不動産相続のスケジュールは?相続税の申告期限や特例の適用条件も
不動産相続は、相続税の申告期限があり、限られた時間の中で被相続人が築いた不動産を受け継いでいく重要な手続きです。相続手続きを円滑に進め、相続不動産を効率的に継承するためには、相続のスケジュールや相続税の特例などについてあらかじめ確認しておくことが大切です。
本記事では、不動産相続のスケジュール、相続税の申告期限や特例の適用条件について説明していきます。
※記事内の税金・税率などは2023年1月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 不動産相続のスケジュール・手順
1-1.相続人の調査
1-2.相続不動産の調査
1-3.遺言の確認、遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
1-4.相続登記
1-5.相続税の申告・納付 - 不動産に関連した相続税の軽減税制
2-1.小規模宅地等の特例
2-2.配偶者の税額軽減とその他の税額控除
2-3.各種税額控除 - まとめ
1.不動産相続のスケジュール・手順
不動産相続は次のような流れで進められます。
- 相続人の調査
- 相続不動産の調査
- 遺言の確認、遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
- 相続登記
- 相続税の申告・納付
以下で、それぞれの項目について詳細をみていきましょう。
1-1.相続人の調査
遺産相続手続きにおいて最初におこなう必要があるのが、相続人の調査です。民法では、法定相続人の順位や範囲が定められています。被相続人の遺産を相続する権利が誰にどれくらいの法定割合であるのかを調査します。
調査方法は、被相続人の出生から死亡までの戸籍によって親戚関係をたどっていきます。この際、本籍が所在する自治体が発行する戸籍謄本、除籍謄本などを取り寄せることになります。
1-2.相続不動産の調査
相続人の調査と並行して、被相続人の相続不動産の調査をおこないます。相続対象となる財産には、不動産のほか、現預金、有価証券、事業にかかわる売掛金、貸付金などといったものがあります。プラスの財産以外に、借入金や事業上の買掛金などマイナスの財産も相続対象となります。
なお、マイナスの相続財産がプラスの相続財産よりも多い場合や、そのように予想される場合は、相続開始を知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に対して限定承認をおこなうことができます。限定承認とは、プラスの相続財産を限度として、相続した債務を弁済する手続です。
相続不動産の調査は、次のような手順でおこないます。被相続人が不動産を所有していた場合、まず、「権利書(あるいは登記識別情報)」または市区町村から送付される「固定資産税の課税通知書」を探します。
これらの書類があれば、少なくとも過去にその不動産を所有していたことが分かります。それから、その市区町村で不動産名寄(なよせ)帳と呼ばれている書類を取得し、その年の1月1日時点での所有情報を確認します。最後に、法務局で登記事項証明書を取得することで、亡くなった時に所有していたことが明らかになります。
1-3.遺言の確認、遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
遺言の有無を確認し、公正証書遺言や検認を受けた自筆証書遺言などがあれば、その遺言にしたがって遺産分割をおこないます。
そのような遺言書がなければ、相続人全員が、遺産を誰にどれくらい分けるか、について話し合いをおこないます。これを遺産分割協議と言い、協議がまとまったら、その合意内容に相続人全員が署名押印し、遺産分割協議書として書面化して、後日トラブルが起きないようにします。
なお、遺言書がありすべての遺産について、誰が何を取得するのか指定されている場合、遺産分割協議は不要ですが、相続人全員の同意があれば、遺言と異なる内容で遺産分割することも可能です。
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1-4.相続登記
遺産分割協議が合意に達したら、その分割協議の内容に従い、相続不動産を各相続人が取得します。現預金、有価証券などの他の財産も、各相続人に分割、取得手続をおこないます。
相続した不動産の所有権が、各相続人に移転したことを第三者に明らかにするため、法務局で相続登記をおこないます。法定相続分を超える取得の場合は、特に相続登記が重要になります。相続登記に必要な書類は、以下の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の住民票除票
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 固定資産税評価証明書
なお、遺言書がある場合は遺言書やその検認調書、家庭裁判所による調停・審判をおこなった場合は調停調書・審判書の謄本が必要になります。
1-5.相続税の申告・納付
相続開始を知った日から10カ月以内に、遺産分割協議の内容に基づき、相続税の申告と納付をおこないます。
相続税額は、相続財産の課税価格―基礎控除額を、各法定相続人が法定相続分に従って取得したものとして、各法定相続人の取得金額を求め、それぞれに累進税率を乗じて算出されます。遺産分割協議が終了していなくても、法定相続分を下に手続きと計算をおこないます。
ただし、遺産分割が終了していない場合、一部の税額控除の特例を利用できないため、特例を適用した税金計算をやり直す必要があるケースもあります。
2.不動産に関連した相続税の軽減税制
相続税の軽減税制には、一定の条件を満たす宅地等につき課税価格を軽減する小規模宅地等の特例や、配偶者の税額軽減制度、各種税額控除制度があります。配偶者の税額軽減制度は、遺産分割されている財産が適用対象となります。
2-1.小規模宅地等の特例
一定の条件を満たす小規模宅地等を特定の相続人が相続する場合、相続税の財産評価額を減額する特例の適用を受けられることがあります。
居住用または事業用・貸付用に供されていた小規模の宅地等のうち、特定の親族が相続した分について、相続税の財産評価額が最大80%減額されます。評価額が減額される土地の面積や減額割合は、土地の用途によって区分され決められています。
適用条件
居住用宅地等の適用条件は、被相続人等の居住のために使っていた宅地等で、その取得者が被相続人の配偶者や同居親族で、申告期限までその宅地等を所有し、かつその宅地等に居住している者である場合などとなります。
事業用宅地等の適用条件は、被相続人等が事業のために使っていた宅地等で、その宅地等を相続税の申告期限まで所有するとともに、その事業を申告期限までに引き継ぎ、かつ申告期限まで引き続きその事業を営んでいる場合などとなります。
貸付用宅地等の適用条件は、被相続人等が貸付事業のために使っていた宅地等で、その宅地等を相続税の申告期限まで所有するとともに、その事業を申告期限までに引き継ぎ、かつ申告期限まで引き続きその事業を営んでいる場合などとなります。
※国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
2-2.配偶者の税額軽減
相続税で適用できる軽減税制には、被相続人の配偶者に対して大きな税額軽減制度があります。また、被相続人に直近に支払った相続税がある場合や生前贈与について支払った贈与税がある場合に、二重課税分を控除する制度があります。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者については、遺贈された正味財産額が1億6千万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない税額軽減制度があります。1億6千万円を超えても、配偶者の法定相続分までは相続税がかからないことになります。
ただし、この軽減制度は実際に取得した財産を下に計算されるため、遺産分割されている財産であることが条件となります。
※国税庁「配偶者の税額の軽減」
2-3.各種税額控除
相続人が未成年者や障害者であるときや、短期間に続けて相続があった場合、贈与税との二重課税がある場合は、相続税額から一定の金額を控除できる税額控除制度があります。
相続人が未成年者の場合
相続人が未成年者である場合、20歳に達するまでの年数に応じて、1年につき10万円が未成年者控除として相続税額から控除されます。
※国税庁「未成年者の税額控除」
相続人が障害者である場合
相続人が85歳未満の障害者であるとき、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円が、障害者控除として相続税額から控除されます。
※国税庁「障害者の税額控除」
10年以内に2回以上相続が開始して相続税が課税される場合
10年以内に2回以上相続が開始して相続税が課税される場合には、前回の相続(第一次相続)で課せられた税額の一定割合にあたる額を、年次相続控除として、次の相続(第二次相続)の相続税額から控除できます。
※国税庁「相次相続控除」
相続開始前3年以内に贈与によって取得した財産がある場合>
相続開始前3年以内に贈与によって取得した財産で、相続税の課税価格に加算した財産にかかる贈与税額および、相続時精算課税にかかる贈与税額は、相続税額から控除することができます。
※国税庁「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
まとめ
不動産相続は、相続人の調査、相続財産の調査、遺産分割協議・遺産分割協議書の作成、相続登記、相続税の申告・納付という流れでおこなわれます。
不動産相続では、相続税につき小規模宅地等の特例の適用がある場合、税額が大きく軽減されるため、適用条件に注意して検討しましょう。
本記事では効率よく遺産相続を進める手順を説明しましたが、遺産相続では、相続人全員の合意を得ることが最も重要です。特に、不動産の相続は、相続人間で平等に分割することが難しく、トラブルを招きやすい傾向があります。各相続人の意思に十分配慮して手続きを進めるようにしましょう。
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