中古アパート経営の利回りは?東京・大阪・名古屋など主要エリアを徹底比較

中古アパート経営にとって、利回りは重要な判断材料の一つです。毎月の家賃収入や利益、資金回収の目処など、大まかにアパートの収益性を把握する際に役立ちます。

そこで今回のコラムでは、中古アパート経営における地域ごとの利回りを比較します。東京、大阪、名古屋の大都市圏に加えて、不動産投資に適しているとされる全国の中枢都市についても紹介します。

目次

  1. 中古アパート経営の3つの利回り
  2. 中古アパート経営の利回りにおける特徴
  3. 東京・大阪・名古屋など主要エリアにおける中古アパート経営の利回り
    3-1.中古アパート経営の利回りの比較
    3-2.エリアごとに異なる利回りの特徴
  4. 中古アパートの物件選びと利回り
  5. 中古アパートを利回りだけで判断できない理由
  6. まとめ

1 中古アパート経営の3つの利回り

中古アパート経営をはじめとする不動産投資には、「表面利回り」「実質利回り」「想定利回り」の3つの利回りがあります。

それぞれ下記のような違いがあるので覚えておきましょう。

表面利回り

物件価格に対して得られる年間の家賃収入の割合を表します。数値が高い方が年間収入が多いと判断できます。例えば、4,000万円のアパートの表面利回りが10%の場合、年間の家賃収入は400万円、表面利回りが8%なら年間の家賃収入は320万円ということです。

計算式は「現在の年間家賃収入÷物件価格×100」となっています。

実質利回り

物件価格に対して得られるおおよその利益の割合を表します。年間の家賃収入から、税金や管理費などの年間支出を差し引いた金額を用いて計算します。表面利回りより数%低くなります。

計算式は「(現在の年間家賃収入−年間支出)÷物件価格×100」となっています。

想定利回り

満室を想定して計算した表面利回りのことです。すでに入居者がいる物件情報に記載されているケースでは、(現況)表面利回りと併記されていることがほとんどです。

物件情報に想定利回りが記載されているケースは、部屋に空室がある場合です。販売している段階で満室状態あれば表面利回りと同じ値になるため記載されていませんが、アパートなど複数戸ある物件では全ての部屋が埋まった状態を指して使用されることがあります。

計算式は「満室になった場合の年間家賃収入÷物件価格×100」となっています。

2 中古アパート経営の利回りにおける特徴

中古アパート経営では、築年数が経つと物件価格が下落し表面利回りが上昇します。家賃の下落幅よりも、物件価格の下落幅の方が大きくなりやすいからです。

またアパートの状態を維持するために、メンテナンスや修繕工事、設備機器の交換なども行います。そのため築年数が経つごとに経費がかかるようになり、実質利回りは下落していきます。

下記、利回りに関する中古アパートのメリットとデメリットをまとめました。参考にしてください。

メリット デメリット
・新築アパートに比べると利回りが高い
・ワンルームマンション投資に比べると利回りは高いことが多い
・空室リスクを分散することができるため利回りは下がりにくい
・部屋数がたくさんあるため、空室の数が増えると利回りが大きく下がる
・家賃の下落によって利回りは下がる
・大規模修繕工事が必要になると実質利回りが下がる

これらを踏まえて、全国の主要エリアにおける中古アパート経営の利回りを見ていきましょう。

3 東京・大阪・名古屋など主要エリアにおける中古アパート経営の利回り

この項目では、東京、大阪、名古屋の3大都市に加えて、横浜市や札仙広福(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の利回りを比較していきます。

3-1 中古アパート経営の利回りの比較

下記の表は、不動産投資と収益物件の情報サイトである健美家の「収益物件市場動向四半期レポート2022年4月〜6月」から抜粋した、2022年4月〜6月に登録された中古アパートの表面利回りです。

都市 築10年未満 築10年〜19年 築20年以上
全国平均 6.67% 7.51% 9.65%
札幌市 7.08% 8.33% 9.72%
仙台市 6.78% 9.22% 12.36%
東京23区 6.03% 6.29% 6.95%
東京市部 6.40% 8.40% 8.30%
横浜市 7.42% 7.48% 8.66%
名古屋市 6.79% 7.38% 8.81%
大阪市 6.23% 6.73% 10.04%
広島市 5.98% 9.15%
福岡市 6.53% 6.45% 8.07%

※出典:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家「収益物件市場動向四半期レポート2022年4月〜6月」より抜粋

表を見て分かる通り、中古アパートの利回りはエリアによって幅が大きいのが特徴です。築10年未満では、最も利回りが低いのは広島市の5.98%で、最も高いのが名古屋市の7.42%となっており、約1.5ポイントの差があります。例えば、4,000万円の中古アパートでは、広島市の場合の年間家賃収入は239.2万円、名古屋市の場合の年間家賃収入は296.8万円となり、約60万円の違いがあります。

また築20年以上で最も利回りが低いのは東京23区の6.95%で、最も高いのが仙台市の12.36%となっており、約2倍の差があります。4,000万円の中古アパートでは、東京23区の場合の年間家賃収入は278万円、仙台市の場合の年間家賃収入は494万円となります。

3-2 エリアごとに異なる利回りの特徴

エリア別の利回りを把握したところで、この項目ではそれぞれのエリアの利回りについて特徴を見ていきましょう。

札幌市

札幌市の利回りは、それぞれの築年数で高くなっているのが特徴です。築10年未満の7.08%は2番目、築10〜19年の8.33%は3番目、築20年以上の9.72%は3番目の高さになっています。

仙台市

仙台市の大きな特徴は、築10〜19年の9.22%、築20年以上の12.36%が最も高い利回りになっていることです。特に築20年以上の利回りは、東京23区の6.95%の約2倍になっています。

東京23区

築10年未満では広島市に次いで2番目の低さですが、築10〜19年、築20年以上では最も低い利回りになっています。またいずれの築年数でも利回りは6%台で推移しており、利回りが高い物件は少ないと推測できます。

東京市部

東京23区と比べて、利回りは高めに推移していくのが特徴です。築20年以上の利回りが8.30%になっており、築10〜19年の8.40%よりも低くなっています。通常は築年数が経つごとに物件価格が下落しますが、東京市部の場合は、物件価格が下がりにくい状況にあると考えられます。

横浜市

築10年未満は7.42%となっており、どのエリアよりも高い利回りになっているのが特徴です。ただし、築10〜19年の利回りが7.48%となっており、ほとんど上昇していません。また築10年未満から築20年以上への上昇率は1.167倍で、東京23区の1.153倍とほとんど同じです。

名古屋市

名古屋市の特徴は、3大都市のうち築10年未満と築10〜19年の利回りが最も高くなっていることです。また中古マンションの場合は、築10〜19年(5.23%)から築20年以上(10.44%)への上昇率は1.996倍ですが、中古アパートでは築10〜19年(7.38%)から築20年以上(8.81%)への上昇率は1.193倍となっています。

大阪市

大阪市の利回りの動きは、築10年未満と築10〜19年が6%台と低いのに、築20年以上になると10%を超えることが特徴です。2019年7〜9月の築20年以上でも利回りは13.05%となっており、築年数が経つことによって利回りが急上昇する傾向があります。

広島市

築10年未満の利回りは、唯一の5%台である5.98%です。これは東京23区よりも低い値です。こうした傾向は長く続いており、2022年1〜3月は5.96%、2021年7月〜9月は5.73%、2021年4月〜6月は5.63%となっています。

福岡市

福岡市の利回りの特徴は、築10〜19年(6.45%)と築20年以上(8.07%)が東京23区についで2番目に低い値になっていることです。また注目しておきたい点は、築10年未満は6.53%である一方、築10〜19年が6.45%になっている点です。利回りの上昇率が抑えられているということが分かります。

4 中古アパートの物件選びと利回り

前述したように、中古アパートの物件情報に記載される利回りには、「想定利回り」「表面利回り」「実質利回り」の3つの種類があります。

例えば、投資用の中古マンション(区分所有)の場合は、満室か空室の状態で販売されていますが、中古アパートの場合はそうではありません。満室ではない場合は、空室×部屋数という状態になっているからです。

そのため物件選びの際に重要になるのが、(現況の)表面利回りと想定利回りをどう判断するのかということです。表面利回りだけではアパート本来の収益力が分からないため、最終的な投資判断を行うには情報が少ない、ということが言えます。

具体的な例を挙げて見てみましょう。アパートの物件価格が4,000万円で空室が1部屋あり、想定利回りが10%、現況での表面利回りが8%だとします。この場合、空室が増えない前提で計算すると、年間の家賃収入は次の2つが想定されます。

  • 現在の入居状況が続いた場合:年間家賃収入320万円
  • 購入したあとで満室になった場合:年間家賃収入400万円

この時、購入検討する投資家の方の判断は下記の2通りあると考えられます。

  • 「何らかの事情で空室があり、利益が出づらい物件なのでは」
  • 「空室はあるが、うまく部屋を埋めたら、現況の表面利回りより年間収入が多くなるのでは」

このように同じ利回りの条件でも、投資家の方によって判断が異なります。アパートを選ぶ際は表面利回りと実質利回りだけではなく、空室がある状態で販売されているのであればどのような原因で空室になっているのか、家賃設定は適正かどうかなども考慮し、検証するようにしましょう。

その上で、築年数や立地条件、内装、設備機器の使用状況、周辺の生活環境といった現状を把握し、空室になっている要因を解消できるか検討することで、物件の事業性や将来性を判断することが大切です。

5 中古アパートを利回りだけで判断できない理由

ここまで中古アパートの利回りについて解説してきましたが、利回りだけでアパートの収益性や資産性を判断することは危険である可能性が高いと言えます。利回りは期待できる現況の収益性という一つの指標であり、アパートの立地や築年数、また投資を検討されている方の投資目的や属性などによって、とらえ方が異なってくるためです。

例えば、将来に向けた資産形成や相続などに備えて30年の長期運用を考えている場合、中古アパートの劣化やエリアの賃貸需要減などにより、現在の収益性を保てなくなっている可能性があります。中古アパート経営では、外壁塗装などの大規模修繕に向けた修繕費、将来の需要減に向けた空室リスク、災害対策など、様々な面でシビアに検証したうえで出口戦略を立てる必要があるのです。

特に、高利回り物件での運用を考えているのであればリスクが高まるため、「どのタイミングで、いくらで売却をするのか?」という出口戦略の重要度はさらに高くなります。金融機関の融資審査・条件が厳しくなることからも、ややハードルの高い投資対象であるということを念頭に置いて、情報収集をされていくことが大切です。

なお、30~50年などの長期投資を検討される場合は、新築アパート経営と比較されてみるのも良いでしょう。新築アパートは中古と比較して利回りが低下してしまうデメリットがありますが、耐用年数が長くとれ、現行の法律に則った耐震基準を満たしており、低リスクの運用が期待できるためです。

例えば、新築アパートの企画・販売、土地活用コンサルティングを行う「アイケンジャパン」という不動産投資会社では、主要駅10分圏内(首都圏は15分圏内)の厳選した土地とセットで購入可能で、入居率99%以上という実績があります。(※2021年12月時点、アイケンジャパンが企画開発を手がける物件の入居率)。

また、アイケンジャパンでは建築時からアパートの災害対策も重視して行っています。キソゴムにより地震による建物の揺れを最大30%~50%軽減し、地震時の横揺れ、台風時の横からの強風などに耐えられるように、変形に抵抗するための耐力壁を多く使用することで、建築基準法で定められている基準の約1.3倍の強度を備えています。

まとめ

今回のコラムでは、エリアごとに異なる中古アパートの利回りについて紹介し、「築10年未満」「築10年〜19年」「築20年以上」といったように築年数による利回りの推移も記載しました。

例えば、東京23区が築年数に関わらず利回りが低い、福岡市は地方都市なのに全体的に利回りが低い、などエリアごとに特徴があります。これらを適切に把握することで、物件選び、エリア選びに役立てていきましょう。

また、投資するアパートを利回りだけで判断してしまわないように注意が必要です。周辺環境や築年数、空室の原因などの多角的な視点で慎重に検証していきましょう。

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