50代~70代の「安心だと思える老後の資金額」平均4113.1万円、調査結果に見える社会の課題は?

ロボアドバイザーサービス「THEO(テオ)」を提供する株式会社お金のデザインは12月15日、資産運用に対する考え方などを把握するため、後期ミドル~シニア(50~70代)の男女1000名を対象にした意識調査の結果を公表した。調査は、後期ミドル~シニア世代の老後資金の状況や、資産運用に対する考え方などを把握するため、11月11日から14日にかけオンラインで実施。世帯年収は保有金融資産1億円未満とした。

まず、対象世代の金融資産額は1000万円未満が53%と過半数を占め、全体平均は1724.5万円。中央省庁の統計や他の民間企業調査と大きな乖離はない一方、「安心だと思える老後の資金額」は平均4113.1万円となり、現実資産との差額が2倍以上も開いた。老後の資金について「不安」と答えた人は65.6%にのぼり、女性50代は82%以上が不安を感じている。

老後の資金に対する不安点は、「介護・医療費の負担」、「年金が少ない/減らされるかもしれない」、次いで「何歳まで生きるかわからないから」が上位を占め、長寿リスクを感じていることが明らかになった。

老後の資金のために活用しているものは「定期預金・普通預金」が約6割とやや突出してトップ。「投資信託」「株式投資」「国債・社債」「ETF(上場投資信託)」「ロボアドバイザー」など投資の活用は、約4割にとどまった。「全く考えていない・やっていない」と回答した人は22.5%となった。

投資に対する印象や考えは「リスクがある」「よく分からない」「怖い・損をしそう」など、投資を専門性の高い分野として認識するがゆえのネガティブ反応がポジティブ反応を上回る結果となった。

ポジティブな回答としては、「これから積極的にしようと思う」(女性50代)、「冒険はできないが、資金はためたい」(女性50代)、「金利が低いので投資で多少の利益を得たい」(女性60代)と、女性の声が多く紹介されている。

同社取締役副会長の廣瀬朋由氏は「すべての世代は何らかの問題を抱えているが、老後資金の不安点として『何歳まで生きるかわからない』『貯金がなくなる可能性がある』が上位なのは、シニア世代の不安を表す象徴的な結果。長寿と手持ち資金の消化の間でせめぎあうシニア世代こそ、投資に向き合うことが重要」とコメント。そのうえで「投資は開始時期より、残りの投資期間を考える方が重要。投資は儲けるためではなく、不安にかられず、今より少し豊かに安心して生活するための手段」として、投資を正しく理解し、資産運用を検討してみることをアドバイスしている。

今回の調査では「安心だと思える老後の資金額」が平均4113.1万円という結果が出ている。しかし、その資金が実際に手元にあったとして、その時に本当に不安が解消されているのか疑問が残る。老後に関する不安の根底にあるのは、資金額ではなく社会に対する不信・不安なのではないだろうか。

年齢を重ねることにより身体機能は弱くなり、自分でできないことも増えていく。そして、それを補うために介護サービスや医療サービスなど人手を借りることが必要になる。それらのサービスには対価が求められ、その対価を支払うための老後資金というわけだが、そもそも「お金がなければ、安心して暮らすために必要な社会保障が受けられない」と思わせる社会自体に大きな課題があるのではないだろうか。

「安心で豊かな老後のために投資をしましょう」ということよりも、「老後に安心して暮らせる社会をつくろう」という声があがるような社会になっていくことを期待したい。

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