エネルギー移行に伴う金属需要は10兆ドルに拡大か。ブルームバーグが見通し

ブルームバーグの脱炭素化に関するリサーチ部門ブルームバーグNEF(BNEF)は1月19日、「エネルギー移行に伴う金属の長期見通し」として、太陽光、風力、蓄電池、電気自動車などのエネルギー移行技術の進展に欠かせない主要金属の需要は、2050年までに5倍に増大するという予想を公表した。一方、供給側は投資不足、鉱業に対するカントリーリスクの増大、埋蔵量の枯渇深刻化などの制約を受けていると指摘している。

「新規鉱業プロジェクトの開発でカントリーリスクは大きな障壁となっている」とBNEFは指摘する。世界経済の減速に加え、各国が主要金属の供給を確保する必要があることから、資源ナショナリズムが復活し、資源税が引き上げられている。各国政府による介入は、新規鉱山に対する投資の減速に繋がっている。「エネルギー移行における主要金属の重要性を踏まえ、各国政府はその国の経済における当面のニーズを満たすことと、世界のネットゼロの将来という長期的野心との間でバランスを取る必要がある」という主張だ。

BNEFの金属・鉱業部門責任者でレポートの主要執筆者であるクワシ・アムポフォ氏は「鉱業はエネルギー移行の基盤であり、まずは鉱業業界自体が脱炭素化をすることで移行を先導していく必要がある」と主張している。

エネルギー移行に伴い、化石燃料を用いる火力発電技術に使用される原材料は減少していく。BNEFの経済移行シナリオは、50年には石炭や天然ガスといった化石燃料を用いる火力発電所からの金属需要は発電分野における需要全体の6%未満(22年は約16%)にまで低減するとしている。

一方で、BNEFは再生可能エネルギーおよび蓄電池における金属消費量は、50年までに2倍以上に増加すると予測。エネルギー移行には原材料の採掘への「多大な投資」が必要と見る。しかし。同時に「鉱業に対する投資家の信頼は低迷しつつある」と懸念を示す。背景に、昨今の市場変動や新規鉱山開発の複雑性といった要因を挙げている。

企業が資本調達の障壁を乗り越えるための道筋の一つとして「ESGパフォーマンスの向上」を挙げる。企業のESGパフォーマンスについては、日本国内ではまだ耳慣れない言葉だが、国際社会では、世界共通の指標に基づくESGパフォーマンスの報告と義務化への要求も強まっている。

同社は「世界的に統一された基準を設けることが、企業経営を支え、ステークホルダーの信頼獲得と維持につながる」と指摘。企業がESGパフォーマンスの可能性を広げるにはデータ分析能力の向上と、より質の高い非財務情報の開示と規制状況の明確化が重要と指摘。実現することで企業は資本市場において差別化を図ることができるだろうとしている。

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