脱炭素関連の投資信託、主なファンドの成績と企業の取り組みは

最近よく耳にする脱炭素やカーボンニュートラルなど、環境問題について、市場規模や投資妙味など、気になる人も増えているのではないでしょうか。

脱炭素は環境問題の中でも重要な項目として認知されており、今では先進国の責任、もしくは最低限のみだしなみのような位置づけがなされています。民間企業の環境問題への取り組みは投資家の注目ポイントです。

本記事では、脱炭素をとりまく世界の状況や取り組みなどを紹介し、関連する投資信託のファンドを紹介しています。あらたな投資先を探している方は参考にご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。

目次

  1. 脱炭素とは?とりまく世界の状況を紹介
    1-1.世界はなぜ脱炭素を目指すのか?要因や主な取組
  2. 脱炭素を目指すための基本的取り組み
    2-1.再生エネルギーの活用
    2-2.水素エネルギーの実用化
    2-3.飛行機や車の脱炭素化
    2-4.太陽光発電
  3. 企業に求められる脱炭素運営とは
    3-1.企業が脱炭素運営にて得られるメリット2点
  4. 脱炭素をテーマとしているファンド
    4-1.チャイナ脱炭素イノベーション株式ファンド
    4-2.脱炭素テクノロジー株式ファンド
  5. 国内外企業の脱炭素への取り組み
    5-1.シチズン
    5-2.ダイワハウス
    5-3.Microsoft
  6. まとめ

1.脱炭素とは?とりまく世界の状況を紹介

脱炭素とは、温室効果ガスとされる二酸化炭素の実質的な排出量ゼロを目指す取り組みのことを言います。脱炭素社会とは、二酸化炭素排出量がゼロになった後の社会のことです。

日本では2020年10月に、2050年までに脱炭素社会を目指すと宣言しています。

1-1.世界はなぜ脱炭素を目指すのか?要因や主な取組

地球温暖化による気候変動は、日々の生活の中で多くの人々が実感しているのではないでしょうか。大雨による洪水や夏の猛暑、大型台風や竜巻、干ばつなど世界中のあらゆる地点で、異常気象が観測されています。今後も人類が地球上で生きていくためには、もはや避けては通れない課題にまで発展しました。

また、人類が日々活用している石炭、石油、天然ガス、原子力の燃料となるウランなどの化石燃料は限りある資源です。近い将来なくなるとも言われています。

脱炭素社会の達成は、今や世界共通の課題となっているのです。

世界の具体的な取組として、産業革命以降に比べて平均気温を2℃低く保つことを目標としたパリ協定の締結や、持続可能でよりよい社会を目指すための国際目標として、SDGsの採択が挙げられます。

手遅れになる前になんとか手を打ちたいと、世界の各国で脱炭素に向けた動きが活発になっています。

2.脱炭素を目指すための基本的取り組み

喫緊の課題として立ちはだかる環境問題に対して、世界ではどのような取組がなされているのでしょうか。脱炭素社会の達成に向けた基本的な取組を、以下4つのポイントにて紹介します。

  1. 再生エネルギーの活用
  2. 水素エネルギーの実用化
  3. 飛行機や車の脱炭素化
  4. 太陽光発電

2-1.再生エネルギーの活用

再生エネルギーとは、化石燃料のように限りある資源と違い、短期間で再生しやすく、繰り返し使える燃料のことを指します。具体的には、水力・風力・地熱発電、森林の間伐材や家畜の排泄物などのバイオマス燃料を利用するバイオマス発電やバイオマス熱利用が挙げられます。

エネルギーを生み出すたびに二酸化炭素が排出される悪循環を断ち切るには、再生エネルギーの活用が欠かせません。特にエネルギーの8割以上を化石燃料が占めている日本では、電力需給のバランスを取りつつも、再生エネルギーの効果的な活用方法が求められています。

2-2.水素エネルギーの実用化

水素エネルギーは、水素を燃焼させた時に発生する電気と水をエネルギー源として生活に利用する技術です。

水素は水などの物体の中に化合物として含有されています。貯蔵もできる上に、発電時に二酸化炭素を排出しないため、再生エネルギーの主力として視線を集めています。すでに、家庭用燃料電池や燃料電池で動くバスへの活用など、実用化も進められています。

2-3.飛行機や車の脱炭素化

近代の代表的な乗り物は車です。世界を移動するには飛行機も欠かせない交通手段です。車や飛行機は文明を代表する乗り物ですが、いずれも大量の二酸化炭素を排出します。脱炭素社会を実現するには、電気自動車の推進や再生エネルギーで飛ぶ飛行機の導入が欠かせません。

日本では、以前に比べて電気自動車の普及が進みましたが、充電場所や電力供給の懸念もあり、まだガソリン車が主流です。

2-4.太陽光発電

太陽光発電はソーラーパネルに当たった太陽光をエネルギー源として発電する仕組みです。近年では節電や売電目的で太陽光パネルを設置している一般家庭も増えています。

屋根や空き地を利用して発電でき、二酸化炭素を排出しないメリットの他に、蓄電池へ電気を貯めることで、非常用電源として利用できる点も注目ポイントです。

一方、悪天候時や冬の日差しが弱い時は発電量が見込めないデメリットがあり、他の再生エネルギーとの併用が前提となります。

3.企業に求められる脱炭素運営とは

企業の脱炭素運営とは、事業方針や経営戦略に温室効果ガス削減の目標を組み込むことをいいます。

パリ協定や政府のカーボンニュートラル宣言を受けて、多くの二酸化炭素を排出する企業にも脱炭素運営が求められています。大企業の環境問題への取り組みは責務の一つです。大企業の関連企業や取引先にも同様の取り組みを求めるケースも増えつつあります。

3-1.企業が脱炭素運営にて得られるメリット2点

脱他炭素運営は、企業運営においても大きなメリットを生み出します。考えられるメリットは以下の2点です。

  1. 企業価値の向上
  2. 補助金や支援を受けられる

企業価値の向上

環境問題への取り組みの発信は、企業のイメージアップによるブランディングや資金調達のしやすさ、優秀な人材を募る採用活動へいい影響をもたらします。

近年では、投資対象の企業を選定する基準として、ESG活動の内容が盛り込まれています。企業価値を根底から上げたい場合、環境問題への取り組みは必須条件と言っても過言ではありません。

補助金や支援を受けられる

政府は、脱炭素運営を促進するために企業や事業者へ、補助金や支援制度を用意しています。

補助金や支援の対象となる要件は以下のとおりです。

  • 再生エネルギーの利用を目的とした太陽光システムの導入
  • 電気自動車や水素自動車の促進や充電、水素スタンドのインフラ整備の促進
  • 地域の再生エネルギー自給率アップや脱炭素交通の促進

政府による脱炭素に取り組む企業への支援は、2050年の脱炭素社会に向けて今後も継続して展開されていく予定です。

4.脱炭素をテーマとしているファンド

環境問題をテーマとしてファンドは数多く運営されていますが、その中でも脱炭素をテーマに掲げているファンドを2つピックアップしました。それぞれの概要を紹介します。

  1. チャイナ脱炭素イノベーション株式ファンド
  2. 脱炭素テクノロジー株式ファンド

4-1.チャイナ脱炭素イノベーション株式ファンド

基準価額 8,542円
純資産 15.22億円
運用管理費 1.683%
トータルリターン -19.45%(1年)
設定日 2021年9月10日

※数値は2022年12月9日時点の情報です。

チャイナ脱炭素イノベーション株式ファンドは、脱炭素や次世代エネルギーに関連する事業を行う中国の企業で構成されたファンドです。脱炭素や再生エネルギーに投資する上で、太陽光発電の先進国である中国は押さえておきたいところです。

ファンドの設定は2021年9月で、ようやく運用基幹1年を超えました。アクティブファンドに分類され、運用管理費用はやや高めです。中国のゼロコロナ政策の影響などもあって、まだ思うような運用成果を挙げられていません。

全49銘柄の組入上位10銘柄

銘柄 業種 構成比率
1.CONTEMPORARY AMPEREX TECHN 資本財 6.5%
2.BYD 自動車・自動車部品 5.8%
3.JA SOLAR TECHNOLOGY 半導体・半導体製造装置 4.3%
4.NINGBO ORIENT WIRES & CABL 資本財 4.1%
5.GINLONG TECHNOLOGIES 資本財 3.9%
6.LONGI GREEN ENERGY TECHNOL 半導体・半導体製造装置 3.4%
7.SUNGROW POWER SUPPLY 資本財 3.4%
8.ZHEJIANG JINGSHENG MECHANI 半導体・半導体製造装置 3.4%
9.TRINA SOLAR 半導体・半導体製造装置 3.3%
10.TONGWEI 食品・飲料・タバコ 3.1%

※情報は2022年10月31日時点のものです

組入上位銘柄は、太陽光発電や電気自動車のバッテリーなどを手掛ける会社で占められています。

中国は世界の太陽光パネル製造において高いシェア率を誇り、地形を生かした太陽光発電量は世界の中でも群を抜いています。組入上位銘柄に太陽光発電関連企業が多いのは、当然の流れとも言えるでしょう。

組入上位銘柄の会社概要

組入上位銘柄から2社ピックアップし、会社概要を紹介します。

  1. JA SOLAR TECHNOLOGY(ジェイエイ・ソーラー・テクノロジー )
  2. LONGI GREEN ENERGY(ロンジ・グリーン・エナジー)
JA SOLAR TECHNOLOGY(ジェイエイ・ソーラー・テクノロジー )

太陽光発電製品のメーカー。あらゆる関連商品を製造、販売しています。太陽光エネルギー供給のサプライチェーンの多くをカバーしている企業です。太陽光発電製品開発の歴史は長く、コストに優れた競争力の高い製品を製造し続けています。

LONGI GREEN ENERGY(ロンジ・グリーン・エナジー)

ジェイエイ・ソーラー・テクノロジーと同じく、太陽光発電機器メーカーです。部品の中でも、太陽電池に欠かせない多結晶シリコンウェハーの製造に注力しています。

2021年は、前年に続きソーラーパネル供給のシェア世界一になりました。技術面で世界をリードするリーディングカンパニーです。

4-2.脱炭素テクノロジー株式ファンド

基準価額 10,119円
純資産 671.49億円
運用管理費 1.837%
トータルリターン -6.2%(1年)
設定日 2021年7月12日

脱炭素テクノロジー株式ファンドは、脱炭素社会の実現に向けたソリューションを提供する会社へ投資するファンドです。前述のチャイナ脱炭素イノベーション株式ファンドと同様に、設定日は2021年の7月と、歴史の浅いファンドです。

アクティブファンドに分類され、運用管理費はやや高めに設定されています。

組入上位10銘柄

銘柄 業種 構成比率 国・地域
1.MICROSOFT 情報技術 4.5% アメリカ
2.WASTE CONNECTIONS 資本財・サービス 3.3% アメリカ
3.TRIMBLE 情報技術 3.3% アメリカ
4.AIR PRODUCTS & CHEMICALS 素材 3.3% アメリカ
5.MASTEC 資本財・サービス 3.1% アメリカ
6.AIR LIQUIDE 素材 2.9% フランス
7.SCHNEIDER ELECTRIC 資本財・サービス 2.9% フランス
8.KONINKLIJKE DSM 素材 2.8% オランダ
9.WUXI LEAD INTELLIGENT 資本財・サービス 2.7% 中国
10.APTIV 一般消費財・サービス 2.6% アメリカ

※情報は2022年10月31日時点のものです

組入上位銘柄は再生エネルギーやクリーンエネルギーなど、脱炭素に関連する多様な業種で占められています。その中でも目立つのは、水素などのクリーンエネルギー関連企業や電気自動車のインフラ整備に関連する企業です。Microsoftは、脱炭素関連企業との取引や投資を通じて環境問題への強い影響力を示しています。

組入上位銘柄の会社概要

組入上位銘柄から2社ピックアップし、会社概要を紹介します。

  1. WASTE CONNECTIONS(ウエイスト・コネクションズ)
  2. MASTEC(マステック)
WASTE CONNECTIONS(ウエイスト・コネクションズ)

主に固形廃棄物を収集し、処理、リサイクルサービスを行う北米の企業です。企業や工場、店舗や住宅など、幅広くサービスを提供しています。日本のゴミ収集車に似た車両で各拠点を巡回し、廃棄物を収集します。

MASTEC(マステック)

マステックは米国の建設会社です。北米をメインに公共事業向けのインフラ工事を行っています。風力発電や太陽光発電など、再生可能エネルギーの運用に必要な送配電の建設にも力をいれています。

5.国内外企業の脱炭素への取り組み

脱炭素をテーマとしてファンドに選定されている企業は、どのような環境問題への取り組みを行っているのでしょうか。以下、3つの企業の取り組みを紹介します。

  1. シチズン
  2. ダイワハウス
  3. Microsoft

5-1.シチズン

シチズンは、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、「シチズングループ環境ビジョン2050」を策定しました。現状の環境問題を分析し、いくつかのケースをシミュレーションしています。

その内容はとても細かく、緻密なものです。世界の平均気温が1.5℃上昇した場合と、4℃上昇した場合それぞれのシナリオごとに、シチズンが取るべき戦略と社会に対してできることを明らかにしています。

現状、シチズンが行う目に見える取り組みは、タイと本社工場がある武蔵小金井にて稼働している太陽光発電システムです。

5-2.ダイワハウス

ダイワハウスでは、大和ハウス工業創業100周年にあたる2055年に向けて、Challenge ZERO 2055を策定しました。

当初は2015年比で、2055年までに温室効果ガス70%削減を目標に掲げていましたが、2020年の政府による温室効果ガスゼロ宣言を受けて、2050年までにネットゼロに挑戦すると改定しています。

ダイワハウスの環境問題への取り組みの柱となる項目は以下、3点です。

  • エネルギーのZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング:ゼブ)化
  • 再生可能エネルギーを作る
  • 再生可能エネルギーを使う

ダイワハウスは、省エネ施設の建設や、再生エネルギーの生成と利用、省エネ住宅の供給にて、環境問題にアプローチしています。

5-3.Microsoft

IT分野のリーディングカンパニーであるMicrosoftは、2030年にはカーボンネガティブを目指し、2050年には脱炭素を達成したいとしています。

カーボンネガティブとは、排出される二酸化炭素の量よりも、吸収される二酸化炭素の量が多い状態を言います。脱炭素、カーボンニュートラルは排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素の量が実質ゼロとなる状態を指します。

Microsoftの環境問題への取り組みは多岐にわたりますが、一部を以下に紹介します。

  • 環境問題に関連する活動などに多くの資金援助
  • サーフェイスなど自社製デバイスの100%リサイクル
  • 効率的なサーバー冷却を行う水中データセンターの実験
  • 地域に電力を供給するデータセンターの実験

二酸化炭素排出量上限の超過分に対して支払いを求めるカーボンプライシングの推奨を始め、Microsoftは企業を挙げて本格的に環境問題に取り組んでいます。

まとめ

環境問題は人類にとっての喫緊の課題とされています。地球の気候変動に直接関わるとされている脱炭素への取り組みは、企業の協力なくしてはなし得なません。日々の経済活動の中で、多くの二酸化炭素を排出する企業に求められる社会的責任は大きなものです。

投資対象として価値ある企業を目指す場合、環境問題への取り組みは欠かせないものとなりました。長期投資を考える場合、持続可能な企業運営のビジョンが明確な会社を見出したいところです。

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