地域創生のためのNFTプロジェクト~山古志NFT、都市連動型メタバースなど5選

今回は、地域創生のためのNFTプロジェクトについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. NFTとは
    1-1.NFTの概要
    1-2.NFTの種類
    1-3.NFTの特徴
  2. 山古志の「電子住民票」
    2-1.プロジェクトの概要
    2-2.プロジェクトの特徴
  3. 竹神社デジタル御朱印
    3-1.プロジェクトの概要
    3-2.プロジェクトの特徴
  4. 都市連動型メタバース「バーチャル大阪」
    4-1.プロジェクトの概要
    4-2.プロジェクトの特徴
  5. NFTが生み出す新たな地方創生のカタチ
    5-1.プロジェクトの概要
    5-2.プロジェクトの特徴
  6. 岩倉市風景写真NFTアート・プロジェクト
    6-1.プロジェクトの概要
    6-2.プロジェクトの特徴
  7. まとめ

21年に入ってから、ブロックチェーン技術を駆使して開発された「NFT」が世界的に大きな注目を集めるようになりました。NFTにはアートや音楽作品、デジタルコレクションといったさまざまな種類が存在し、ゲームコンテンツやファッションなどといった幅広い分野において積極的に取り入れられています。

そんな中、最近では国内でも、町おこしやPR活動をはじめとする地方創生のためにNFTを活用する事例も増加しています。我々にとってNFTがますます身近になっています。そこで今回は、実際に展開されている地域創生のためのNFTプロジェクトについて、その概要や特徴を詳しく解説していきます。

①NFTとは

1-1.NFTの概要

NFTとは、「Non-Fungible Token」の頭文字をとったもので、日本語では「非代替性トークン」と訳されます。NFTは、ブロックチェーンを基盤にして作成された代替不可能なデジタルデータのことです。アート作品やゲーム内アイテム、音楽、トレーディングカード、仮想空間の土地などのデジタル作品や、不動産、会員権などあらゆる資産の所有権をデジタル上で証明できます。

これまでのデジタルデータは比較的簡単にコピーができてしまうことから、その所有権の所在が分かりにくいだけでなく、固有の価値を付けることが困難だとされてきました。そんな中、改ざん耐性の高いブロックチェーン基盤で発行されるNFTにより、デジタルデータに希少価値を付加することに成功しています。

パーミッションレス(許可不要)なブロックチェーン基盤で発行されるNFTは、イーサリアムなどの仮想通貨と同様に、自由に移転・取引することが可能です。ブロックチェーン上で流通したNFTは、ウォレットアドレスと取引・送付情報が記録されるため、誰から誰に所有が移ったのかの来歴を確認することもできます。

現在ではNFTを用いたビジネスモデルが次から次へと誕生しており、その種類もますます増加しています。

1-2.NFTの種類

実際に、NFTとして制作される対象には、下記のようなものがあります。

  1. デジタルアート:絵画や動画をはじめとするアート作品
  2. 音楽作品:音楽アルバムやミュージックビデオなど
  3. デジタルコレクション:トレーディングカードやスクリーンショット、動画など
  4. ブロックチェーンゲームのアイテム:ゲームキャラクター(アバター)やゲームアイテムなど
  5. 仮想空間上の土地:「Coincheck(コインチェック)」で販売された「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」上の仮想土地「LAND(ランド)」など
  6. 現実世界の物質:自動車、競走馬、チケット、ファッションアイテムなど

このように、あらゆるものがNFTの対象となっており、その種類は今後も増えていくとみられています。

1-3.NFTの特徴

①唯一無二のデジタルデータである

前述の通り、NFTは偽造や改ざんが極めて難しいとされているブロックチェーン・テクノロジーを活用することで、デジタルデータに唯一無二の価値を付与しています。具体的には、それぞれのNFTに固有のアドレスを割り振ることによって、他のものと替えが効かない仕組みとなっています。この技術によってNFTに資産価値が生み出され、現在さまざまなビジネスシーンにおいて活用されています。

②誰でも作成や販売を行うことができる

NFTは誰でも簡単に作成することができるほか、自作したNFTを販売することも可能となっています。NFTを自作したい場合は、「OpenSea(オープンシー)」をはじめとするNFTマーケットプレイスを利用することで、簡単にNFTをミント(鋳造)することができます。OpenSeaの利用にはMetamask(メタマスク)など仮想通貨ウォレットを用意し、トランザクション手数料(ガス代)を支払うETHなどの仮想通貨を保持する必要があります。

メタマスク(MetaMask)ウォレット上の使い方と注意点、盗難被害を防ぐには?

③NFTクリエイターとしてロイヤリティを受領可能

NFTが二次流通市場で取引された場合、NFTを作成した作者はロイヤリティを獲得することが可能となっています。従来のデジタルコンテンツにおいては二次流通に対するロイヤリティ報酬という概念がありませんでしたが、NFTでは全ての取引履歴がブロックチェーン上に記録されるため、NFTの作者は転売されるたびに一定の報酬を獲得できる仕組みを設計することが可能です。

具体的には、OpenSeraなど適用しているマーケットプレイスでは、「取引額の数%をロイヤリティとして受け取る」といった設定ができるため、NFTクリエイターの長期的な利益にもつながります。

②山古志の「電子住民票」

ここからは、実際に展開されている地域創生のためのNFTプロジェクトについて解説していきます。まずは、人口800人の小さな村「山古志(やまこし)」が展開している「電子住民票」について、解説していきます。

2-1.プロジェクトの概要

Yamakoshi
「山古志(やまこし)」とは、新潟県中越地方の長岡市の山間に位置する地域のことを指し、日本の原風景と称される美しい山あいの村として知られています。2005年4月1日に長岡市に編入合併されましたが、1000年続く牛の角突きや、錦鯉発祥の地であることからも、「山古志」という名で人々に広く親しまれています。

そんな山古志は、21年12月に「電子住民票」という意味合いを含むデジタルアート「Nishikigoi NFT」を発行し、話題となりました。地域のシンボルとして親しまれている錦鯉をモチーフにしたこのNFTは、地元自治体の長岡市を公式パートナーとする自治体公認のNFTプロジェクトとなっています。第一弾セールにおいて1,500点がミントされ、発売からたった二ヶ月で約600万円の資金調達に成功しました。山古志はこのNFTを「共感と仲間の証」としており、NFTのホルダーを「デジタル村民」と呼んでいます。

公式ウェブサイトによると、山古志は人口800人という小さな村にも関わらず、そのデジタル村民の数は現在すでに約950名を突破しています。リアルな山古志とデジタル村民がともに地域課題の解決や関係人口の創出など、山古志の未来をつくるための挑戦を始めているということです。

また、22年3月には第二弾となるデジタルアート作品が発売されました。NFTを通して、国や性別、地位、物理的制約に関係なく、自分自身の想いや信念ともいえるモノの帰属先を自らが選択できるということを世界に伝えています。

2-2.プロジェクトの特徴

①誰でも山古志のデジタル住民になれる

山古志の発行する「Nishikigoi NFT」は「電子住民票」としての役割も兼ねているため、NFTを保有するだけで世界中の誰もが山古志のデジタル住民になることが可能です。

NFTプロジェクトがスタートした際の山古志の人口は約800人、高齢者率は55%を上回っていましたが、現在ではデジタル村民だけで約950名を超えており、山古志は今後もデジタル村民10,000人を目指して積極的なプロジェクト展開を行っていくということです。

②村のガバナンスに参加できる

山古志のNFT、つまり電子住民票を保有しているホルダーは、村のガバナンスに参加することが可能となってます。地域活性化のプロジェクト会議への出席や、「デジタル村民選挙」への投票などを行う権利を得ることができます。

これまでのガバナンスは、有権者によって選出された代弁者たちが議会で話し合いを行い、政策を決定するという「代議制民主主義(間接民主主義)」でした。

一方で、「分散型(非中央集権)」という特徴を持つWeb3.0の世界では、ブロックチェーン技術を活かしたガバナンスシステムが生まれています。分散型自律組織を意味する「DAO(ダオ)」により有権者の意思を反映した、政策を構築することが可能となりました。山古志においても、NFTを電子住民票としてDAOの仕組みを取り入れることで、村民の誰もが今後の村のガバナンスに参加できる環境を構築しています。

③竹神社デジタル御朱印

3-1.プロジェクトの概要

Takejinja

「竹神社デジタル御朱印」とは、22年8月にリリースされた、三重県・明和町の「竹神社」における御朱印をデザインしたNFTのことを指します。

竹神社デジタル御朱印は、明和町の観光地域づくりを推進する「一般社団法人明和観光商社」、「株式会社博報堂」の「HAKUHODO Blockchain Initiative(博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ)」と「博報堂行動デザイン研究所」、そしてNFTサービスを開発している「CryptoGames株式会社」によって展開されており、竹神社社務所において申し込みを済ませ、配布されたQRコードをスマホで読み込むことによって、専用ページから御朱印NFTを受け取ることができるということです。

なお、明和町では今回の取り組みを通して地域の文化とデジタル・テクノロジーの活用のあり方を検証していくとしており、今後もメタバースをはじめとするWeb3.0関連のプロジェクト展開を予定しているということです。

3-2.プロジェクトの特徴

「NFT Airdrop」を採用している

竹神社デジタル御朱印は、CryptoGamesが展開している「NFT Airdrop」というNFT配布ソリューションを利用して発行されています。

NFT Airdropは21年10月にリリースされたサービスで、多種・多量のNFTをシームレスに無料配布できるツールとして広く利用されています。竹神社デジタル御朱印ではこのNFT Airdropを採用することで、誰もが簡単にNFTを受け取ることができるシステムを提供しています。

④都市連動型メタバース「バーチャル大阪」

4-1.プロジェクトの概要

Virtual Osaka
「バーチャル大阪」とは、大阪の都市の魅力を国内外に向けて発信することを目指す、都市連動型のメタバースプロジェクトとなっています。22年2月28日から本格的に始動したこのプロジェクトは、大阪府と大阪市が日本の大手電気通信事業者である「KDDI株式会社」とともに推進しており、「City of Emergence(創発する都市)」をテーマに掲げ、さまざまな人が集まり、一人ひとりの新たな体験や表現を通じて、大阪の新たな文化の創出およびコミュニティの形成に寄与することを目的としています。

4-2.プロジェクトの特徴

①複数のエリアが設置されている

バーチャル大阪では、25年に開催される予定の大阪・関西万博に先がけてすでに複数のエリアが設置されており、その数は今後も拡大していくということです。

現時点では、大阪の歴史や文化を感じられる「今昔街」、道頓堀や大阪城、梅田スカイビルなどといった大阪の代表的なランドマークが多数配置されている「新市街」など、全4種類のエリアおよびコンテンツが展開されています。

②さまざまなイベントが開催されている

Virtual osaka2
バーチャル大阪ではさまざまなイベントが頻繁に開催されており、最近では、22年10月26日から31日にかけて、「バーチャル大阪ハロウィーンイベント」が催されました。このイベントでは、道頓堀や大阪城などの新市街エリアがハロウィーンで装飾され、多くのユーザーがバーチャルならではの風景を楽しみました。

⑤NFTが生み出す新たな地方創生のカタチ

5-1.プロジェクトの概要

Ossan
「NFTが生み出す新たな地方創生のカタチ」とは、兵庫県・尼崎市の非公認ご当地キャラクターである「ちっちゃいおっさん」のNFTプロジェクトの名称です。

「NFT×地方創生」をテーマとして展開されているこのプロジェクトは、「株式会社フォーイット」およびアライアンスパートナーである「メディアエクイティ株式会社」によって手がけられており、ブロックチェーン機能を活用したオープンガバナンスによる「トークンエコノミー(地域経済圏)」を形成することを目的として掲げています。

22年1月28日に開催された第一弾ファーストセールでは、5個のNFTが1個1,000円で販売され、セール開始からたったの3分でそのすべてが完売するなど、大きな反響を呼びました。また、その後の22年2月1日に行われたセカンドセールでは、先着15個限定のNFTが1個3,000円で販売され、こちらも開始からわずか4分ですべて完売する結果となりました。さらに、22年2月7日から14日の期間で開催されたサードセールでは、先着順で30個のNFTが、1個5,000円で販売されました。

なお、現在はNFTマーケットプレイス「HEXA(ヘキサ)」における二次流通でこのNFTを購入することが可能です。

5-2.プロジェクトの特徴

①NFTマーケットプレイス「HEXA(ヘキサ)」で販売されている

前述の通り、「ちっちゃいおっさん」のNFTデジタルアートは、NFTマーケットプレイスである「HEXA(ヘキサ)」において販売されています。

HEXAは誰もが気軽にTwitterのツイートやイラスト、画像作品などのNFTをミントし、販売することが可能なNFTプラットフォームとなっています。HEXAでNFTを購入した方は、自身の名前とTwitterのリンクを保有者欄に表示させることができるため、NFT発行者にホルダーとして認知してもらえるほか、ファンコミュニティにおいても自身が購入したものであることを証明できます。また、日本円で簡単に購入および入札ができるため、ブロックチェーンや仮想通貨についての知識があまりないという方であっても、安心して利用することが可能なサービスとなっています。

⑥岩倉市風景写真NFTアート・プロジェクト

6-1.プロジェクトの概要

Iwakura
「岩倉市風景写真NFTアート・プロジェクト」とは、ふるさと納税サイト「ふるり」を手がける「株式会社MLJ」が22年2月28日にスタートした地方創生プロジェクトのことを指します。岩倉市から公認を受けているこのプロジェクトは、愛知県・岩倉市の風景を撮影して、その写真をNFTアートとして販売し、その売り上げを岩倉市に寄付するというもので、新たな地方創生の形として注目を集めています。

具体的には、MLJがプロのフォトグラファーに依頼して岩倉市の風景写真を撮影、その後、撮影した風景写真をNFTにして販売します。そして、MLJが売上からコストの実費を差し引き、残りの全額を岩倉市に寄付するといった流れとなっています。

なお、販売はNFTマーケットプレイスである「OpenSea(オープンシー)」で行われており、岩倉市の風景写真が全6点出品されています。

6-2.プロジェクトの特徴

①財政にいい影響を与える

MLJは、地域の風景を市区町村および都道府県の財産として考えており、風景を写真として撮影し、それをNFTアートにして販売して利益を得ることによって、自治体の財源にいい影響を与えると説明しています。

②関係人口の増加を目指している

岩倉市はNFTアートを通して地域資源を効果的にプロモーションすることで、多くの人が岩倉市に興味を持ってくれることを期待しており、これをきっかけとして関係人口のさらなる増加を目指していきたいとしています。

⑦まとめ

NFTテクノロジーは現在さまざまな分野や領域において活用されていますが、近年では地域創生を目的としたNFTプロジェクトも多くリリースされており、場所や国籍などを問わず、誰もが自分の意思で自分がサポートしたい地域や自治体を自由に支援することが可能となりました。

今回紹介したいくつかの事例以外にも、まだまだ多くの地域創生を目指したNFTプロジェクトが推進されているため、自身の興味のあるプロジェクトを見つけて、一度参加してみてもいいかもしれません。

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