桁に達しているマーケットプレイスはOpenSeaとBlurのみとなっており、他のマーケットプレイスは1日400名以下で取引をしていることがわかります。現状、NFTマーケットプレイスとして、注目を集めているものはOpenSeaとBlurのようです。
Blurに関しては、やはりプロトレーダー向けのマーケットプレイスという特徴から予想できるように1人あたり平均取引回数が他の2つのプラットフォームより多くなっています。これは、ロイヤリティを設定した取引を行うとエアドロップが獲得できるという仕組み上、高額の取引一回よりも平均的な価格帯での取引回数を増やすことでエアドロップ獲得数を上ようとしているのではないかと予想できます。
X2Y2は、一回あたりの取引値の平均がの2つのプラットフォームより大きくなっています、これは、数式に入れる数値が多ければ配当も増加するため、X2Y2トークンの受け取り枚数の計算方式が影響しているのではないかと予測されます。
終わりに
上記で紹介させていただいたNFTマーケットプレイスはあくまで一部でしかありませんが、どのプラットフォームも違った特徴を持ち合わせており差別化を図ろうとしています。しかし、方法は違えどクリエイターを尊重するという点ではどのプラットフォームも共通していると言えるでしょう。クリエイターとして利用する場合、購入者として利用する場合での利点を考えた時に、どこのマーケットプレイスを利用するのか、判断材料としてどのような特徴があるのか、ロイヤリティは選択制なのかなどの視点を持つのも良いかもしれません。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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