2023年は国家の安全強化が加速か?サクソバンクが10大テールリスクの予測を発表

サクソバンク証券株式会社は12月7日、親会社でデンマーク・コペンハーゲンに本社を置くオンライン銀行サクソバンクによる2023年の「大胆予測」を発表した。アナリストが「実際に起こる可能性は低いものの実際に起こった場合には世界市場に多大な影響を及ぼす」という独自の観点で10大テーマを掲げている。

テーマは①テック業界のビリオネアがコンソーシアムを組成しエネルギー転換を加速② マクロン仏大統領が辞任③金は3000ドルまで上昇④EU軍の創設でEUは完全に統合⑤ある国が25年から食肉生産に課税、30年までに食肉生産を全面禁止⑥英国、ブレグジット撤回の国民投票を実施⑦インフレ抑制のために広範な物価統制が導入される⑧OPEC+、中国、インドがIMFを脱退⑨日本は金融システムを抜本的に見直し、円安の限界を200円に設定⑩タックスヘイブン禁止によりプライベートエクイティに打撃――というもの。

パンデミック禍に講じられた過度な財政刺激策、グローバルサプライチェーンの混乱、ロシアのウクライナ侵攻、深刻なインフレショックに見舞われている2022年。中央銀行の大幅な金融引き締めによって、正常な状態に戻り始めると信じている人も少なくない。しかし、サクソバンクは、パンデミック以前のディスインフレの状態に戻ることはないと主張している。理由は、「世界的な戦時経済に突入しており、世界の主要国は、現実の軍事的観点から、あるいはパンデミックの経験やロシアのウクライナ侵攻によって露呈した、サプライチェーン、エネルギー、金融面での不安から、あらゆる面で国家の安全を強化しようと躍起になっている」ためだ。

結果、何が起こるか。テック業界のビリオネアたちが集結し、必要なエネルギーインフラの整備とエネルギー転換のために1兆ドル超の資金を調達する。マクロン仏大統領は22年の国民議会選挙での与党過半数割れを受け、23年中に辞任。後任には、極右政党のルペン氏が候補となると、なかなか刺激的な予測だ。英国でも、スナク首相が解散総選挙を実施し辞任。自由民主党の支持上昇に注目し、スターマー労働党党首がEU再加盟の国民投票を支持する立場で出馬するというシナリオを描いてみせた。

EU加盟国は、EU軍創設に動き出す。新たな軍の資金調達のためにEU債が発行され、EUのソブリン債市場が厚みを増す。

そして、日本は金融システムを抜本的に見直し、円安の限界を200円に設定と予測。当初、日銀と財務省は、外貨準備残高の半分以上を費やした後、財政の維持が脅かされることを認識し、為替介入を減速・停止することで事態に対処を図る。しかしドル円が160円、170円と上昇し、物価上昇に対する国民の不満が高まってくると、その危機に対して大胆かつ新たな措置が必要となる。ドル円が180円を超えて上昇する局面で、政府と中央銀行は動き出す。まず、日銀が円相場の下限を200円と宣言。根本的な金融システム再構築により、日本が危機対応モデルを確立すると同社は予測してみせる。日本では金融システムを抜本的に見直し、円安の限界を200円に設定することによって、金融システムを根本的に再構築。それを機に、安定した軌道を回復するというものだ。 今年も残すところ3週間余り。どのような年が待っているだろうか。

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