高齢者を受け入れる不動産投資のポイントは?自治体のサポート事例も

世界でも屈指の超高齢化社会をむかえる国内において、投資家が事前に知っておきたいのは高齢者を受け入れるための不動産投資のポイントではないでしょうか。

超高齢化社会では賃貸希望者の高齢者割合が増加するため、今後の不動産投資家にとっても深く関わりのある課題です。将来的な日本の人口推移は、2030年時点でおよそ3人に1人は65歳以上という統計調査が行われています。(※参照:国立社会保障・人口問題研究所「人口ピラミッドの推移」)

そんな超高齢化社会において、不動産投資家にとって気になるのは事前に知っておきたい高齢者を受け入れるメリットや注意点ではないでしょうか。今回のコラムでは高齢者による賃貸需要の増加が予想される国内の不動産投資でのメリットやデメリット、受け入れるための準備に関する概要をお伝えしていきます。

目次

  1. 高齢者を受け入れる不動産投資のメリット
    1-1.長期の入居期間になる傾向がある
    1-2.入居募集期間が短くなる可能性がある
    1-3.物件によっては地域・自治体のサポートを得ることが可能
  2. 高齢者を受け入れる不動産投資のデメリット
    2-1.孤独死や事故のリスク
    2-2.認知症によって引き起こされるトラブル
  3. 高齢者を受け入れる不動産投資で押さえておきたい対策ポイント
    3-1.入居者とのマメなコミュニケーション
    3-2.見守りサービスの利用
    3-3.高齢者向けリフォーム・バリアフリー化を施す
    3-4.孤独死・事故が起きた際の特殊清掃業者への依頼工程の把握
  4. サービス付き高齢者向け住宅という選択肢
  5. まとめ

1.高齢者を受け入れる不動産投資のメリット

※画像引用:国立社会保障・人口問題研究所「人口ピラミッドの推移

2030年に3人に1人は65歳以上という統計結果から、超高齢化社会に向けた賃貸住宅の受け入れが重要な課題となってきています。不動産投資に高齢者の受け入れを行うとどのようなメリットがあるのか、4つのポイントで見て行きましょう。

1-1.長期の入居期間になる傾向がある

不動産投資において高齢者を受け入れる大きなメリットの一つには、入居期間が非常に長い傾向が強い点があります。

高齢の入居者は賃貸審査が厳しくなってしまう都合上、若年者に比べると賃貸を選べる選択肢が広いわけではありません。更に年齢を重ねるごとに受け入れ可能な物件が少なくなるため、長期間の入居を見込むことができます。

特に融資を活用する計画的な不動産投資を運用する上で避けたいのは、マイナスのキャッシュフローへと転換する空室リスクです。そんな融資を活用した不動産投資と相性が良いのも、高齢者を受け入れる不動産投資のポイントとなります。

加えて入居期間が長いほど退去後の対応や再度入居者を探す手間や、客付を行う不動産会社への仲介手数が発生しません。そのため入居期間が長いという点は、不動産投資において高齢者を受け入れる大きなメリットととらえることができます。

1-2.入居募集期間が短くなる可能性がある

高齢者の入居者を受け入れるメリットして、入居募集期間が短くなる可能性があるという点もあります。入居募集期間は空室と同様に、長期化するほど想定の利回りが下がり機会損失やマイナスの出費を生み出してしまいます。

超高齢化社会をむかえる日本において、審査が厳しく入居先が見つからない高齢者数と比例し賃貸需要は増加していくことが予想されます。特に地方や駅から離れているような賃貸需要の薄いエリアでも、高齢者の入居者を受け入れることにより募集期間の短縮につながる可能性があるでしょう。

1-3.物件によっては地域・自治体のサポートを得ることが可能

高齢者向けの不動産投資では、条件を満たすことで地域によって補助金や税金の軽減処置といった優遇処置を得ることができます。例えば、高齢者向けとして特化した「サービス付き高齢者向け住宅」は、改修で限度額〜195万円の高額なサポートを受けることも可能です。

ただしサービス付き高齢者向け住宅は、登録基準に高額な費用が伴う、バリアフリー化リフォームといった厳しい水準を設けています。更に登録基準を満たすためには、通常の賃貸住宅と比較すると高額な建設コストと運営費が掛かる点にも注意が必要です。

2-1.孤独死や事故のリスク

孤独死や事故は、不動産投資で高齢者を受け入れる際に注意しておきたいデメリットと言えます。どうしても孤独死により引き起こされる悪印象が強く、高齢者の入居が賃貸住宅で審査が厳しくなってしまう要因の1つとなります。

ただし、病死や孤独死により死亡後すぐに発見された場合は自然死として取り扱われ、賃貸募集においては国土交通省の「国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」」に基づくと、告知を行う義務は発生しません。

一方、遺体の発見が遅れ、特殊清掃による処理が必要なほど腐敗による死臭が染み付いてしまった場合には物理的瑕疵となり事故物件として取り扱う必要があります。事故物件は、従来の家賃設定より低い賃料を設定しないと入居が決まりづらくなり、物件の収益性を大きく目減りさせてしまいます。特に売却を前提とした一件あたりの費用が高額な新築やアパート、マンションでは資産価値を減損させてしまうこともあるでしょう。

また高齢者は若年層と比較すると階段での転倒やお風呂場での死亡事故も事例が多く、突然死を引き起こすリスクにも注意が必要です。

2-2.認知症によって引き起こされるトラブル

入居時点では問題のなかった高齢者の方でも、年齢を重ねるにつれて認知症を発症し、家賃滞納などのトラブルに発展するケースもあります。サポートできる家族や親族が居る入居者であれば相談することができますが、身寄りのいない独り身の高齢者の方であれば、適切なサポートが行えない可能性もあります。

滞納した家賃の催促も若年層の入居者と異なり、認知症により理解ができず激怒するといったトラブルが発生するケースも存在するため多大な労力を割く必要があります。さらに認知症により生活を送ることができず掃除やゴミ処理ができなくなった結果、賃貸のゴミ屋敷化や害虫発生といった物理的瑕疵を引き起こすリスクもあります。

その他、徘徊による不法侵入や他人への迷惑行動など、近隣トラブルを引き起こしてしまう恐れもあります。認知症が原因により引き起こされた火災は、契約している保険会社によっては火災保険の対象外となる恐れがあるため事前に確認が必要です。

高齢者に限らず、賃貸における入居者は一度受け入れてしまうと年齢等を理由に退去を促すことができません。多くの不動産投資家が高齢者への賃貸を躊躇する理由の1つとなります。入居期間が長くなる反面、身寄りのいない高齢者の場合には後に認知症によるトラブルを引き起こす恐れがあるリスクも不動産投資家が押さえておきたいポイントです。

3.高齢者を受け入れる不動産投資で押さえておきたい対策ポイント

3-1.入居者とのマメなコミュニケーション

高齢者の方の受け入れでトラブルリスクを回避するには、入居者とのマメなコミュニケーションを取ることが大切なポイントになってきます。

自主管理を行い頻繁に自身の物件へ足を運ぶ不動産投資家であれば、郵便物の蓄積など入居者の異常事態に気づくことができます。また、世間話が好きな場合には、会話を通じて入居者の家族・親戚との関係や悩みなども知ることにもつながるでしょう。積極的に入居者の方と良好なコミュニケーションを取っていきたい場合には、ピッタリのお客様となる可能性が高い入居者候補となります。

ただし、戸建住宅や保有する物件数が多い場合には自分1人での管理は限界があるため、住宅付近のアパートといった一定の条件が絞られてしまう点に注意が必要です。

例えば、販売実績5,000棟以上のアパート経営会社「シノケンプロデュース」では入居者向けコールセンター(24時間365日8カ国語対応)で、外国人や高齢者など敬遠されがちな方にも手厚い対応を行っています。このような入居者向けサービスは、高齢者の継続的な安否確認への期待も高まっています。

【関連記事】社会貢献と収益の両立へ。アパート経営でできるSDGs・サステナビリティの取り組みは?

3-2.見守りサービスの利用

近年の高齢者による賃貸需要の増加に伴い、サービスとして定着してきているのが「見守りサービス」です。見守りサービスは入居者の異常を検知し投資家や大家に知らせてくれるサービスで、近年はサービス内容のバリエーションも豊富になっています。

中でもカメラと異なりプラバシーに考慮した電気・ガス・水道といったライフラインやセンサーから異常を検知するタイプの見守りサービスの人気が高まっています。またスタッフが実際に足を運ぶサービスと異なり、サービス価格も安価に済ませることができるのも見守りサービスを利用するメリットの1つです。

なお、見守りサービスは、入居者本人かそのご家族が契約し加入するサービスであるため、大家や管理会社が設定することはできません。入居審査のタイミングでサービスの利用を提案されてみると良いでしょう。

3-3.高齢者向けリフォーム・バリアフリー化を施す

高齢者の孤独死は病死だけではなく、段差での転倒やお風呂場の温度差により引き起こされる事故により引き起こされる可能性があります。そこで検討材料の1つとして取り上げたいのが、未然に事故を防ぐため高齢者向けのバリアフリーや断熱設備といったリフォームを施す方法です。

リフォームに伴う初期投資額は通常の賃貸より高額になりますが、未然に事故を防げるため、物件の資産価値を目減させる事故のリスクを軽減することができます。安全への考慮は長期間の入居を見込むこともできるため、賃貸需要の乏しいエリアにおいては初期投資の価値が高い一手とも言えるでしょう。

また超高齢化社会に向かう日本国内において、バリアフリーが施されたリフォームは将来の需要増に適合した住宅設備を整えるということになります。安全性の考慮と将来のニーズに備えた対策として、高齢者向けリフォームは検討材料として頭に入れておきたい手法の1つです。

3-4.孤独死・事故が起きた際の特殊清掃業者への依頼工程の把握

孤独死・事故が起きた際に備えておきたいのは特殊清掃業者の把握と依頼の流れです。特殊清掃業者は通常の清掃業者と異なり、脱臭のノウハウが必要になるため自身で対応することができません。

また、自主管理を行うのであれば不動産投資家自身が第一発見者となるケースもあるため、孤独死発生時の流れについても把握しておくことも大切です。孤独死が発生した場合には、主に以下の3つの手順を踏む必要があります。

  1. 現場検証
  2. 特殊清掃
  3. 遺品整理

3つの工程が済んで初めて、リフォームや取り壊しといった次の段取りに進むことが可能です。また気になる方は、お祓いを依頼するためのお寺や神社といった外注先も探す必要があります。

入居者の死は超高齢化社会をむかえる国内の不動産投資においては、不動産運用歴が長くなるほど避けられない社会現象の1つです。将来の課題やニーズに備えた対策と知識も、健全な賃貸経営を行っていくために重要なポイントとなります。

4.サービス付き高齢者向け住宅という選択肢

高齢者を受け入れる不動産投資として、選択肢の1つとなるのが「サービス付き高齢者向け住宅」という選択肢です。サービス付き高齢者向け住宅は高齢者用のバリアフリーを兼ね備えた賃貸住宅の1つで、安否確認と生活相談サービスが付属する住宅となります。

メリットは条件を満たすことで得られる、補助金や税制優遇といった自治体のサポートを受けることができる点です。また運営方針も主に3つの運営手段が存在し、経営方法を選択できるのも特徴の1つです。

  1. 一括借上げ方式
  2. 委託方式
  3. 自己管理

サービス付き高齢者向け住宅は超高齢化社会をむかえる国内において高い需要を期待できる他、地方や利便性の悪い土地でも強いといったメリットもあります。

ただし、自治体のサポートを受けるための条件として、広い土地や設備費用といた初期投資額が高額になるといったデメリットを抱えているのもサービス付き高齢者向け住宅の特徴です。その他「サービス付き高齢者向け住宅」について更に詳しい概要については、以下の記事でも詳しく解説しています。

【関連記事】土地活用、サービス付き高齢者向け住宅のメリット・デメリットは?

まとめ

超高齢化社会では賃貸希望者における高齢者割合の増加が想定されます。今後の不動産投資においても、高齢者を受け入れるためのノウハウや知識、対策などの重要性は高まっていると言えるでしょう。

今回のコラムでは高齢者受け入れのメリット・デメリット、また注意点について詳しく解説しました。不動産投資は自身の経営方針によって、入居者の安全や生活環境にも大きく影響力を持つことになります。将来の需要増に向けて、不動産投資の戦略の一つとして検討されてみると良いでしょう。

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